第一話 地球の悲鳴
〈作品を読む上での注意〉
本作独自の世界観で使われる言葉や、普段使われないような言葉には、全てあとがきで解説(語注)をご用意しています。
本文の中に (注1) などの表示が出てきた際は、ページ最下部の「あとがき」に意味を記載していますので、必要に応じてご確認ください。
ながれる川は濁り、処理しきれないゴミが異臭を放つ、ある荒くれた地帯の只中。
一人の男、『ダイチ』は、腰に巻いたベルト、『ターンバックル』に手をかけて呟いた。
「纏着……」
この世界で、変身系ヒーローが変身するときに使う掛け声である。
ダイチは、ベルトのバックル中央、地球儀のような球体を回転させた。
次の瞬間、黒いオーラがダイチを包みこんだ。
オーラが明けた先には、白を基調とした装甲に、枯れ木を模した角が印象的なヒーロー、『アース』が立っていた……
シンプルな色合いの足が地面を強く蹴りつけ、アースは空へと飛び出す。
やがてたどり着いた先、モクモクと黒い煙を上げる工場に向け、アースは腕を伸ばした。
「『テラ・パージ』……」
アースのつぶやきに応じるようにして、煙が彼の手に集約される。
集まった煙は、やがて、エネルギー弾へと姿を変え、超高速でアースの掌から放たれた。
響き渡る轟音、爆ぜる工場。
それまで働いていた作業員の活気溢れる声は、一瞬にして鳴りやんだ。
代わりに残ったのは、命を守るという役目を果たしきれずに砕けた、作業用ヘルメットだけだった。
と、数秒で均された広大な大地に、場違いな機械音が小さく鳴った。
アースは音の方向へ体を向け、若干に腰を落とす。
『TRANSFORM NATURE』
無機質なシステムボイスと共に姿を現したのは、緑色の装甲がメタリックに輝くヒーロー、『ネイチャー』だった。
ネイチャーは、手に握っていた変身用端末『フォレスフォン』を、サイホルスター(注1)に収納し、アースに向かって身構えた。
アースは、マスクの下で口を開く。
「またお前か……」
「それ以上の破壊行為はやめるんだっ!」
ネイチャーが力強く言い放った。
「破壊だと?これはむしろ再生と呼ぶべき行為だ」
「殺人や器物破損を、再生と呼べるわけがないだろう!!」
「これが、元の地球の姿だ。」
「……」
アースの発言に、ネイチャーは黙り込んだ。
しかし、アースはまだその口を閉じようとはしなかった。
「これは、地球が望んだことだ。」
一歩、アースはネイチャーに近づく。
「第一次英雄時代に一度は収まった地球温暖化も、今では再び深刻な問題となりつつある……」
また一歩、ザッという音を立てながら、アースは前進を続ける。
「地球は、再び悲鳴を上げている。」
アースが、ターンバックルに手をかける
「その原因は、人間の存在だ……」
ターンバックルの地球儀が回される。
『CHARGE』
アースの掌に黒いオーラが渦巻く。
『FULLCHARGE』
「『テラ・パージ』、最大出力……」
工場を吹き飛ばした時よりも大きなエネルギー弾が、ネイチャーへ放たれる。
「『フォレスト・バリア』!!」
ネイチャーは、手足に装備した蔦を障壁に変形させたが、エネルギー弾はそれをも貫通し、ネイチャーへ直撃した。
地面に転がったネイチャーの身体は淡い光に包まれたのち、生身の人間『モリオカ』の姿へ戻ってしまった……
〈注意〉
1.サイホルスター・・・スパイなどが着用する、腰から太ももにかけて固定されたホルダー。




