読者様からいただいた104話までの内容での感想&考察!
とても素敵な感想と考察をいただいたので、本人の許可も得ることができましたので、公開したく本文に載せさせていただきました!
読んでいただいている方が同じ気持ちなのか、そして誰かとこの物語を分かち合いたい!って思っているかた、よければご一読くださいませ。
①
まず先に言っておきたい事がありましてこの物語には
答え、結論は出せても正解や正しさは無い
けれどもそれで 良い のだと感じました。
涼翔
多くの事態を経験したうえで諦められない美月はそれでも、と口に出来なかった本心を口にしましたが涼翔は美月の想いに応えません(応える事ができなかった)でした。
それは涼翔の深層的な思い込みとそれに対する絶対的な決意、互いの想いのすれ違いからでした。
まだ2人の過去について深掘りされていませんが涼翔と美月は離れていても常に互いを思いやる関係だというのは話の中に多く描かれており、二人の関係を文章ではなく行動で描く様は非常に美しいもので読者としても察しがつく訳です。二人は心の底から互いを愛し合っているのだろうと
そんな涼翔を想う美月の幸せは
涼翔 「との」 幸せ
に対して「今」の涼翔の幸せは
美月 「の」 幸せ
でした
しかし美月が涼翔の身を案じ口づけをした際に涼翔は涙を流しました、それは胸の内で自分の意思を押し殺す形でもです。
涼翔の嘘が涙となって現れてしまいました。
涼翔は嘘がつけず行動や態度に出てしまう人間です、そんな彼を理解出来るのは美月だけですがそれと同じく彼の想いの核心を知っているのは常に執着、依存しているセシルだけでした。
美月は本心を語った上で自分の提案を受け入れてくれない涼翔に対して 「嘘」だ! と詰め寄りますがこの時の美月の発言は涼翔の本心を捉えてはいましたが感情的な発言でもあり核心には届きませんでした。
本心と言っても美月は胸の内の全てを話した訳ではありません、言葉足らずだったのです
だから涼翔の心には触れられたが心の核心に届かなかった、セシルの妨害が無ければ全てを曝け出せていたのかも知れません。
対話が大切だと前回言いましたがその対話をする時の感情や状況にも言葉は左右されるので言葉で胸の内を全て伝えるのは難しいと考えさせられる場面でした
涼翔が美月の手を取れない理由は
自分の意思を押し殺し美月の異世界での幸せを願い彼女の婚約を優先させた事が一つ
自分が転生という形で存在している、帰還方法が見かっても美月と共に帰還出来ないことが2つ
本当は美月の想いと同じなのに涼翔は美月と自身に嘘をつき続ける選択をします
これは凄く自分勝手な思考ですし涼翔の思い込みであり現状を受け入れつつある涼翔の歪な愛の形だと感じました。
しかし美月はそんな愛は求めていないですし逆に彼女の想いを裏切る事になってしまいました。
涼翔はセシルからの婚約の約束を受け入れたものの直ぐにでも親へ報告しようとするセシルに対して待ったをかけました。
まだ結末が分かってはいませんがセシルの返事を躊躇した時点でもう察しがつく訳ですよ、すれ違いでも想いの強さと心のすれ違いは読んでてメチャクチャ辛いんです。
ですが今この状況になってしまったのは他の誰でもない涼翔自身が引き起こしたものであり胸の内を曝け出せずに嘘で固めた結果をこういった形で突きつけられ逃げ場がなくなり、それが自分にとって正しい道だと思い込んで心を殺すんです。
残酷ですがセシルを受け入れ今の「ゼクス」としての立場で生きる事が出来れば涼翔にとってそれは「楽な道」な訳です彼の心はもうボロボロなので縋ってしまう、もうこれでいいと
しかしそれに対して躊躇してしまった「美月」がいるからです、「ゼクス」ではなく「涼翔」の本心が現れた場面です、ジーンとしました。
そもそも涼翔はセシルを愛しているのでしょうか?
今回涼翔についての感想ではここが一番の重要点だと思います。
私は最初の感想を書いた際に涼翔がセシルに向ける愛は男女の愛では無く家族愛、親が子へ向ける慈愛ではないか?と書きました。
理由としては涼翔は前世の記憶を持ち美月に再会する為に異世界へやって来ました、そしてセシルと出逢います
セシル自身は涼翔との時間が増えるにつれ彼に対し恋心を募らせ自身と家族の窮地を救われた事で彼に対して恋を自覚しました。
そんな中オムツ交換の話が出てくる訳です
ギャグ回かな?と思っていましたが今思い返せば私の中ではメチャクチャ重要な回で涼翔のセシルへの愛への回答となるのですが、
私の中ではオムツ交換=
赤ちゃんのお世話、お年寄りの介護
と解釈してます。
またそれを行うのは「家族」です
オムツを交換された際に涼翔は恥じました美月という恋人が居ながら痴態を晒してしまったと、しかしセシルは嬉しい訳です愛しの彼に尽くせるのですから、そんなセシルの姿に涼翔は居心地の良さを感じていきますがここで双方の想いへのすれ違いが起きてしまいました。
現代と異世界の記憶を持つ涼翔にはセシルの献身さは子どもや家族が自分に尽くしてくれている愛を感じていると思い この感情は家族愛、慈愛だと思ったんです
涼翔のセシルへの愛は愛ですがこれは男女の恋愛では無く「この時」は家族愛だったのではないでしょうか?
