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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第四章 それは世界を紡ぐ我らが賜る星の祝福

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第四十六話 追い込まれるライオット

 考える。考える。考える。


 今、俺がウィルテイシアに(おこな)える支援を。


 気持ちは(あせ)る一方だけど。下手に飛び込めば足手まといなだけで。それがすごくもどかしくて、俺は拳をきつく握る。


(何もできないんじゃ、パーティーを追放された時と同じじゃないか!)


 そう、今こそ。


 今こそ動かなければならない時で。


 けれど何をしていいのかわからなくて。


 一瞬、あの紋様(もんよう)が発現してくれないかと期待したけど。そんな都合のいいことは起こらず。


(くそっ! 何でこんな肝心な時に使えないんだよ!)


 たぶんあの力なら、この魔力封じにも対抗できると。そんな直感はあって。


 しかし紋様(もんよう)が姿を現すことはなく。


 俺に今できるのは、手にした杖を振り回すくらい。


 もっと白兵戦の技術を磨いていれば。ウィルテイシアと並ぶまでと言わずとも。力を合わせられるくらいには、鍛えておくべきだったと。今更ながらに後悔して。そんなものに意味はないと、自分を戒める言葉で打ち消し。


 徐々にハヤトの剣を捌き切れなくなっていくウィルテイシアを、ただ不安げに眺めることしかできないでいる。


(いや、こういうところがダメなんだ! とにかく動け! 考えてわからないなら、とにかく失敗するつもりで挑むんだ! いい訳はその後でいい!)


 師匠の下で修業していた時もそうだった。


『考える癖がついてきたのはいいが、お前は少し極端過ぎる。考えるばかりで動きが止まってたら意味がないだろうが!』


 全くその通りである。


 どちらにせよ。最適な行動が思い浮かばないのだから。動かないでいるよりは懸命に足搔いた方が身のためだと。そう教わって来たじゃないか。


 考えをシンプルにすればいい。要は、ウィルテイシアが勝てる状況を作ればいいのだ。そのために必要なのは、ハヤトの猛攻を止めること。そう考えれば、俺にできることはまだあるはず。


 だから俺は、腹の底から声を出して。精一杯、ハヤトの注意を引こうと。全力で、二人の戦いに割って入ろうとした。


「おっと、お前は引っ込んでろよぉ! 今は俺とウィルテイシアのダンスの最中なんだぜぇ!?」


 俺の接近に気付いたハヤトの口元が、いやらしく歪む。


 次の瞬間。俺は何者かに後ろから組み付かれて、動きを封じられてしまった。


(アレクとティオは無力化したはずだ……。ってことは、ハヤトの新しい仲間か!?)


『想定が甘い!』


 師匠だったらそんな風に言って、俺をボコボコにしただろうけど。


 ヒヤリとした思考を落ち着かせようと、俺は背後から組み付いてきた相手に視線を送る。すると――。


「アレク!? ティオ!?」


 思いもしない相手が、俺の身体にまとわりつき。俺を拘束していた。


「何でだ!? そんなにすぐに動けるはず――」

「おいおい、ライオットぉ~! 知らないのか? 切り札は、何枚あってもいいんだぜぇ!?」


 いつの間にかハヤトが手にしていた、どす黒い宝玉。そこから溢れる光が、アレクとティオの身体に(まと)わりつき、人形のように彼らを操っていたのである。


 あの眼帯の奥の何かといい、この宝玉といい。いったいどこで手に入れたのやら。たぶんどちらも古代遺産(アーティファクト)の類なのだろうけど。俺が知る古代遺産(アーティファクト)とは、どこか違う。


 まるで、作ったのが()()ではなく、()()であるかのように。


「ハヤト、お前! 気を失ってる仲間にそんなもの使って、恥ずかしくないのか!?」


 怒りが込み上げた。どこまでも下劣な奴だと。


「何言ってんだよぉ~。そいつらだって勇者パーティーのメンバーなんだぁ。だったら勇者である俺の役に立つのは当然だろぉ? 自分たちでできないみたいだから、俺がそうできるように手助けしてやっただけだぁ!」


 しかし、当のハヤトはそんなことはお構いなし。俺に対してにんまりと笑って見せ、更に宝玉の力を強めた。


「くそっ! 離せ!」


 アレクとティオの力がどんどん増していく。恐らく肉体を外部から操られているから、人間の身体に備わっているリミッターが機能していないのだ。こんなことを続ければ、二人の身体は壊れてしまうだろう。現に、彼らの筋肉はギリギリと音を立て、骨はきしんでいる。


