第十七話:強さと、ひとり分の隙間
夕方。
街道を外れた森。
「静かだな」
レイグが周囲を警戒する。
「逆に怪しい」
元王子が地形を見ている。
「腹減った」
しゃもじ持ちの勇者。
「さっき食っただろ」
遊び人ユウマがツッコむ。
スライム
ぷるん(同意)
――そのとき。
ドォン!!
遠くで、地面が揺れる。
四人、同時に顔を上げる。
「今の……」
レイグ
「戦闘音だ」
遊び人ユウマ
「しかもデカい」
しゃもじ持ちの勇者
「行くぞ!」
元王子
「判断早いな!」
森を駆ける。
木々を抜ける。
そして――
開けた場所。
そこにいたのは。
女武道家。
そして――
複数の魔物。
囲まれている。
しゃもじ持ちの勇者
「うわ多っ!!」
レイグ
「包囲されている」
元王子
「数で押されてるな」
女武道家は戦っている。
強い。
圧倒的に強い。
一体、また一体。
吹き飛ばす。
叩き伏せる。
でも――
減らない。
遊び人ユウマは気づく。
(増えてる?)
「……増援型か」
元王子が言う。
「呼んでるな、あれ」
奥に、一体。
甲高い声で鳴く個体。
レイグ
「指揮役だ」
しゃもじ持ちの勇者
「じゃあ倒せばいい!」
遊び人ユウマ
「正面は無理だ」
女武道家が叫ぶ。
「来るな!!」
一瞬、全員止まる。
彼女は歯を食いしばる。
「これは私の戦いだ!!」
しゃもじ持ちの勇者
「またそれだ!!」
レイグ
「……どうする」
遊び人ユウマは少し考えて。
そして。
言う。
「助ける」
元王子
「当然だ」
しゃもじ持ちの勇者
「混ぜるぞ!!」
「今回はありだ」
遊び人ユウマが許可出した。
スライム
ぷるん!!(戦闘態勢)
レイグが剣を構える。
「中央を切り裂く」
元王子
「俺は外周を乱す」
遊び人ユウマ
「指揮役を止める」
しゃもじ持ちの勇者
「全部やる!!」
「欲張るな」
突撃。
一気に流れが変わる。
レイグが一直線に斬り込む。
元王子が声で村人――じゃない、仲間を動かす。
「左、詰めろ!間を作るな!」
しゃもじ持ちの勇者がかき回す。
本当にかき回す。
遊び人ユウマは回り込む。
(あれだ)
指揮役。
距離がある。
だが。
スライムが、ぷるんと前に出る。
「……行けるか?」
ぷるん(任せろ)
「頼む」
スライム隊、低空跳躍。
足元を滑る。
指揮役の足に絡む。
「今だ!」
遊び人ユウマが飛び込む。
――叩く。
沈黙。
鳴き声が止まる。
その瞬間。
魔物の動きが鈍る。
レイグ
「崩れた!」
しゃもじ持ちの勇者
「いけるぞーー!!」
一気に押し返す。
数分後。
静寂。
魔物はいなくなった。
女武道家が、その場に立っている。
肩で息をしている。
でも、立っている。
沈黙。
彼女がゆっくり振り向く。
「……なんで来た」
しゃもじ持ちの勇者
「助けに!」
レイグ
「状況的に介入が最適だった」
元王子
「合理判断だ」
遊び人ユウマは少しだけ笑う。
「放っとけなかった」
女武道家、少しだけ目を伏せる。
「……一人でやれると思った」
遊び人ユウマ
「やれてたよ」
しゃもじ持ちの勇者
「でも終わらなかったな!」
レイグ
「数が問題だった」
元王子
「構造的に不利だ」
女武道家は拳を握る。
「……分かってる」
「でもありがとう」
沈黙。
風。
少し長い沈黙。
そして――
ぽつり。
女武道家
「……なあ」
顔を上げる。
少しだけ、弱い顔。
女武道家は小さく息を吐いて、言う。
「いくら強くとも、独りは寂しいもんなんだ」
一瞬、視線を落とす。
そして、まっすぐ見る。
「……私をパーティに入れてくれないか……」
一刻の間。
レイグ
「……仕方ない」
全員
「軽っ!?」
レイグは腕を組む。
「条件付きで入れ」
女武道家
「条件?」
「連携を守れ。露出を減らせ。それだけだ」
女武道家は少し考えて――うなずく。
「分かった」
遊び人ユウマが口をはさむ。
「あともう一つ」
全員、遊び人ユウマを見る。
「揉め事起こしたら――」
少し間を置いて。
「俺が間に入る」
しゃもじ持ちの勇者
「頼りになるのかそれ!」
元王子
「一番不安だな」
レイグ
「……だが適任かもしれん」
女武道家は、ふっと笑う。
「いいだろ」
一歩、前に出る。
「よろしく頼む」
しゃもじ持ちの勇者
「よっしゃああ!!」
スライム
ぷるん!!(大歓迎)
元王子
「隊列を組み直すか……」
レイグ
「前衛が増えるな」
遊び人ユウマ
「崩れるな、これ」
しゃもじ持ちの勇者
「最初から崩れてるだろ!」
笑いが起きる。
女武道家も、少しだけ笑う。
さっきまでの“独り”の顔は、もうない。
夕日が差す。
影が並ぶ。
増えた分だけ、少し長くなる。
レイグがぼそっと言う。
「……悪くない」
誰にも聞こえないくらいの声で。
でも――
ちゃんと、届いていた。




