第六話 謎の救世主
瞬間、二人の視線が落ち葉に向かう。
すると、カオスの身体が宙に浮いたかと思えば後ろに転倒。
「足元がお留守だったぞ」
何処からともなく聞こえるそんな声に、アトラスは周囲を見回す。
しかし、声の主らしき者の姿は見られない。
「誰だ!姿を現せ!!」
立ち上がったカオスが声を張り上げる。
「姿が見たいなら、自分で見つけるんだな」
カオスが辺りを見回すと、曲がり角の陰からロープが飛び出し、カオスの身体に巻き付いた。
カオスは腕の刃を駆使して拘束から脱するも、依然として見えない敵の姿に警戒をあらわにしていた。
「クソッ!こうなれば……!!」
見えない敵に苛立ちを覚えたカオスは、負傷者めがけて駆けた。
が。
「……っ!?」
一瞬にしてカオスの刃が腕ごと切り落とされた。
肩から下は鮮やかな赤色が露出し、血しぶきがビル内の消えかけた照明を反射し輝く。
「貴様ぁああ!!」
仮面の下で顔を紅潮させたカオスが、腕を切り落とされてもなお負傷者を狙う。
ところが、カオスの手が負傷者に触れる前に、その負傷者は姿を消した。
「なっ!?」
それは、アトラスの声だった。
咄嗟に辺りを見回すと、黒いパーカーに額にはゴーグルをつけた青年が負傷者を背負っていた。
「おいそこのヒーロー!負傷者は僕が外まで連れていく。思い切り戦え!」
青年はそう言い残し、負傷者を背負ったまま出口へ向かった。
――彼の声は、先ほどまで辺りに響いていた、謎の声とうり二つだった。
アトラスは一瞬だけ戸惑ったが、負傷者の消失に気づかずに前進するカオスを前に、アトラスは勝機を取り戻した。
「そういうことなら、遠慮なく!!」
アトラスは、左腕のアトラブレスに装填されたライセンスを取り出し、表裏を返して再装填した。
『FINISH READY?』
ビル内に轟くハイテンション且つネイティブな英語音声。
その音声とともに、アトラスの右足が淡い青色に発光する。
そして、空中に浮かび上がったディスプレイが、投網のようにカオスの身体にまとわりついた。
アトラスの背中の装甲が翼へ変形し、アトラスが宙へ浮かび上がる。
「グランドルート・フィニッシュ!!」
掛け声とともに滑空したアトラスの足が、身動きの取れないカオスへ強烈なキックを炸裂させた。
両手を広げた体制で地面に着地したアトラスの背後で、カオスは爆散した。
「ふぅいー……」
そのままアトラスは地面に尻をついてから寝そべった。
「にしても……アイツは何者だったんだ?」
アトラスは呟きながら、負傷者の安否を確認すべく、避難所へ向かって翼をはためかせた。




