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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第一章 伝説の英雄エルフに求婚された

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第二話 必死の攻防

 相手は顔が(あらわ)になったとて、構えを緩めず。次の瞬間にでも、手にした細身の両刃剣で、俺を貫こうとしているのがかわる。


 そんな俺の考えは、すぐに現実のものとなり。相手の剣は繰り返し突き出され、俺の心臓を的確に狙ってくる。俺は上体を捻りながら紙一重(かみひとえ)(かわ)すが、相手の勢いはとどまるところを知らない。


 攻撃を(かわ)(さい)のすれ違い(ぎわ)。彼女の目元に、両の下瞼(したまぶた)からつり上がった目尻にかけて、何かの文字のような(あわ)(あお)紋様(もんよう)があるのが見て取れた。これがエルフ全体に言える特徴なのか、それとも彼女が特別なのか。それはわからない。


 ともあれ、こうして接近して間近で見たことで、その端麗(たんれい)な素顔が一層映える。


 こう言うのを傾国(けいこく)の美女というのだろう。その姿は、まさに女神の現身(うつしみ)。これほどの美貌(びぼう)を持った女性に、俺は今までに出会ったことがない。


 長命として知られるエルフは、種族的な特性として美男美女が多く、若い姿が長く続くのだと、何かの書物で読んだけど。なるほど、確かに。彼女の容姿を見れば、それがただの憶測や噂ではないことがよく分かった。


「……一応聞くけど、俺のこと恨んでる人? 人違いとかじゃなくて?」


 彼女は、答えない。


 次々と繰り出される、まるで千本針を一気に突き付けられているかのような刺突(しとつ)を、俺はギリギリのところで(かわ)す。


(言葉が通じていないのか? それとも、何らかの目的で俺を暗殺しに来たとか……)


 相手の目的が俺を殺すことなら、逃げたところで一時しのぎにしかならないし。正体を明かさずに他者の命を奪おうとする危険人物を相手に、助けを呼ぶのも心苦しい。


 無関係の人間を巻き込むのは、はっきり言って俺の(しょう)に合わないというのもあるけど。そもそもこのレベルの剣士を相手に、その辺にいる一般人が太刀打ちできるはずもない。


エルフ(あんた)が、どういう理由で人間(おれ)を襲って来たかはわからないけど、わかったよ! とことん付き合ってやる!」


 俺が杖をくるりと回し、向きを変えて槍のように構えると、相手は一度攻めるのやめ、一旦(いったん)こちらと間合いを取った。


 エルフの出方(でかた)(うかが)う。


 手足のリーチの長さなら、身長が高い俺の方が上。となれば、彼女は剣を使う他ない。


 そして得物(えもの)が槍と剣なら。武器の間合いでも、俺の方に若干(じゃっかん)()がある。


 しかし、白兵戦の腕前の差を考えれば、俺が彼女に遠く及ばないのは変えようもない事実。こればかりは、今すぐにどうこうできる問題じゃない。


 一応勇者パーティーにいた頃に歴戦の槍術使いの指導は受けたことがあるが、それも一時的なもの。そこいらのごろつきになら負けないレベルにはなったが、剣一筋で何年生きているかもわからないエルフを相手にするには、どう考えても実力が不足している。


 彼女の剣の長さと高い身体能力を考えれば、この距離なら一足刀(いっそくとう)の間合いのはず。それでも安易に攻めて来ないのは、俺の槍術の腕を警戒しているからだろう。どうやら相手は相当慎重な性格らしい。


 それでも、この膠着(こうちゃく)状態も長くは持たないだろう。多少使えるとは言え、俺の槍の腕など、その道の達人には程遠いのだから。彼女ほどの手練(てだ)れなら、いつかはそれを見破られて、切り崩されるのは目に見えていた。


 ふと、相手の姿が消える。


 いや、消えたのではない。高速で重心を低くしたことで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


(いやいや!? いくら何でも速過ぎだろ!?)


