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勇者としゃもじの冒険  作者: レモンティー


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第十二話:新たなるパーティメンバー

朝。

街道の分岐点。

霧が少しだけ残る時間――

ユウマは、妙な“圧”を感じて立ち止まった。

前方。

二人の男。

一人は――

しゃもじを持っている。

(はい出た)

もう一人は――

腕を組んで立つ、無駄に“ちゃんとしてる”男。

目つきが鋭い。姿勢がいい。装備も本物。

(あれは……)

「……正規勇者レイグ?」

名前が口から漏れた。

男がわずかに目を細める。

「知っているのか」

「いや、有名なんで」

正統派。王道。

“本命の勇者”側の人間。

そしてその横で。

「おーい! こっちも見ろー!」

しゃもじがぶんぶん振られている。

(温度差どうなってんだ)

「俺が勇者だ!」

「どっちがですか?」

即ツッコミ。

レイグがため息をつく。

「……そいつも勇者だ」

「“も”?!」

「なんでそうなったんですか」

「知らん」

即答だった。

しゃもじ持ちの勇者が割り込んでくる。

「細かいことはいい!」

しゃもじをビシッと突きつけてくる。

「お前、“話すやつ”だろ!」

「だいぶ雑な認識ですね」

「見た瞬間分かった!」

レイグが口を開く。

「噂は聞いている」

低く、落ち着いた声。

「戦わずに魔物を退けた男」

「……まあ」

「再現できるか?」

直球だった。

「状況次第です」

「できない場合は?」

「逃げます」

「正しいな」

即肯定。

(この人まともだ)

しゃもじ持ちの勇者が腕を組む。

「よし決めた!」

嫌な予感。

「お前、うち来い!」

「うち?」

「勇者パーティだ!」

「いや二人しかいませんよね?」

「だからだ!」

ドヤ顔。

「足りない!」

レイグが静かに補足する。

「役割が偏っている」

「どう偏ってるんですか」

「俺が“戦う”」

「はい」

「こいつが“よく分からないことをする”」

「雑すぎません?」

しゃもじ持ちの勇者、胸を張る。

「運とノリ担当だ!」

(自己分析だけは正確)

レイグがユウマを見る。

「そしてお前は、“戦わない”」

「……まあ」

「ならば埋まる」

「何がです?」

一拍。

「選択肢だ」

その言葉に、少しだけ引っかかった。

(またそれか)

戦うか、逃げるか。

その外側。

「正式に頼む」

レイグが言う。

「パーティに入れ」

しゃもじ持ちの勇者がかぶせる。

「役職は――決まってる!」

「嫌な予感しかしない」

「遊び人だ!!」

「やっぱりか」

即答だった。

だがレイグは否定しない。

「適任だ」

「あなたまで!?」

「“何もしない”を選べる職だ」

「またそれ言うんですね」

レイグはうなずく。

「戦場で最も難しいのは、“余計なことをしない判断”だ」

静かな声。

だが重い。

「お前はそれを既にやっている」

「……」

「だから遊び人でいい」

しゃもじ持ちの勇者が笑う。

「むしろ最強だ!」

(信用できるのかできないのか分からない)

そのとき。

空気が変わった。

バチ……バチ……

「来るぞ」

レイグが剣に手をかける。

茂みの奥から現れたのは――

ユニコーン

先端の角から雷が走る。

明らかに危険。

ユウマが出る」

レイグが一歩前へ。

構え。

無駄がない。

(強い)

だが――

「待て!」

しゃもじ持ちの勇者が飛び出す。

「ここは俺だ!」

「おい、無茶――」

足を滑らせる。

「うおっ!?」

転ぶ。

(はい)

しゃもじが手から離れ――

くるくる回転しながら飛び、

ユニコーンの顔面に直撃。

「ギャン!?」

その瞬間。

雷が暴発。

バチィィッ!!

ユニコーン、自分に感電して倒れる。

静寂。

レイグが固まっている。

「……今のは」

「勝ったな!」

しゃもじ持ちの勇者、親指を立てる。

レイグ

「偶然だな」

しゃもじ

「必然だ!」

「偶然だ」

「必然だ!」

「……どっちでもいいですけど」

ユウマは呟いた。


確かに勝った。

計算じゃない。

でも“結果”は出た。

レイグが剣を納める。

「悪くない連携だった」

「連携してないですよね?」

「してないな」

即答。

しゃもじ持ちの勇者が笑う。

「だからいい!」

「意味分からない」

だが――

ユウマは考える。

(戦うやつがいる)

(意味分からないやつもいる)

(じゃあ俺は)

(その隙間か)

ため息をつく。

「……分かりました」

二人がこっちを見る。

「遊び人、やります」

しゃもじ持ちの勇者、ガッツポーズ。

「よっしゃあああ!!」

レイグは小さくうなずいた。

「歓迎する」

こうして――

・しゃもじの勇者

・勇者レイグ

そして

・遊び人のユウマ

奇妙すぎる三人パーティが完成した。

出発の前。

しゃもじ持ちの勇者が言う。

「役割確認だ!」

「まだやるんですか」

「俺は運!」

「レイグは戦闘!」

「当然だ」

「お前は――」

ビシッ。

「遊び!」


レイグが一言。

「いや、違うな」

二人が見る。

「選択だ」

一瞬、静かになる。

そして。

ユウマは少しだけ笑った。

「……まあ、それでいいです」

剣ではなく、言葉で。

だが今は。

運と剣の間で。

選ばなかった道を選ぶ役として――

遊び人ユウマの新しい旅が、始まる。

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