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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第三章 最悪の再会

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第三十六話 束の間、心安らかに/sideウィルテイシア

 ウェンディーヌの乗せられた形で、ライオットと湯あみをすることになってしまった。


(あの場ではああ答えるしかなかったとは言え、男女で湯あみなど……)


 そこまで考えて、私は服を脱ぐ手を止める。


 そう。湯あみをするとなれば、当然裸になる訳で。入る前に見た湯の張られた(ほり)のサイズは、大体二メートル四方くらい。底が丸く削れているので、実際はもう少し狭く感じるだろう。


(そんな場所に、ライオットと、二人で!?)


 私の頭の中に、ほわんほわんとイメージが浮かんだ。


 イメージの中では、私が先に湯を楽しんでいて、心地よい湯の感触を確かめながらゆったりとしているところに、ライオットがやって来る。


『ウィルテイシア。隣、いいか?』

『あ、ああ……』


 そうして寄り添うようにして、二人は湯に浸かり。


 そうして心も体も温まってきたタイミングで、ライオットが積極的になって――。


「ああああああっ! なしだ! それはダメだ! いや、ダメではないのだが! 嫌ではないのだが! 心の準備と言うものがだな!」


 誰にともなくいい訳をしていると、いつの間にか傍にウェンディーヌがやって来ていて、私のイメージを覗き見たのか、いやらしい笑みを浮かべている。


「ほう……。そなたはそういうシチュエーションがお好みか? いいの~。青春というやつじゃな~」

「あ、いや、これは、違うんだ! ライオットがそうしそうではなく、私がそうして欲しいだけというか! ああ、いや!? これで合ってるのか!?」


 私の反応が面白かったのだろうか。ウェンディーヌはコロコロと笑いながら、私の頭に手を置く。


「よいよい。欲を持つのは悪いことではないぞ? そなたのような年頃のエルフであれば、このような状況に置かれれば、普段は希薄な繁殖欲求も高まるじゃろうて。それに、相手があの類稀(たぐいまれ)(さい)を持つ()()とくれば、それはもう致し方なし。大人しく身も心も差し出すのが、女子(おなご)(つと)めというものじゃ」


 そこに関しては同意しかない。ライオットは実に優れた魔導士であり、同時にこれ以上ないくらいの善人で、真面目で実直だ。そんな素晴らしい男性と出会えば、女であれば誰しも恋に落ちようと言うものだし、それを止める手立てがないことは、私にだって理解できる。しかし……。


「ライオットを評価してくれるのは嬉しいが、私とライオット間に割り込もうとするのはいただけないぞ!」

「そんなことで怒っておるのか? 心の狭い女子(おなご)じゃなぁ。あれは英雄の器じゃぞ? そう出会えるものではない。なればこそ、女なら強い()()の子孫を残したいと思うもの。正妻のお前が狭量(きょうりょう)では、ライオットの子孫の繁栄につながらんではないか」

「せ、正妻!?」

「そうじゃろう? 違うなら、わらわがその地位を貰うが?」

「そ、それはダメだ! ライオットの隣は私のものだからな! そこは譲れない!」

「じゃろう? じゃから、(めかけ)を囲うくらいの甲斐性(かいしょう)をライオットの持たせてやっても良いのではないかと言うておる」

「……で、でも。それはライオットが私以外の女に……。その、愛の営みをするということだろう? それは、その……。気持ちがざわつくから嫌だ……」

「妾に正妻の座を奪われると、そう危惧(きぐ)しているということか? そんなもの、そこらの獣にでも食わせておけ。ライオットのそなたへの想いは固い。それ揺らがせる女子(おなご)など、そう簡単には現れぬよ。もしそうなりそうでも、そなたがしっかりと()の者の心をしっかと掴んでおればよい話じゃ」

「それができるかわからないから、こうして悩んでいるのだろう?」


 いくら言の葉と重ねたところで、私とライオットはまだであったばかりで。積み上げて来た時間も思い出も少ない。


 そこに横から別の女性は飛び込んで来て、彼との濃密の時間を過ごされてしまったら、私と彼の絆など、軽く上回ってしまうのではないかと。


「う~む、これは過去のトラウマが原因かの? 少々卑屈(ひくつ)が過ぎる……」


 ウェンディーヌは少し考えるような素振りをしてから、改めて私に言った。


「そんなに自信がないのなら、正妻の座はわらわに(ゆず)れ。そうすれば、一番に愛される覚悟などせずともよい」

「それは――!」


 ウェンディーヌは反論しようとして私の唇にポンと指を押し当て、それを(さえぎ)る。


「そういうことじゃ。そこで反論が先立つという時点で、そなたの中には一番に自分を愛して欲しいという想いがある。それを(ないがし)ろにして、自らの立場を決めるなど、どちらにせよ後悔しか残るまい?」