 それでもまぁ、種がわかれば視えないことはない。こと動体視力に関してだけなら、子どもの頃から結構自信がある。


 次の瞬間。眼前に迫った刃の切っ先を、条件反射で杖で滑らせ、軌道をずらす。武器同士が散らす、激しい火花。もし俺がただの黒魔導士だったら、今の一撃で眼球から頭を貫かれて死んでいただろうけど。


(そうならなくて本当によかった。怖い怖い……)


 この場で、思考速度に身体の動きが付いて来てくれたのは、黒魔導士という立場に甘んじず、自衛手段として白兵戦の技能を身につけ、鍛錬を怠らなかったからで。これは、俺の師匠の教えだった。


『黒魔導士たるもの、敵を殺すのに使うべきは魔法だ。しかし、敵を殺すのが必ずしも魔法である必要はない』


 常々そう言っていた彼女は、魔法の修練と並行して、肉体強化のための鍛錬を俺に課したのである。


 過酷な戦場において、前衛の仲間とともに散々走り回った挙句、いざと言う時に息切れで魔法の詠唱ができない。なんてことになれば目も当てられないのはもちろんのこと。魔力切れになった瞬間に足手まといになるようでは、黒魔導士としては二流以下だと、耳にタコができるほど聞かされたものだ。


 当時は、何度死ぬほどの目に遭わされたか。回数が多過ぎて、一々覚えていないけれど。それがあったからこそ、俺は今、彼女の攻撃を受け流すことができたのである。


 まったく、俺は、なかなかどうして良い師に巡り合えたと思う。それこそ、巡り合わせというものに感謝する他あるまい。


(師匠は、運命の相手と言うには危険人物過ぎたけどね……。歳はそう離れていなかったけど……!)


 剣の軌道をずらされ体勢を崩した相手に、俺は杖の末端を打ち込む。当たってくれればそれでよし、当たらずともそれで更に体勢を崩せれば、こちらにも勝機がある。


 相手がどう思っているかわからないけど、俺としては、できれば彼女を殺したくはない。それは相手が女性だからとか美女だからとかではなく、俺の戦闘技能の向ける先を、人間――今回はエルフだけど――に向けたくなかったからだ。


 俺の技能は魔王を討伐するために身につけたもの。だから、守るべき対象に向けるのは論外だし、それは同じように魔王軍侵攻の脅威に(さら)されているであろうエルフ相手とて同様のこと。


 俺が(ほふ)るべきは魔王とその配下であって、同じ脅威に(さら)されている者たちではない。


 幸い。俺の一撃は当たりこそしなかったが、彼女の姿勢を更に崩すことができた。


 俺は、ここぞとばかりに。この場にいるはずもない、かつての仲間の名前を呼ぶ。


「アレク、今だ!」


 果たしてこのブラフは、彼女に通じるだろうか。


 まだ一週間ほどしか経っていないけど。もし相手が、俺が勇者パーティーを抜けたという情報を事前に仕入れていたとしたら、このブラフは機能しない。


 それでも。俺が堂々と仲間がいる(ふう)(よそお)えば、相手だって警戒せざるを得ないだろう。


 実際。彼女は支援攻撃を警戒して、慌ててこの場から離れようとしている。


 時間にしたら、ほんのわずかの。


 まさに刹那(せつな)()


 けど、そこが俺にとってはチャンス。


(ここだ!)


 彼女の動きに生じた一瞬の()らぎを突いて。俺は杖を手放すとともに相手の懐に飛び込み。彼女を(おお)うようにして胸ぐらと袖口を掴んで、相手を背負うようにして上体をグンと振り下ろし、豪快(ごうかい)に相手を投げ飛ばす。


 見た目よりもずっと重かった彼女の身体は、それでも木の葉のように宙を舞い。そのまま大の字に地面に叩きつけられた。これにより彼女は「かはっ!?」と息を漏らし、衝撃で綺麗(きれい)()かれたタイル舗装の地面が大きく陥没(かんぼつ)する。とりあえず力いっぱい叩きつけてやったので、相手を無力化するダメージとしてはこんなものか。


 しかし――。


(これは……、さすがにちょっとやり過ぎたか?)


 彼女にではなく、町の住民たちに向けた感情でヒヤリとした。こんなにきれいに敷き詰められたタイルを、たった一人の襲撃者を相手にするのに破壊してしまったのだから。


 けど、やってしまったものは仕方ないし、そもそもこちらは命を狙われていた身。周囲へのいくらかの被害には、目を(つぶ)っていただきたいところである。正当防衛というやつだ。


(ほんと許して欲しい。と言うか許して……)

読んでいただきありがとうございます。


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