王都の洗礼。――最強の騎士団副長に、辺境の神童は牙を剥く
白亜の学院で俺たちを待っていたのは、歓迎の言葉ではなく、品定めするような冷ややかな視線だった。
王立騎士団、そして王立魔導士団。
この国の武の頂点に立つ二人の副長が、俺の「検分」のために現れる。
「辺境のシャドウ・ハウンド潰し。随分とガキだな」
嘲弄、疑念、そして圧倒的な重圧。
だが、俺がここにいるのは、彼らに認められるためじゃない。
隣に立つセシルの価値を証明し、そしていつか、あの「聖女」に辿り着くため。
「模擬戦だ。……相手は、私が務めよう」
立ちふさがるのは、動く山のような威圧感を放つ最強の騎士。
俺は静かに、己の中の「暴力」を解き放つ準備を始めた。
白亜の門を潜り、国立王立魔術学院の広大な敷地へと足を踏み入れたゼクスとセシル。
受付の窓口には、見るからに質の良いローブを纏った職員たちが並び、事務的ながらも特権階級特有の、どこか冷ややかな空気を纏っていた。
「……特待生のゼクス様と、セシル様ですね。話は聞き及んでおります」
受付の初老の男性は、提出された書類と二人の姿を交互に見やり、微かに眉をひそめた。
辺境の村から来たという少年。鍛えられてはいるが、王都の精鋭たちを見慣れた彼の目には、まだ磨かれる前の「原石」にすら映っていないようだった。
「セシル様に関しては、報告にある『治癒適性』だけで特待生としてお受けいたしましょう。ですが……ゼクス様。貴方については、学院側としても実力をこの目で確かめたいという要望がありましてね。本日、特別演習場で『検分』を受けていただきます」
「僕の実力を……ですか」
ゼクスが問い返すと、受付の男は意味深な笑みを浮かべて、奥の貴賓席を指し示した。
そこには、周囲の喧騒を完全に遮断するような、圧倒的な威圧感を放つ二人の人物が鎮座していた。
一人は、全身を鈍色の重厚な魔導甲冑で固めた、短髪の精悍な男。
王立騎士団副長――ヴォルフガング。
もう一人は、深い夜色のローブを纏い、眼鏡の奥で怜悧な光を放つ知的な女性。
王立魔導士団副長――エレノア。
騎士団は「物理的な破壊力」を、魔導士団は「魔術の深淵」を尊ぶ。互いに反目し合う二つの頂点組織の重鎮が、わざわざ新入生の検分に来ているのだ。
「……辺境のシャドウ・ハウンド潰し。随分とガキだな」
ヴォルフガングが、低く地響きのような声で吐き捨てた。
「筋肉の付き方は悪くないが、騎士団の練兵を耐えられる器かどうか……。おい、少年。魔術は何が使える?」
「……一通りは。ですが、近接戦闘も得意です」
「魔導士の卵が剣を振るうと聞いて来てみたが、本当なんだな。片手間なら、我が騎士団の足元にも及ばんぞ」
隣で聞いていた魔導士団のエレノアが、冷徹な観察眼でゼクスを射抜く。
「私は、彼を支えたという少女の治癒と魔力量にも興味があるわ。ですが、報告書にある『工作部隊の全滅』が、もしこの少年の手によるものだとしたら……。そのカラクリを見極めさせてもらうわよ」
エレノアは気づいている。ただの魔法剣士にしては、報告にある「敵の死に方」が異常であることを。
だが、ゼクスとセシルは顔を見合わせ、無言で頷いた。村長やハンスは知っているはずだが、王都への報告には『フィジカルアップ』の詳細は伏せられているらしかった。
(……好都合だ。わざわざ手の内をすべて見せる必要はない)
「……いいでしょう。何をお見せすればいいですか?」
ゼクスは一歩前へ出た。
前世の大人としての冷静さと、今世で積み上げた誇り。
自分を証明するためではない。自分を信じて隣に立つセシルの価値を、この傲慢な王都の重鎮たちに認めさせるために。
「模擬戦だ。……相手は、私が務めよう」
ヴォルフガングが、岩が動くような威圧感と共に立ち上がる。その瞬間、演習場全体の空気が物理的な圧力となってゼクスを襲った。
第11話をお読みいただきありがとうございます。
ついに王都の強者たちとの対峙!
ゼクスにとっては、自分の実力がどこまで通じるかを確認する絶好の機会です。
ここで圧倒的な実力を見せてしまうのか、それとも「程よく」隠すのか。
そして、この戦いを見守るセシルの瞳には、一体どんな感情が宿っているのか。
いよいよ次回、学院の演習場を揺らす激突が始まります!
面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークをいただけますと、ゼクスのフィジカルアップの倍率が上がります(?)