そんな涼翔の事も知らずセシルはどんどん恋心を募らせ涼翔は自分の心に嘘をつき続け、失意の中自身を支え続けてくれたセシルの想いに応えてしまったのでした。
現状を受け入れるという最悪の形で
逆に美月を受け入れた場合はどうでしょうか?
涼翔が美月を受け入れる事は自身の嘘を止め彼女への想いを自覚した時です、
自覚してしまった以上起きてしまった事実からは眼を逸らせませんし逃げられません
彼が一番恐れている事は美月が傷つく事です
そして涼翔は自身が引き起こした事態と向き合わなければなりません
自身の行いが美月を大きく傷付けたという事実に
涼翔がその事実を受け止められるでしょうか?
彼はきっと受け止められず絶望するでしょう美月の婚約を知った時以上に
美月を想って行った行為が結果として美月を傷付けていた事に
「今の涼翔」はその事実からも美月の想いからも目を逸らしたのでした。
話は戻ります
涼翔は美月を探す為に王都へ来ました
そこで今に至るまで多くの事態に巻き込まれ、そこで活躍し(全て美月の為)国からヨイショヨイショと祭り上げられ、涼翔の知らぬ間に外堀を埋められていってしまいます
涼翔の行動は全て美月の為だったのに関わらずその反動が王国の窮地すらも救ってしまい王様から絶大な信頼と酔狂を向けられています、王国からすればエドワードが聖女ミヅキと婚約し国を救った英雄である涼翔とセシルが婚約すればこれ程素晴らしい事はありません、国自体も彼等の婚約を祝います
涼翔は諦めの境地です、優しいセシルを受け入れ美月の居る王国の為に人生を捧げた方が自分にとって良いのだと思い込んでいます
現状を受け入れろ、受け入れるべきなんだと
そんな涼翔が今いる状況は
異世界に召喚され全てを奪われ絶望しそんな自分を支えてくれた人や国に応える為に涼翔と現世を諦めこの世界で生きる覚悟を決めた
「美月」と全く同じ状況でした
二人が王都で最悪な形で再会した時の涼翔と美月の立場が今では逆転しており二人は互いが味わって来た状況の中に居るのです
今や涼翔は恋人の美月ではなく王国の「聖女」としての美月の為を想い身と心をすり減らしています、もう彼は止まらない(止められない)でしょう、
・己の意思を殺し美月の為だという思い込みと嘘
・そんな自分を肯定してくれるセシルの甘い洗脳
・美月の居る王国からの信頼と重責
涼翔は余りにも重すぎる葛藤を背負っている為自分自身の意思で動けなくなってしまっています
しかし涼翔は国同士の争いや大人達の勝手な都合に巻き込まれてるに過ぎません、自分勝手な大人達に従う必要なんてない筈です
本来涼翔の行動は全て美月の為だったのですが美月の為と思い込み国の為に戦っているのです
そんな絶望的な状況の中、美月の本心に気づけるわけがありません
美月の本心、本音はきっと涼翔の心を救うでしょう、しかし「今の涼翔」はそれを拒絶してしまいます
美月の想いに応える為には涼翔自身が「何の為に今この場にいるのか」を自覚しなければなりません
涼翔が心から愛する人は美月です
それと同時に美月を傷つけたのも涼翔です
そんな彼が美月との本音での対話をするなら涼翔は自身の思い込み、嘘を止め自分自身で目を覚まさなければならないのです
涼翔の立場や状況ではなく涼翔の心の核心に触れ彼を目覚めさせる質問はとても単純で
自分は何の為にこの世界に来たのか?
です、涼翔は美月の事となるとセシルの洗脳や国の都合で築かれた彼を覆う外堀など意味をなさなくなり覚悟が決まり動き出します
美月の窮地に現れ彼女を救うのはいつだって「涼翔」なのです
彼は嘘をつく時の立場はいつも「ゼクス」です
彼が土壇場で本心を語る時はいつも「涼翔」です
今彼は大事な岐路に立っています
涼翔はこれから自身と美月の過去を知る拓真と対峙し
美月とセシルの双方と嘘偽りのない感情を持って向き合わなければなりません
もう この「嘘」を貫き通す 潮時です
彼の「本当」の意思は
このまま「嘘」を貫き通す
「ゼクス」なのか
本心を自覚し「美月」の為にこの世界にやって来た「涼翔」なのか
決断の時が迫られています
②
美月
涼翔に窮地を救われ彼はやっぱり来てくれたと歓喜し自分の本心を告げましたが涼翔は応えてはくれませんでした。
そんな失意の中セシルから自分は涼翔と婚約を結んでおり互いに誤解を受けない様にと釘を刺されます、しかし美月は本心と言っても全てを言葉に出来た訳ではありません、
「私は、涼翔が好きなの。それは何があっても変わらない。……涼翔と一緒にいたい」
と涼翔に言いましたがその発言が美月のどの様な想いから発言しているのか、何故好きなのか?何故一緒に居たいのか?に込められた想いを涼翔は知りません、何故なら彼は美月との対話を自身の思い込みから拒んできたからです
涼翔は何よりも大切な美月を自身の行動で傷付けてしまっており今だに涼翔はこの事実を彼女の為だと目を背けます
「……美月。俺は……俺だって、君を愛してる……」
と涼翔は揺れますが涼翔の感想にも書いた通り彼には確固たる思い込みと嘘そしてそれは美月の為だという決意がある為、美月の言葉は涼翔の心の核心には届きませんでした。
美月は自身の窮地を助け愛していると発言した涼翔がセシルと婚約を結んでおり
(美月の勘違いではありますが身体の関係すらも)
更に強くなり過ぎた涼翔に対して手の届かない恋人の姿に更に絶望していく事となってしまいました。
そもそも涼翔とすれ違いを起こすきっかけはそれぞれの失意からでした。
涼翔は美月の婚約を知った時、彼は美月に問いただせたでしょうか?躊躇せず彼女に向き合いどういうことなんだと
彼は自分から美月に会いに行ったでしょうか?美月に再会する為にこの世界に転生して来たんだよ、探しに来たんだよと言えたでしょうか?
