第二話 抹消と防衛
「人類に改心の余地はない……お前も、もう諦めるのが身のためだ。」
「いや、違うな。」
モリオカは、”対アース用”に作られたフォレスフォンを取り出しつつ、反論した。
「かつて、人と自然は共存していた……!」
モリオカは、横たわりながらフォレスフォンのサイドボタンを長押しし、それを変身モードへ切り替える。
「俺は、もう一度そんな世界を作りたいんだっ!!」
その言葉と共に、モリオカは再び立ち上がった。
「纏着!!」
掛け声に反応したフォレスフォンが、それを持つモリオカの手元からスーツを生成し、全身を包んでゆく……
そして、胸やひざにメタリックの装甲が現れ、手足に蔦がまかれる。
――こうして、アースを討伐するために政府に作られた変身系ヒーロー、『ネイチャー』が再び立ち上がったのである。
「はぁっ!」
手足の蔦を自在に操り、アースを叩きつけようとするネイチャー。
しかし、アースは華麗な動きでそれをかわす。
両者一歩も譲らず、らんらんと辺りを照らしていた太陽はすっかり沈み切っていた。
ネイチャーは、緑色のメタリック装甲が削れ、下地の銀色が露出していた。
アースは、マスクの破損した隙間から、長い襟足が顔をのぞかせていた。
エネルギーを消費しつくした両者の戦いは、殴り合いに移り変わった。
海外のボクサーだって比にならない速度のパンチが繰り出される度、大気が震え、地面が凹み、火花が飛び散る。
それは、抹消と防衛という正反対に立つ思想同士が、地球上でもっとも激しくぶつかり合っている瞬間だった。
やがて、二人は荒れた荒野の真ん中に倒れこんだ。
西部劇よろしく、どこからともなく転がり草が風に乗ってやってくる。
轟音が響いていた辺りは、それまでが嘘だったかのように静まり返っていた。
そんな静寂の只中、砂の地面に足跡を付けるひとりの旅人がいた。
「こりゃひでえ有様だ……」
旅人は、倒れるモリオカの腰を見て感嘆を漏らした。
「ほぉ、こりゃ日本政府所属ヒーローのケータイじゃねえか」
旅人の視線の先にはフォレスフォン。
「なるほど、面白そうだ。」
旅人は、横たわるダイチの横にポーション(注1)を置き、モリオカを抱えて歩き出した。
彼の名はツバメ。
偶然近くを通りすがった、一人の旅人である。
左手につけたブレスレットがギラリと光る。
ツバメは、首の辺りから伸びる古びた毛皮のマントを翻しながらその場を去った……
〈注意〉
1.ポーション・・・塗ったり飲んだりして数秒で怪我や病気を治癒する魔法のような薬。




