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勇者としゃもじの冒険  作者: レモンティー


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第十三話:経験値の正体

街道。

昼。

三人になって最初の移動――

「……あの」

遊び人ユウマは前を歩くレイグに声をかけた。

「なんだ」

「この世界って」

少し考えてから言う。

「倒したら経験値もらえるんですよね?」

レイグはうなずく。

「基本はそうだ」

しゃもじ持ちの勇者が割り込む。

「ズドーン!ってやったらドーン!って上がる!」

「説明が雑すぎる」

でも、引っかかる。

ずっと気になってた。

「じゃあ」

二人を見る。

「日々、牛や豚などの家畜を屠殺してる屠殺業とさつぎょうの人って高レベルなんじゃない?」

沈黙。

風が止まった気がした。

「……は?」

しゃもじ持ちの勇者。

レイグは目を細める。

「どういう意味だ」

「いや、だって」

遊び人ユウマは続ける。

「いや、だって……。牛でも豚でも、毎日何十頭も“命を断ってる”わけだし……」

「……」

「数で言ったら、冒険者より多い……」

「……」

「なのに、最強の職業が“肉屋”になってないの、おかしくない?」

完全に静まり返った。

しゃもじ持ちの勇者がぽつり。

「……確かに」

レイグが腕を組む。

「考えたことはなかったな」

「ですよね?」

遊び人ユウマは少し勢いづく。

「もし“倒した数”だけで経験値が入るなら――」

指を立てる。

「世界の強さランキング、完全におかしくなる」

レイグ。

「……続けろ」

「兵士より農家が強くなる可能性もある」

「なんで農家」

「害獣駆除」

「ああ……」

しゃもじ持ちの勇者がうなずく。

「確かにめっちゃ倒してるな」

「でも実際は違う」

遊び人ユウマは言う。

「つまりこれ、“倒す”って条件が違うんじゃないか?」

レイグが小さくうなずく。

「……可能性はある」

そのとき。

道の先に小さな村が見えた。

煙が上がっている。

レイグ

「寄るか」。

遊び人ユウマ

「ちょうどいいですね」

しゃもじ持ちの勇者

「何がだ?」

遊び人ユウマ

「検証」

しゃもじ持ちの勇者が笑う。

「面白そうじゃねえか!」


村。

入り口の横。

看板。

「肉処・ガルド」

「……いたな」

中に入る。

血の匂い。

吊るされた肉。

そして――

大男。

腕が太い。

目つきは鋭いが、どこか落ち着いている。

「いらっしゃい」

低い声。

遊び人ユウマは単刀直入に聞いた。

「あなた、強いですか?」

「帰れ」

即答だった。

「いや違うんです話を――」

しゃもじ持ちの勇者が横から。

「レベルいくつだ!」

「帰れ」

レイグがため息をつく。

「質問の仕方が悪い」

一歩前に出る。

「失礼する。我々は冒険者だ」

「見れば分かる」

「一つ聞きたい」

肉屋――肉処店主ガルドが包丁を止める。

「なんだ」

レイグが言う。

「あなたは日々、多くの命を奪っている」

「……まあな」

「それで、力が増した実感はあるか?」

沈黙。

肉処店主ガルドはゆっくりと包丁を置いた。

「……ないな」

やはり。

遊び人ユウマは一歩前に出る。

「やっぱり」

しゃもじ持ちの勇者が聞く。

「なんでだ?」

肉処店主ガルドは少し考えてから言った。

「簡単だ」

肉を指さす。

「これは、“仕事”だ」

「……仕事?」

「生きるために、やってるだけだ」

静かな声。

「そこに、敵も何もねえ」

レイグが小さくつぶやく。

「……敵対か」

遊び人ユウマは続ける。

「つまり、“戦い”じゃないとダメ?」

肉処店主ガルドはうなずく。

「命のやり取りだ」

空気が少し重くなる。

「殺すか、殺されるか」

「……」

「その境目に立ったときだけ、人は変わる」

ガルド。

「だがな」

三人を見る。

「完全に無関係でもない」

「え?」

「繰り返すと慣れはする」

自分の手を見る。

「迷いは減る」

「……」

「だだ、それだけだ」

レイグが深くうなずく。

「だから兵士と職人は違うというのか」

「そういうことだ」

遊び人ユウマは整理する。

「じゃあ経験値って」

ゆっくり言う。

「“倒した数”じゃなく」

「……」

「“命を懸けた回数”ということ」

誰も否定しなかった。

しゃもじ持ちの勇者がニヤッとする。

「じゃあさ」

嫌な予感。

「命懸けじゃない戦い、意味なくね?」

レイグが即答する。

「訓練は必要だ」

しゃもじ持ちの勇者

「真面目か!」

肉処店主ガルドが笑う。

「いい仲間だな」

遊び人ユウマはため息をつく。

「今日入ったばっかりですけどね」


肉処店主ガルドは肉を包んで差し出した。

「持ってけ」

「え、いいんですか」

「検証の礼だ」

しゃもじ持ちの勇者がガッツポーズ。

「肉だあああ!!」

レイグが小さく頭を下げる。

「感謝する」

店を出る。


夕方。

少しだけ世界の見え方が変わっていた。

「なあ」しゃもじ持ちの勇者。

「なんだ」

「じゃあさ」

また来た。

「魔王って、めっちゃ経験値くれる?」

レイグが答える。

「間違いなくな」

「じゃあ倒したら――」

遊び人ユウマが言う。

「世界で一番“命懸け”の経験か」


風が吹く。

遠く、黒い雲。

魔王のいる方向。

しゃもじ持ちの勇者が笑う。

「楽しそうじゃねえか」

レイグが静かに言う。

「……軽く言うな」

そして遊び人ユウマは思う。

(倒す、のか?)

(それとも――)

言葉で終わらせるか。

まだ答えはない。

だが一つだけ、分かった。

この世界の“強さ”は――

数じゃない。

覚悟だ。

そう考えたとき。

少しだけ、

魔王との距離が近くなった気がした。

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