出来ませんでした。
自分という存在がありながら美月が他の男と婚約を結んでおり自分がこの世界に来た事を最愛の美月に裏切られたと感じ絶望したからです
そもそも涼翔は美月と再会出来ることが確約されていましたが美月は何も知らないのです
彼女は何も知らない世界でひとりぼっちでした。
そんな美月の気持ちも知らず彼は「自分」を押し殺し「嘘」をつき続ける覚悟を決めます。
(……美月は、この世界で、この王子に愛されて、幸せなんだ。……それを壊す権利なんて、俺にはない)
涼翔はここから「ゼクス」となっていったのかも知れません
何故美月が婚約を受け入れたのかを涼翔は知りません
彼女の本心を知らないですし失意の中知ろうともしなかったからです。
涼翔は美月に寄り添う事が出来ませんでした。
美月は異世界に召喚された際に現状を受け入れず他に打開策がないか足掻く事が出来たでしょうか?
1年間右も左も分からず周囲が敵だらけの異世界の中ひとりぼっちだった美月の側で真摯に自分を支えてくれたエドワードの手を取らずに涼翔がもしかしたら自分を救いに来てくれるのではないかと諦めずに耐えられたでしょうか?
出来ませんでした
美月もまた涼翔と現世の全てを奪われて失意のどん底に落とされ生きる気力すら湧けなかったからです
前に進むには現状を受け入れる他ありませんでした
彼女もまた涼翔が何故自分に嘘をつき続けるのかを知りません
彼の本心を知らないからです、問いただしても答えてくれませし嘘をつきます
美月は涼翔の傷ついた心に詰め寄る事が出来ませんでした。
双方のやり場のない感情の矛先は内か外に向けるしかありません
涼翔は外に美月へ「嘘」をつき続ける苦悩の形で
美月は内に涼翔へ「本心」を教えてと問う後悔の形で
双方に大きな溝と傷を残します
1度目の窮地を救われた際に美月は涼翔が嘘をつきながらも自身を助け、彼の本音を聞きます
美月が何よりも大事だと
美月はセシルに問い詰め彼女から告げられた涼翔の苦悩を知り美月は涼翔に対して彼の嘘を罵倒しましたが実際は自分の方が彼を傷付けていた事実を知り美月は後悔し涼翔がセシルを受け入れていた事実に更に絶望します
それから涼翔と離れ離れになりエドワードが涼翔の活躍を賛美し周囲の人々はそんな涼翔と彼を支えるセシルの関係を暖かく祝福します
それはあの日、美月とエドワードの婚約を、皆が無邪気に祝福していた時と同じような光景でした。
(ねぇ、涼翔。あなたはこんな地獄のような空気の中で、私達にお祝いの言葉を贈っていたの……?)
美月は涼翔とのすれ違いの大きな原因である苦痛をその身を持って味わう事となります
しかし美月は折れませんでした
ゼクスが涼翔だと解った美月は機会を見つけては彼に更に詰め寄ります、しかし美月には聖女としてエドワードの婚約者としての立場やしがらみ、セシルの徹底的な守りの中四苦八苦しますがそれでもと必死に喰らいつき涼翔を自分の指南役にと王様に頼み込んで彼との接点を作り続けました。
涼翔の側に居る為に美月は強くなる決意をしその執念からみるみる力をつけていきましたがセシルの圧倒的な実力差と、揺るぎない涼翔との親愛の絆を見せつけられ、事態に焦った美月は自分の本心を晒し更に涼翔と一緒にいれるのならば『不義の聖女』と後ろ指を指されても良いとの想いで涼翔に迫ります
しかしこの行為は間違いでした
涼翔が最も恐れる事態が美月が傷つく事だからです
(この世界で生きていかなくちゃいけないなら……これが、君にとって唯一の、正しい幸せなんだ……)
涼翔は美月を突き放します、この『愛ゆえの突き放し』が、セシルとの『愛ゆえの共犯』になっている事を知らずに
涼翔の嘘は歪んだ愛です
美月を想った故の酷く身勝手な愛です
美月は涼翔の存在を知らずに失意の中エドワードと婚約を結びましたが涼翔は美月の存在を認知しながらセシルとの婚約を結びました
美月の為と言いながら涼翔の行為は美月の心をどんどんと追い込んでいく事となり何よりも大事な美月の心を涼翔自身が傷つけていたのでした。
美月は数ヶ月間ですが涼翔に教わった特訓をし続け涼翔の15年間には及びませんが彼の壮絶な特訓の日々を体験します、
彼女の感情の矛先は内向きです、決して涼翔を責めはしませんが彼に対し答えを求めてしまいます
自分の何がいけなかったのか、教えてほしい、答えてほしいと
彼女の心はズタズタです、自分自身で心を引き裂いてしまいます
