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勇者としゃもじの冒険  作者: レモンティー


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第十五話:勘当王子と“実績”の作り方

昼下がり。

街道。

「でさー、次の村では井戸からだな!」

しゃもじ持ちの勇者がいつもの調子でしゃもじを振る。

レイグ

「まず防衛だ」

遊び人ユウマ

「話し合いだ」

しゃもじ持ちの勇者

「混ぜるんだ」

レイグと遊び人ユウマ、二人同時。

「いや、それは違う」

――いつものやつ。

そのとき。

道の真ん中に、誰かが立っていた。

ボロいマント。

でも姿勢はいい。

「止まれ」

レイグが警戒する。

その男は顔を上げた。

整った顔立ち。

でもちょっとやつれてる。

「……頼みがある」

しゃもじ持ちの勇者

「いきなり!?」

男は言う。

「俺を、仲間に入れてくれ」

遊び人ユウマ

「理由は?」

少しの間。

そして。

「……俺は王子だ」

沈黙。

しゃもじ持ちの勇者

「うん?」

レイグ

「……続けろ」

「他国の王子だ。――いや、“元”だな」

風が吹く。

「親父に勘当された」

遊び人ユウマ

「何やったの」

他国の元王子

「町娘と八股」

しゃもじ持ちの勇者

「えぐい!!」

遊び人ユウマ

「他には?」

他国の元王子

「王国の予算を闘技場に突っ込っこんですった」

レイグ

「ひでぇな」

ユウマは小さく笑って、ぽつりと呟く。

「……本物の遊び人……」

元王子は真顔。

「あと……」

遊び人ユウマ

「まだあるの?」

元王子

「そして無駄な戦をやめろと言った」

しゃもじ持ちの勇者

「それは普通だ!!」

遊び人ユウマ

「それで勘当?」

他国の元王子

「みんなの前で言った」

しゃもじ持ちの勇者

「あー……」

レイグ

「タイミングが最悪だな」

元王子は拳を握る。

「でも間違ってない」

遊び人ユウマはうなずく。

「……ですがタイミングは重要です。」


元王子は続ける。

「だから言われた」

『八股したり闘技場で予算を失うやつが何を言ってる』

『だったら功績を上げてこい』

『結果で示せ』

「それができなきゃ、一生戻るなってな」

しゃもじ持ちの勇者

「重っ!」

レイグ

「妥当ではある」

遊び人ユウマ

「で、なんで俺たち?」

元王子は少し考えてから言う。

「……変なことしてるから」

しゃもじ持ちの勇者

「理由が雑!!」

でも。

遊び人ユウマは少し笑った。

「まあ間違ってない」

レイグ

「で、お前は何ができる」

元王子は胸を張る。

「統治」

沈黙。

しゃもじ持ちの勇者

「今いらねぇ!」

遊び人ユウマ

「戦えないの?」

「剣は一応」

レイグ

「一応か」

元王子

「でも一番得意なのは――」

少しだけ間を置いて。

「“人を動かすこと”だ」

しゃもじ持ちの勇者がニヤッとする。

「それ、ちょうどいいかもな」

遊び人ユウマ

「ですね」

レイグ

「……使いどころはある」

そのとき。

遠くから声。

「た、助けてくれ!!」

振り向く。

小さな村。

煙。

しゃもじ持ちの勇者

「イベント来た!!」

レイグ

「急ぐぞ」

遊び人ユウマ

「元王子、初仕事ですよ」

元王子

「いきなり!?」


村。

柵が壊れている。

畑が荒らされている。

村人が慌てている。

「どうした!?」

レイグが叫ぶ。

村人

「魔物だ!群れだ!」

しゃもじ持ちの勇者

「よし倒す!」

元王子

「待て」

三人が止まる。

「状況を見ろ」

一瞬で周囲を見る。

足跡。

壊れ方。

「……数は多いが、弱い」

レイグ

「同意だ」

元王子

「問題は数と動きだ」

遊び人ユウマ

「で? どうします?」

元王子は村人に向く。

「聞け!」

声が通る。

一気に空気が変わる。

「戦える者は三列に分かれろ!」

「子どもと老人は中央へ!」

「道具を持て!鍋でもいい!」

しゃもじ持ちの勇者

「鍋!?」

「音を出せ!威嚇だ!」

レイグ、小さく言う。

「……悪くない」

遊び人ユウマ

「完全にリーダーだな」

元王子はさらに指示を飛ばす。

「柵の隙間を狭めろ!」

「一方向に誘導する!」

遊び人ユウマ、気づく。

(これ――)

(川に流す流れと同じだ)

魔物の群れが来る。

ざわざわ。

でも。

村はもう“バラバラじゃない”。

「来るぞ!」

レイグが前へ。

しゃもじ持ちの勇者

「混ぜるぞ!!」

「今は混ぜるな!!」

元王子がツッコむ。

遊び人ユウマ

「いや混ぜてもいいかも」

「どっちだ!?」


戦闘開始。

でも。

統率がある。

押し込まれるが、崩れない。

レイグが要所で斬る。

しゃもじ持ちの勇者が謎にかき回す。

遊び人ユウマが流れを読む。

そして――説得する。

群れは崩れる。

逃げる。

静寂。

村人たちがざわめく。

「助かった……」

元王子は息を吐く。

手が少し震えている。

遊び人ユウマが言う。

「初陣、どうだった」

元王子、少し笑う。

「……悪くない」

しゃもじ持ちの勇者

「じゃあ功績ゲットだな!」

レイグ

「小さいが、確かな実績だ」

元王子は空を見上げる。

「……これで足りるかは分からんが」

遊び人ユウマ

「積めばいいだろ」

しゃもじ持ちの勇者

「いっぱいやろうぜ!」

レイグ

「数ではなく質だ」

元王子は三人を見る。

そして。

少しだけ頭を下げる。

「……同行させてくれ」

遊び人ユウマ

「もう仲間ですね」

しゃもじ持ちの勇者

「次は井戸な!」

レイグ

「防衛だ」

元王子

「まず計画だ」

遊び人ユウマ

「話し合いだ」

しゃもじ持ちの勇者

「混ぜるんだ」

レイグと遊び人ユウマ、二人同時。

「いや、それは違う」

スライム

ぷるん!!

ピカウルフ

「ばぅ」

笑いが起きる。

元王子は少しだけ驚いて――

そして笑った。

(悪くない)

街道は続く。

“功績”も、たぶん続く。

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