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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第三章 最悪の再会

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第三十八話 遭遇

 数日後。ようやく魔物被害が激化している地域があると言う情報を得て。俺たちは町をあとにした。


 それぞれ左手の薬指には、ややクリーム色の混じったような銀の指輪。サイズはぴったりだし、デザインも秀逸で。着けていて何の違和感もない。


「問題の地域は、ここから徒歩で二、三日って言ったけど。情報伝達までのタイムラグを考えれば、もう少し近づいてるかもしれないな」

「北からの魔王軍の侵攻は、確実に広がってきている。と言うことだな……。厄介極まりない」


 だいぶ問題の地域まで近づいてきた頃。


 街道の先にある丘を登ったところで、俺たちは凄惨な光景を目の当たりにすることになる。


 一面の焼け野原。そこにあった集落の残骸と思われるものも含め、手ひどい被害を受けていた。まばらに落ちているように見える棒のようなものは、おそらく人間の焼死体。逃げ惑いながら、それでも息を引き取った者たちの成れの果て。


「これは、おそらくヴィリュインテーゼの通った後だろう。私たちとやり合う前に、この辺りを焼き払ったんだ……」


 今は亡き焔姫(えんき)ヴィリュインテーゼ。その爪痕(つめあと)が、今もこうして残っている。その事実が、俺のウィルテイシアに協力しようという思いを、より高める結果となって。俺の意志を、強く補強する。


(魔族の根絶、か。今まではただ漠然とだったけど、俺にもそうする動機ができたな……)


 吹きすさぶ風に乗って来る、(すす)けたにおい。それもかつてここに存在していた生命の残滓(ざんし)なのだと思うと、胸が締め付けられる思いだった。しかし。そこで終わってしまっては、何もしていないのと同じ。俺はウィルテイシアの伴侶として、目的を同じくすることを決めたのだから。


 ここで。ふと、気配を感じる。


 大量の何かが、一斉に移動しているような感覚。それは地面を通して伝わってくる振動だったり、耳から入って来るわずかな音だったり、獣とは明らかに違う臭気(しゅうき)だったり。


 それが魔物の類であることは、考えなくてもわかった。


 だからこそ。


「行くぞ、ウィルテイシア。ここを通したら、前の街も危ない」

「わかっているさ、ライオット。せっかくこの指輪と出会わせてくれた街だ。なくすには惜しいし、何より――」


 ウィルテイシアが左腰に差した剣を抜く。その動作には一切の乱れがなく、歴戦の猛者(もさ)ならではの風格を(ただよ)わせている。


「これ以上、人の住処(すみか)を奪わせてなるものか!」


 真っ先にウィルテイシアが駆け出した。


 もちろん、俺もそれに続く。


 そう時間はかからずに、俺たちと魔物の(むれ)は遭遇。即戦闘が開始された。


「ライオット、いつも通りに行こう!」

「任せろ!」


 狼型の魔物の(むれ)に突貫するウィルテイシア。魔物化した狼は、サイズが通常の五倍ほどあり、一頭一頭の戦闘力も高そうだ。しかし、それでも、今の俺たちなら負けない。


 俺は炎魔法で周囲の魔物の動きを封じ、その間を駆けたウィルテイシアが、正面の魔物を一掃していく。


 狭い場所での戦闘ならば。サイズが小さい俺たちの方に分があるのだ。開けた荒野では数で負けていても、こうして魔法で分断してしまえば、あとはこちらの領分(りょうぶん)


 あとはウィルテイシアに当らないように、俺も追撃として炎魔法の雨を降らせてやれば、一度に大量の魔物を仕留(しとめ)めることも目ではない。


「次だ、ウィルテイシア! 道を開く!」

「了解だ! いつでもいいぞ!」


 俺は炎魔法による一帯の仕切り方を変え、ウィルテイシアのための新たな進行ルートを作る。炎が消え入るかどうかというタイミングで、ウィルテイシアはそこを駆け抜け、次の魔物の集団に斬りかかった。ちょっと勇み足過ぎると言うか。そんなに急いだら、せっかくの綺麗(きれい)な髪が炎の熱で傷んでしまうのではないかと不安になる。


「ウィルテイシア! そんなに急がなくていい! 自分の身を大事にしてくれ!」

「何を言っているんだ、ライオット! 手早く仕留めないと仲間を呼ばれるかもしれない!」

「それはそうかもしれないけど! 俺はウィルテイシアに傷ついて欲しくないんだ! 炎できれいな髪が焦げちゃったらどうするんだ!」


 そう伝えると、ウィルテイシアの動きが若干(にぶ)る。動きに切れがなくなった訳ではない。動き始めるタイミングが遅くなったというか、今までよりも慎重にことを起こすようになった、と言うべきか。これは、よい傾向である。


 (はた)から見ていると。炎の色で赤く見えるだけ以上に、ウィルテイシアの頬は赤くなっているように見えて。俺はまたやらかしてしまったのかと、自分の言葉選びを悔いるしかない。