またこの自責の念から美月はエドワードとの婚約を結んだ事が彼を追い詰めたのだと涼翔の心の傷に自力で辿り着きながら美月は決して涼翔との関係を諦めませんでした。
そんな中、帝国の奇襲を受け冒頭に至るわけです
美月は涼翔に対して俺だって君を愛していると言っておきながらセシルを戦場に連れて行く事を選んだ涼翔を強く睨みつけます
(……やっぱり、何があっても、セシルさんを自分の近くにおいて、守るつもりなのね。私には、『俺だって、君を愛してる』って言っておきながら……)
美月は自分の想いを裏切る涼翔に深く絶望します
そんな美月が今いる状況は
嘘だ。
待ってなんていなかった。お前は、たった一年で、別の男の手を取った。
俺の十五年は何だったんだ。俺が殺してきた魔獣の返り血も、凍える夜の孤独も、全てはゴミクズだったのか。
魔術学院の入学式で激情を抑え絶望の中エドワードと美月に祝辞を送った涼翔と同じでした
美月はあの日の涼翔と同じ立場になっていました
あの日と酷似したこの状況で涼翔は美月から目を逸らしてしまうのでした。
あの時の美月とは違い美月の存在を認知しているのにも関わらず
最早二人の関係は水と油です
どんなに美月が詰め寄っても涼翔は美月を受け入れません二人の関係は完全な硬直状態となってしまいました。
しかし涼翔の嘘は美月への嘘であると同時に自身への嘘でもあります
美月は涼翔の苦悩を全て体験し受け入れました。
美月を守る為に鍛えた強さも
美月の婚約を知った時の絶望も
美月への本心を押し殺した嘘も
涼翔の行動は全て美月の為
涼翔の全ては美月でした
仮に涼翔が美月に今までの行為を棚上げし彼女に本心を打ち明けたとしましょう
辛かった、本当は一緒にいたかった
嘘をつき、こんな歪んだ愛し方しか出来なかった
自分には君を愛する資格がない
だから君と一緒には居れない
自分は転生者だから現世には帰れない と
そんな身勝手なことを言っても美月は
やっと本当の事を話してくれたね涼翔
涼翔の15年の努力に対し
ありがとう私を守る為に
涼翔の絶望に対し
ごめんなさい気付いてあげられなくて
涼翔の本心を押し殺した嘘に対し
「貴方がどんな姿でも」私は涼翔が好きなの。それは何があっても変わらない。……涼翔と一緒にいたい
としかならないんです
何故なら心の底から愛しているからです、
愛していると同時に涼翔の気持ちが分かります
美月自身が彼と同じ事を経験したからです
美月は心から涼翔に寄り添えるのです
そして彼女にとっても涼翔は全てです
今までの辛い事なんて涼翔の事に比べたら美月にとって些細な事です
美月は涼翔の事となると、我が出る反面、繊細な一人の女の子です
涼翔を強く求めると同時に現在の状況から心がボロボロになり絶望しながらも決して自分の引き起こした
事実である 「すれ違い」 に目を逸らしません
しかし涼翔の行動は美月の目には自身が選ばれずセシルを選んで見えたのです それ故に
(……もう、いい。……もう、いいよ)
と彼女の中で、愛への未練が死に、代わりに芽生えたのは、その空虚を埋めるための自暴自棄な「諦念」
でした。
(……あの子にするみたいに、私にも、そんな風に壊れるほど執着してほしかった……)
この事実を涼翔が知ったらどうでしょうか?
きっと「涼翔」としての「心」が死ぬのだと思います
心の底から愛した美月を傷つけていたのは自分だと
何て取り返しのつかない事をしてしまったんだろうと
王都で美月の婚約を知ったとき以上に涼翔は絶望する事となるでしょう。
婚約を知った時、失意の彼の側に居たのはセシルです
涼翔は美月の婚約という事実に耐えられませんでした
そこにセシルは涼翔を支え自分に依存させる事により涼翔の側に付け入ったのです
そんなセシルに縋ったのもまた「涼翔」の意思でした
美月はどうでしょうか?
そんなボロボロの涼翔を自分に依存させる様に付け入るでしょうか?苦悩する彼を絡め取る様な愛を向けるでしょうか
美月はしません
彼女は心から涼翔を愛しており、涼翔が苦しむのが何よりも嫌だからです。
辛さを分かち合い共に歩んでいける彼女の愛こそ
「真実の愛」
なのではないでしょうか?
今美月は待つことしか出来ません
涼翔はこれから王国の、そして自身の岐路に立とうとしています
自分達の過去を知る拓真との対峙は涼翔にどの様な感情を齎すのでしょうか?