「さぁて、これで邪魔者は抑えたぜぇ! あとはこのエルフの女をものにすれば、お前への制裁は完了だぁ! お前の前でたっぷりとこの女を()でた後で、お前にはむごたらしい死をご馳走してやるよぉ!」


 ハヤトの狙いは、考えずともわかった。


 彼はあの眼帯の奥に秘めた能力を使うつもりでいる。その正体が何であれ、使われてしまったが最後。俺の望みは絶たれるだろう。


 こういう時の彼に容赦はない。俺を貶めると決めたら、徹底的にそうする。それがハヤト=キサラギと言う男だ。


「ウィルテイシア! 警戒しろ! 絶対にその眼帯を外させるな!」


 せめてもの抵抗として、俺はウィルテイシアに警戒を促すけど、それを実行に移すほどの余力は、彼女にはなさそうで。


「わかっている! わかってはいるが――! 私の力不足のせいで、今はかなり()が悪い!」


 彼女せいではない。それは俺が一番よくわかっているのに。今の俺に、それを彼女の心に届ける(すべ)はなくて。


「くっそ! 二人ともどけ! 今すぐ行かないと、彼女が! ウィルテイシアが!」


 俺の声は、アレクとティオには届かない。


 一応目は開いているけど。その表情はもうろうとしていて生気がなく。まるで動く屍のようだ。


「いい(ざま)だなぁ~、ライオットぉ! これでお前の心をへし折れるぅ! さぁ、よく見ておけぇ! こいつが俺の(もの)になる瞬間をよぉ!」


 一瞬の揺らぎの隙をついて、ウィルテイシアを剣で押し飛ばし。眼帯を外したハヤトが、(あらわ)になったその謎めいた瞳で、彼女を見据えた。


「さぁ、ウィルテイシア! 俺の(もの)になれ!」


 その眼は、恐らく。魅了の効果を持った義眼の古代遺産(アーティファクト)か何かで。


 これこそが彼の、ハヤトの何個目かの切り札。


 黒魔導士として修練を積んで来た俺には、この手の精神干渉系の魔法は利かないけれど。精霊の守護を受けていないウィルテイシアはそうはいかない。


 故に彼女は、狡猾(こうかつ)なハヤトの手中に堕ちた。


 彼の瞳から溢れた怪しげな紫の光が、押し飛ばされたことでよろめき下がるウィルテイシアに注がれる。その光は、彼女の身体を包むように(まと)わりつき。徐々(じょじょ)に彼女の身体(からだ)へと吸い込まれて行く。


 彼女の身体(からだ)がビクンと震え、ほんの(つか)()、硬直する。彼女の震えが収まった時には、彼女はどうしようもなく、これ以上ないくらいに根本的に、その在り方がごっそりと。きれいに置き換えられて、変わっていた。


 次に見開かれた彼女の瞳は妖艶(ようえん)な光を(たた)え、それが今までの彼女でないことを。これでもかと言うほどに伝えて来る。


 まだ魅了の効果が馴染んでいないのか、身体の動きは緩慢だけど、今の彼女に目には俺は写っていない。視線は確かにこちらに向けているのに、まるで赤の他人を目にするような――いや、嫌悪すら抱いているかのようだ。


(やめてくれよ、ウィルテイシア……。俺にそんな目を向けないでくれ……)


 ウィルテイシアの瞳は、かつて勇者パーティーを追放された最のフィオナの瞳を連想させ、あの時の苦しみと絶望感が再燃する。


 このままでは彼女がハヤトのものになってしまう。そう考えただけで、心が凍り付いた。


「ウィルテイシア、しっかりしろ! そんな妙な力に惑わされるな!」


 しかし、彼女は答えてくれない。


 そうしているうちに、勝ち誇ったような笑みを浮かべたハヤトが、ゆっくりとウィルテイシアに近づいて行った。


「おい、ハヤト! それ以上彼女に近づくな!」


 何とか声を絞り出し、声高々に叫ぶ。


 だが、ハヤトはそんなことはお構いなし。ウィルテイシアの前に立ったハヤトは、彼女に対してこう告げた。


「さあ、ウィルテイシア。お前が愛しているのは誰か、ライオットのやつにも聞こえるように言ってくれ」


 それは完全な嫌がらせ。俺の心を完全に折るためだけの指示。


 もし彼女がそれを実行に移したら、今度こそ俺は立ち直れないだろう。どん底の状態から心を通わせ、想いを重ね、そして築いたウィルテイシアとの絆が、あっさりと崩壊してしまうのだから。

読んでいただきありがとうございます。


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