 そういった彼女の顔には慈愛が満ちていて、まさに生命の母とも言うべき貫禄があった。


 なるほど、これが古代から生きる精霊と言うもの。私などの人生経験では遠く及ばない。それをまざまざと示してくれる。


「そなたが()の者を導き、ここまで(すく)い上げた。それが全てで、()の者がそなたを妻に選ぶ理由としては十分(じゅうぶん)じゃ。(あと)のことは全て些事(さじ)。いくら考えたとて詮無(せんな)きことよ」

「……詮無(せんな)きこと。考えるだけ無駄なのか?」

「力ある(おす)(めす)(ひか)かれる。自然界では当たり前のことじゃ。人間もエルフも、獣人も精霊も、それは(みな)同じ。全ては自然から生まれたもの。その在り方は多少違えど、根本的には変わらん。誰もが必死なのじゃよ。より良い未来を掴もうと、な?」


 より良い未来。そう言われるとわからないでもない。


 私は将来的に魔族を撲滅したいと考えている。しかしそれが、ライオットが生きているあいだに叶うとは限らない。もしかしたら、彼の子や、孫の代でも叶わないかのしれないのだから。


 しかし、そういった未来に、彼の強さと意思を継いだ子孫がいれば。私の夢の達成に大きく貢献してくれるはず。


 それが私一人の子だけでなく、ウェンディーヌを始めとした精霊や、獣人、その他の種族との間にライオットの子がいれば、それは圧倒的戦力となって、ことを押し進めてくれるだろう。そう考えれば、ライオットが複数の女性を妻に迎えることは、私の目的には沿っているではないか。


 しかし――。


「いいや、やはり私はライオットと二人がいい! 他の誰かが入るのは、個人的に好かない!」

「そんなことを言っておると、将来足元を(すく)われるかもしれぬぞ? それはきっと、つらい選択をそなたに()いるじゃろう……」

「その時はその時だ! 少なくとも、それは今じゃない!」


 そうだ。今発生していない問題を、今考える必要はないではないか。それに気づけば話は早い。さっさと覚悟を決めて、ライオットの(もと)に向かわなければ。


「頭が固いの~。そんな未来も、もう遠くないかも知れんというのに……」


 ウェンディーヌの最後の一言はよく聞こえなかったが、私は覚悟を決めて、服を脱ぎ去る。


 それから自分の身体に変なところがないかを確認。


 髪の毛、乱れなし。


 暗器でしっかりとまとめて、湯につけないようにした。変に湯につけると手入れが大変だからな。髪の質感は大事だ。ごわごわでは美しくない。


 身体、目立った傷はなし。


 大きな傷はライオットが治癒魔法などで直してくれているので、あとは残っていない。流石に昔の傷は多少残っているが、それは私にとっての勲章でもあるから、そのままでいいだろう。恥じることなどない。


 胸、いつも通り張りがある。


 戦闘ではちょっと邪魔だけど。彼と出会ってからはそう悪いサイズだと思わないようになった。男性は大きな胸が好きだと聞くし、ライオットも時々チラチラと見ているからきっと大丈夫。


 手足、多少使い込まれている感は否めないが、見た目が悪い訳ではない。


 普段から手入れはしているし、我ながらきれいな手足だと思う。手の平には剣マメがあるが、それも私にとっては強く()ろうと生きてきた証だ。よって問題なし。


(……最終チェック。オールクリア!)


 気合を入れるために、一度深呼吸。


「……よし!」


 私は準備万端で、既に湯に浸かっているライオットの方に向かう。


 身体(からだ)を隠せるものが、彼から借りた手ぬぐいしかないのが困りものだが。ないものを強請(ねだ)っても意味がない。


 できるだけゆっくり。動きから生じる風で、手ぬぐいが(めく)れてしまわないよう、ゆっくりと。


 私はライオットの傍まで来てから、そっと彼に声をかける。


「ま、待たせたな。ライオット……」


 先に湯に浸かっていた彼が振り返って。真っ先にその視線が行ったのは、私の胸の辺りだった。

読んでいただきありがとうございます。


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