失意の中美月の元に涼翔が再び現れた時
目の前にいるのは
国の英雄として、セシルの婚約者となった
「ゼクス」なのか
目を覚まし自身の想いを自覚した美月の最愛の
「涼翔」なのか
涼翔を奪ったセシルに張り合う様に美月も涼翔に執着、固執していきましたが本来の美月の本心は
涼翔と一緒に居たい、生きていきたい「涼翔」だから
それは嘘偽りのない彼女の本心です
③
セシル
物語が彼女の理想通りに動いています。
しかし今のこの状況は決して自然となった訳ではなくセシルがゼクスを自分のものにするべく執拗に根回しをしたからこそであり彼女の行動は全てゼクスの為です
このまま何事もなく事が過ぎれば「涼翔」は身も心も「ゼクス」としてセシルのものになるのでしょう
ゼクスを自分のものにしたい
それが彼女の嘘偽りのない愛の形です
セシルは決して成就しない恋をしてしまいました。
彼女の愛するゼクスは転生者でありその恋人である美月を追ってこの世界に転生して来ました
セシルはゼクスの想いを尊重し自らの恋心に蓋をしますがそんなゼクスを待っていたのは恋人の美月がこの国の王子であるエドワードとの婚約という耐え難い現実でした。
(……傍にいられるだけでもいいと思ってた。けど、スーちゃんの想いはもう、絶対に叶わない)
しかしセシルにとってこれは絶好のチャンスでした
美月の婚約という事実がゼクスの想いを打ち砕き失意の中、彼の美月への想いで溢れていた心に隙を作ったからです
セシルは甲斐甲斐しくゼクスを支え続けます
ゼクスもセシルという存在がいなければ美月の元へ駆け寄ってしまいそうな自分を律することができなかった為セシルを受け入れます
そんなゼクスの態度に私を選んでくれた、私の隣にいることを選んでくれたんだとセシルは喜び、美月の婚約に想いを砕かれたゼクスはセシルの献身的な姿勢に居心地の良さを感じていきました。
失意のどん底に居たゼクスにとってセシルのゼクスを想う気持ちは救いでもありました。
ゼクスは美月への想いに嘘を貫くと決意しますが美月はゼクスが涼翔なのでは?と彼に接近します
そして涼翔の本来の癖が出てしまい早々に疑いがかけられ、自分に疑いの目を向ける美月に対してゼクスは彼女から距離を取る理由としてセシルの隣にいる事を「義務」としますがセシルの脳内ではそれが「至上の愛」として完璧に変換されていきました。
ゼクスは美月から距離を取る為にセシルという「盾」を使い自身の心を守ります、美月と接触してしまうと嘘をつき続ける「涼翔」としての決意がブレてしまうからです
そんな彼とは裏腹にセシルはますますゼクスへの想いが高まると同時に彼に執着していきます
ゼクスが自分を頼ってくれている事が何よりうれしいのです
しかし彼の頭の中にあるのは美月の事ばかりでした
「涼翔」は怖いのです
婚約を結び自分を捨てた彼女が迫ってくる事が
事実と向き合う事が
美月に本心を打ち明けても彼女はもう自分を受けいられる立場では無いと思っているからです
ゼクスの態度での嘘は美月の前では通用しません
またセシルを選んでおきながら美月の前では揺れてしまうゼクスにセシルは
「スーちゃん。……スーちゃんは、あの人を黙って祝福するつもりなんだよね……?」
と詰め寄りますがゼクスはまだ美月の事が好きだと答えます
それは「涼翔」の想いの核心です
セシルは彼の嘘が下手だと指摘し、ゼクスは彼女が自分を自分以上に理解してくれている事に戦慄し
セシルからずっと見ていたと告げられ彼女に問いかけます
「セシルは……もしかして俺のことが、好きなのか?」
セシルはゼクスの問いに昔からずっと好きだったと言いゼクスも美月の事ばかり考えていてセシルの気持ちに気づかなかった事に謝罪します
ゼクスの傷ついた心の隙間にセシルの愛がどんどん滑り込んでいきます
セシルはこれからは私のことも、少しは考えて欲しいと告げゼクスからの答えを敢えて求めませんでした
しかしこの行為はセシルがゼクスに自分を意識させる為、彼女が仕掛けた優しさを使った「罠」でした
そんな事とも知らずゼクスはセシルとの関係に居心地の良さを感じていきました。
もう美月の手を取るどころか側にすら居られないと思い込んでいるゼクスは深く絶望しましたがそんな自分を真摯に支え続けてくれたセシルの献身さに彼の心はどんどん救われていきます
そしてゼクスは美月に「嘘」をつき続けるのでした。
もう取り戻せない美月との関係を諦め、失意の状況下でも自身を支えててくれたセシルの想いに応えるのが自分が前に進む為だと
しかしそれは涼翔の意思であると同時にセシルの望みでもありました。
そんな彼女の檻に一歩一歩と近づいているとも知らずに涼翔はセシルとの関係に沈んでいくのでした
そんなゼクスが今いる状況とセシルの献身さは
異世界に召喚された時の「美月」と「エドワード」の関係と同じ状況 でした
しかし今のゼクスとセシルの関係の方が余りにも残酷で醜いものでした
セシルの「本懐」は
ゼクスの心を救う事でも側で支え続ける事でもありません
ではセシルの「本懐」とは?