 しかし、彼女は、それを察したのか。むしろ誇らしげに言って見せる。


「私は貴方(あなた)の妻になるのだ! 貴方(あなた)の隣に立つに相応しい女であらねばならない! よって、見た目も重要、だ!」


 言いながら、嬉々として魔物を殲滅する姿は、英雄と言うよりは戦闘狂に近いけど。それでも、仲間としては頼もしいとしか言いようがない。


「頼んだぞ! 俺だってウィルテイシアの綺麗(きれい)な髪をもっと愛でていたいんだからな!」

「戦闘中に、そういう余計な一言は言わなくていい! 手元が狂う!」


 一見ちぐはぐで、でも息ぴったりの俺たちの快進撃はしばらく続き。百頭はいたであろう狼型の魔物は、その全てが(むくろ)と化したのだった。


 残ったのは血の海と、大量の死体だけ。放置しておけば、別の魔物が餌にするために集まって来るかもしれない。


 と言うことで、俺は狼型の魔物の死体を焼き尽くすべく、広域炎熱魔法を放つ。大地から立ち昇るような炎の柱が、空へと消える様は。これはこれで絶景で。


 ウィルテイシアと二人、肩を並べながらそれを眺める。


「美しい炎だな。まるで貴方(あなた)の心のようだ……」

「そうかな。この手の炎魔法なんて、誰が使っても同じ見た目だけど……」

「いいや。この炎は、貴方(あなた)の内から湧き上がっている情熱そのものだよ。私は、そう思う」

「……そっか。まぁ、そういうことなら、誉め言葉として受け取ておくよ」

「ぜひ、そうしてくれ、旦那様?」


 急にそんな風に呼ばれて、驚いたの何のって。


 確かに、結婚したなら夫婦な訳だから、そう呼ばれてもおかしくはないけれど。今はまだ、指輪を贈り合っただけのカップルに過ぎない。


 なので、いきなり「旦那様」などと呼ばれると、少しこそばゆい感じだ。


「ウィルテイシア、それは――」

「もしかして、ライオット!?」


 不意に背後から名を呼ばれ、俺は言葉を止める。


 その声は、今でも俺の心にへばり付いている汚泥(おでい)の元凶となった女性の声で。


 恐る恐る振り返る。


 できるだけウィルテイシアの方を見ないようにして。


 今の俺の顔を見られたくないから。


 そうして振り返った先。そこにいたのは、間違いなく元恋人(フィオナ)で。


「どうしてあなたがここにいるのよ……。てっきり村に帰ったとばかり思ってたのに……」

「フィオナ……」


 胸が苦しい。


 心臓が痛い。


 心が(こお)る。


 身体(からだ)(こお)る。


 どうして、よりにもよって。このタイミングで。


 彼女に――彼らに、出くわしてしまうのだろう……。


「何だよ、ライオット。お前まだ生きてたのかぁ? てっきりあのままくたばったもんだとばかり――」


 聞きたくない男の声。


 そして、ウィルテイシアに出会わせなくなかった男の姿。


「ライオット、てめぇ。ずいぶん美人なエルフ連れてるじゃねぇ~か! フィオナを取られた瞬間に乗り換えかぁ!? いいご身分だなぁ~、おい!」


 いやらしい笑み。苛立つ声。憎い姿。


 あらゆる負の感情が俺の中から湧き上がり、心を黒く塗り潰す。


「どういう関係かは知らねぇがよぉ~! お前にそんな美人は似合わねぇ~って! その女も俺に寄こして、おまえはさっさとくたばりやがれよぉ~!」


 ウィルテイシアが彼を見据えてしまう。


 こんな情けない俺より、整った顔をした自信たっぷりの男の方を。


「何なんだ、お前。無礼(きわ)まりないな。私の旦那様にケチをつけるとは、相応の罰が下ると思っておいた方がいいぞ?」


 ウィルテイシアのその言葉を聞いて、彼はますますおかしそうに笑う。


「旦那様!? 旦那様って言ったのか!? ああ~、その左手の指輪ぁ~! そういうことかぁ~! あははははっ! いいぜぇ~、これは! 最高だ! 天は俺に味方したぁ! またライオットから、女を奪う機会ができたぁ!」


 耳障りな笑い声。


 あの時と同じだ。


 しかも、今回は彼だけでなく、アレクとティオも笑っている。そして、それはフィオナも同様で。


「何よ~。私より美人の女連れてるとか、ライオットの癖にむかつく~。ハヤトが自分の女にしたいって部分は(しゃく)(さわ)るけど? まぁその方がそのエルフも幸せになれるんじゃない? あくまで二番目の女として、だけど!」


 俺は、俺は……。


 こんな奴らと旅をしていたのか。


 反吐が出るほど悔しいのに、でも俺の心はそれに対抗できなくて。


 苦しくて、悲しくて。


 ついつい、昔のことを思い出したりなどしてしまった。


 まだ勇者パーティーとして駆け出しだった頃の、あの輝かしかった時代を――。

読んでいただきありがとうございます。


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