ゼクスを手に入れる事です
彼に向ける大きすぎる想いは本物です
セシルはゼクスに尽くします愛しているからです
誰にも渡したくないからです
セシルは「涼翔」が美月の事で傷つく度に彼を支え想いを募らせていきます
セシルは本来純粋無垢な女の子でした
今では諦め気持ちに蓋をした恋心が溢れています
涼翔の美月に対する失意の想い、愛憎がセシルのゼクスを想う純愛と混ざり狂愛となっていきました
そんな時美月から
「……須藤涼翔。あなたは、本当は涼翔なんじゃないの?」
と問い詰められます
ゼクスは揺れます美月が涼翔の些細な癖から彼だと見抜かれたからです、この世界にそんな事ができるのは美月しか居ません
ゼクスが揺れたのと同時にセシルも揺れます
彼がまだ美月の事が好きだと知っており美月を受け入れてしまうと思ったからです
涼翔は迫ってくる美月に対して自信の正体に嘘つくと言う明確な拒絶をします自分は涼翔の父だと嘘を言い
そんなゼクスにセシルは嘘を突き通して自分を選んでくれた彼に歓喜します
「でも、あの時……スーちゃんは、ずっと探していたミヅキ様に嘘をついた。それは彼女の幸せのためだよね? ……だったら。空っぽになっちゃったスーちゃんのことは、私が幸せにしてあげたいなって思ったの」
セシルはゼクスの「涼翔」としての苦悩や辛さを知っています、そして彼の想いとその「核心」をも
彼は目の前で嘘をつき心の中では泣いています
そんな彼をセシルはこれで彼は自分のものになったと歓喜しました、それと同時に
セシルは「涼翔」の心の傷に寄り添う事が出来ませんでした。
セシルの愛は「涼翔」が傷つく事でどんどん膨れ上がります
彼の絶望は一歩一歩とセシルの理想に寄るからです
そんな傷ついたゼクスをセシルは寄り添い異常すぎる献身をし続けるのでありました。
セシルの狂愛はこうして「二人」で作られていったのです
「ゼクス」は涼翔の意思であると同時にセシルの理想の「姿」でもありました
そんな中セシルは帝国の襲撃から自身を救い「涼翔」の本音を聞いた美月から問い詰められます
ゼクスの本当の事を知っているのかと
(……昔は、スーちゃんのためならって、応援しようと思ってた。でも、今は違う。もう、スーちゃんなしでは私は生きられない。今更、あなたなんかに渡すわけにはいかない……!)
セシルは大きな勝負に出ます
此処で事実を全て吐き出し彼女がゼクスに対して行った事を突きつけゼクスに近寄らせない様に仕掛けたのです
「十五年間、毎日。ただあなたのためだけに努力し続けてきた彼が、あの日どれほどの絶望を味わったか……あなたにわかる!?」
「だから、私が彼を幸せにしたいって思った。そして、彼は私を受け入れてくれた。卑怯だと言われても構わない。でも、彼は今、やっと幸せなんです」
「あなたにはエドワード王子がいるでしょう? あの日、幸せそうに婚約を発表していたあなたの顔に、嘘偽りはなかった。……だからこそ、彼は傷ついたんです」
セシルは全てを吐き出した後失意の美月を見送り
勝利を確信しますがそれは大きな間違いでした
逆に美月はこの日を境に涼翔の本心と彼が望む美月の異世界での幸せを願う想いがボロボロになりながらも決して諦めずセシルから涼翔を取り返す事に執念を燃やす「今」の美月を作りだしたのでした
それから意識を失ったゼクスと共に故郷に寄り、その際に献身という名のセシルの甘い監禁が始まり
またしても帝国の襲撃に見舞われる事となります
ゼクスの命を狙う帝国
その事実にセシルは最愛のゼクスを奪おうとする帝国に対し彼女の強すぎる力が相手を圧倒し退かせます
余りにも圧倒的過ぎる力で帝国を打ち負かしたにも関わらずセシルはすぐさまゼクスの献身に戻ります
異常すぎるセシルの二面性
しかし双方全てはゼクスの為そして自身の為
彼女の強すぎる愛が確固たる場面でした
セシルは何処に居てもゼクスにベッタリです
ゼクスと二人きりでいる時のセシルは本来のセシル
それと反対に他人には表面は取り繕うが興味など微塵もありません
そんな中美月とゼクスの関係をよく思わないエドワードはそんな彼女の意思に気がついている為彼女の意思を利用し美月をゼクスから離す事を画策します
ここでも対話の重要性が出てくるのですが
セシルはゼクス以外興味がなくエドワードも美月からゼクスを離したい訳ですが
この二人は目的と想いが同じなのにも関わらず協力と対話が出来ませんでした。
互いが互いの想い人にちょっかいかけてくるから互いに協力し合いませんか?となったら異世界ペアは主人公ペアに対してチャンスすら与えずに結末まで迎えられていたのかも知れません
涼翔と美月はその様な対話が出来たうえで上手くいかないのですがセシルとエドワードはきっかけまたはその可能性まで築けないところを見ると執着というものは視野すら狭めるのだと思い知らされるシーンでした
またセシルはゼクスにとって美月とは
「どの様な人物なのか」までは知らないわけです
セシルが知っているのはゼクスの現世での「恋人」だったというだけです
彼女とゼクスの間柄だったら聞ける筈なんですよ
「スーちゃんにとって美月さんはどんな人だったの?」
と、聞けなかったどころか聞く気すらない訳です
セシルにとってゼクス以外どうでも良く美月なんて自分からゼクスを奪う存在だからです
話を聞いてあげていれば「涼翔」としての苦しみが分かり心から寄り添えた筈です
もしそうなれたら「涼翔」としての意思でセシルを選んでいたかも知れなかったしかしこの二人の関係故出来ませんでした。
そもそもこの二人の関係とは何か?
ここがセシルの感想での一番重要なポイントです
涼翔の感想では彼はセシルを愛しているのか?
について書きましたがセシルについてはこれに関しては愛しているとハッキリ言えます
では美月と涼翔の関係と比べてはどうでしょうか?
物語を読んでいると彼女の発言で目につく発言が多々あります「献身」や「居心地」
美月との関係に揺れた際に彼に問う
貴方は私を選び美月を諦めたのだという問い
彼女は現段階で何度も美月の心を折りゼクスを彼の意思で自分の理想に向かって道を選択する様に仕向けるのですが何故かセシルは毎度毎度確認をするのでしょうか?
彼女は不安なのです
彼女は一度諦めてしまっているのです
涼翔と美月の仲には絶対に入り込めないとセシルは諦めてしまった
そして冒頭に書いた二人の関係の破局に希望を見出したのですがセシルは「涼翔」の想いの「核心」を知っているのでいつ美月の元に行ってもおかしくないと分かっているんです
故にいつまでも執着してしまう、本当に相手を想い関係を成立させていれば執着なんてする必要はありません何故なら
信頼があるからです
セシルはゼクスを信頼していない、出来ないのです
怖いのです、自分の手から離れていってしまう事が
だから「献身」や「居場所」を作りゼクスを囲うのです
そんなセシルの檻にゼクスは傾いてしまう
現状が辛いから「ゼクス」の意思は自分の様で自分ではないからです
では二人の間柄はなんなのでしょうか?
本当に婚約を誓った恋人なのでしょうか?
二人の関係は互いが互いに依存しあう
共依存の関係
ではないでしょうか?
セシルは本当はゼクスに「自分の意思」で自分を選んで欲しかった、しかし彼はセシルを「逃げ道」として選んでしまいセシルもそれを喜んでしまった
ゼクスは彼女の本心に気が付けなかった
ですが二人ともこの依存の関係に救われていたのは事実です
ゼクスの元からセシルが自分から離れていく事を考えたら恐怖してしまった時にはもう彼の中では「家族愛」から「依存」へと変わっていったのではないでしょうか
セシルは自分を選んで欲しいという本来の彼女の本心よりもゼクスの返答を待たずに自分から婚約を迫り、そして言われるがままに返事をしてしまったゼクス
「だから……こうして、形だけでも正式に私のものになってくれるだけで、私は十分に幸せだよ」
常に不安で彼を信頼出来なかった
セシルの「私のモノにしたい」は「私に依存させたい」
依存させるのではなく美月からゼクスを自分に振り向かせるという選択が出来なかった
依存させる事でしか彼を自分に振り向かせられなかった
そんなセシルの本心から来る不安にゼクスは気がつきませんでした
セシルの言葉をそのまま受け取ってしまい言葉に込められた彼女の真意に気づけなかった「ゼクス」を作ったのはセシルだったからです
彼はセシルの愛に美月からの逃避を見出してしまった
あまりにも残酷なすれ違いです
心ではなく立場や状況でしか彼を引き止められない
セシルの不安はゼクスに受け入れてもらわなければ解消されない
そしてセシルの不安のサインを見逃してしまった、
側に居るのに気が付かなかったゼクス
読んでいて胸が苦しくなりました。
ゼクスの強さと美月の想いの強さの両方を持つセシルですがゼクスに耽溺するがあまり彼の為にはるかに強く、彼に関してはるかに脆く成長してしまいました
作中で最強の二人が互いに依存し合わなければ精神的に脆く強さとは力ではなく気持ちといった精神的な強さなのだと感じます
セシルの想いはもう誰にも止められません
今や互いの両親へ婚約の挨拶へ彼女の理想へと踏み出しました。
彼女のゼクスという1の為にその他の99を捨てるそんな想いの強さが彼女の強さなのでしょう
しかし全てを捨てセシルよりも早く1の為に99を捨てた人物がこの物語の中に登場しています
須藤涼翔です
そんな彼は最愛の彼女を探す為にこの世界へやってきたのです
自分の愛した男の最愛の女に彼女は牙を向くのでした
そして現在に至ります
セシルは勝利を確信していますが
彼女もまた知らず知らず涼翔の決断を待つ立場であります
涼翔が最愛の美月を傷つけ自分達の過去を知る拓真と対峙した時彼はどんな決断を下すのでしょうか
そして両親への婚約の挨拶へ向かう彼の真意と答えとは
セシルの理想へ「ゼクス」としてか「涼翔」としてか
回答が迫られます
④
今後
これからの3人を取り巻く環境の変化は更に大きくなりました。
王国では帝国との内通者の炙り出しに動き出し
帝国を退けはしたものの根本的な解決はしていません
ゼクスとセシルは両親へ婚約の報告を済ませ結婚の日程が決まりました、美月の結婚式と同じ日に
涼翔はもう雁字搦めでもう身動きが取れませんがそれは自身の言動の結果でもあり当然です
なるようになったとしか言えません
言い逃れ出来ません
このままセシルの手を取り王国の問題を解決すれば2人は王国への影響力は絶大な為、王国の中にはエドワードと美月の結婚よりもゼクスとセシルの結婚を祝う人々も居るでしょう2人は国の英雄です
王国は帝国を退け安泰
セシルとエドワードは互いの想い人と結ばれ
国をあげて祝福されるのでしょう
そして
「涼翔」の存在は死に「ゼクス」となり
「美月」の存在も死に「聖女ミヅキ」となります
本来再会の為にとこの世界へやってきた涼翔が美月とすれ違い自身の嘘でその手を取れず失意の中現状を受け入れる美月そして涼翔
王国は現世からやって来た二人の活躍と犠牲の元に幸せになりましたとさ
めでたしめでたしとなってしまいます
非常に残酷な結末ですが物語のタイトルと今作の重要なポイントだと思っている「嘘を貫き通す」という点においては妥当な結末だとも受け取れます。
では美月の手を取ったらどうなるのでしょうか?
大きなすれ違いの末、遂に2人が結ばれたらそれはもうとても素晴らしい事ですがそれは2人にとって
「茨の道」です
涼翔と美月の愛は王国から望まれない愛です
涼翔が美月の手を取ると言う事はセシルの回で例えた様に美月という1の為に王国やセシル、家族、その他の99が不幸、混乱に陥る事となります
2人を取り巻く王国という環境はとても大きな思想です、無情にも彼らの下す決断をものともせずに受け入れないでしょう
国の英雄と聖女が想いを共にし王子ともう1人の聖女を拒絶し結ばれようなど到底許されません
王国は怒り悲しみ、そして2人を逃さないでしょう
そんな王国の姿はまるで2人を閉じ込める大きな檻です
涼翔はセシルの想い、互いの両親の子を想う想いすらも裏切り、セシルが狂愛に走ってしまった理由が自分だと言う事実に向き合わなければなりません
美月は自身を真摯に支え守ってくれたエドワードを裏切り、自分の決断が彼と王子という立場に泥を塗ってしまう事となり美月は涼翔の恐れた不義の聖女となるのです
2人の選ぶ「道」にはこの様な現実が待っています
しかし逆に美月の手を取るという事は「涼翔」の覚悟が決まったという事です
自身の本心に目を覚まし最愛の美月の手を取ったのなら彼は美月の為に生きると決意し止まらないでしょう
純情一直線 本来の涼翔です
彼の美月の為に鍛えた強さが王国からの脅威を跳ね除けるのでしょう真価が発揮される時です
人は時に「正しくない」選択をしてしまうのかも知れません
しかしそれは相手にとっての「正しさ」です
自分の「正しさ」ではありません
「正しい」と思わされているのです
王国に迷惑をかけてはいけない
双方の婚約者の想いを裏切ってはいけない と
人間として当然ですが本来彼らの目的は再会し添い遂げる事です
王国の都合の為に生きているわけではありません
互いを心から求める涼翔と美月は一つになりたい
今の2人は同じ心境です
婚約が決まっている
辛い時に支えてくれた人がいる
自身の立場がある
互いが互いの立場を経験している、理解がある
本当は互いを想っている、一緒に居たい
けれどもどうしょうもない、どうする事も出来ない
そんな状況下の今
あの日婚約の決まった美月に祝辞を送り絶望した
涼翔の立場にいる「美月」を
涼翔の面影をゼクスに見て真っ先に自分の元に駆けつけてくれた美月の立場となった「涼翔」が
美月の元に駆けつけ「嘘偽りのない自分の気持ち」を互いに伝えることが出来たのなら
「美月が何よりも大事だから」
「私は、涼翔が好きなの。それは何があっても変わらない。……涼翔と一緒にいたい」
あの時あの場面で発言した言葉の見方が変わります
そして想いも
2人の「半身」は一つになります
涼翔と美月が互いを愛する事は理屈ではありません
恨まれ許されなくても「2人」で背負っていけばいい
自分達の幸せの為にどんなに残酷な決断だとしても
想いを貫かなければいけません
諦めることより諦めない方がずっと辛いのです
それが2人の「道」です
想いの通じ合った2人にとって大事なのは現世に帰れるかではなく涼翔と美月が一緒に居れるかです
セシルを選べば美月が犠牲となり
美月を選べば美月以外が犠牲となります
誰かを選ぶという事は
「選ばれる人間」と「選ばれない人間」
が出るという事です
選ばれなかった人間は何故選ばれなかったのかと
いう現実を突きつけられ
選ばれた人間はその先にある未来へ立ち向かわなければなりません
私は①の最初に書いた通りこの物語には
正しさや正解はないと思います
そして「ハッピー」「エンド」も
美月の手を取った時点で2人は全ての犠牲の上で幸せになります
2人にとってそれは幸せなのでしょうか?
しかしこの問いは我々にも言える事です
人の幸福は誰かの犠牲の元成り立っています
気にも留めない当たり前の暖かい食事も、快適な生活環境も人の目に見えないところで誰かが犠牲になっています
だからといって後ろめたく考える必要はないです
感謝すればいい、そして胸に刻めばいい忘れるなと自分達のやってきた事を、自分の幸福を、そのうえで自分達は幸せになるのだと前に進めばいい
2人の幸せは自身の引き起こした裏切りとその犠牲のうえで成り立っています、最愛の人と添い遂げる為に2人は決断したのです
私達は一緒に生きていくと、裏切ってしまった人達の想い目を逸らさず前に進めばいいのです
辛くても心折れそうになっても2人で支える合うのです
罪悪感は残るでしょう、しかし2人の選択はこの様な形でないと添い遂げられないのです
この物語には周囲の人達から祝われ自身の想い人と幸福が約束される様な「幸せ」はありません
そして「エンド」もありません
完結したらそこで彼等の物語は終わりますが描かれていないだけでその先があります
フィクションとはいえ生きているのですから
綺麗におしまいで終われる様な人生ではないから
けれど人生ってそんなものじゃないでしょうか?
生きている限り必死に生きるそれが人間の美しさだと思います
この物語の内容的にどうしても
誰がいけなかったのか、どうすればよかったのか
という犯人探しや正解を探してしまうと思いますが
ハッキリ言ってそんな事は無駄です意味がない
何故ならもう起こってしまっているからです
起こってしまったのならばその起こってしまった事に対して動かなければいけない
そして動いた結果が今です
そして3人は今や決断する立場、決断を待つ立場となり
結末へ物語は向かっています
しかし私は結末よりも結末に至るまでの経緯が大切だと思います
あの時の行動、言葉、感情、想い
その経緯が結末に繋がるからです
そして結末は未来に繋がります
結末にばかり焦点を当ててしまいましたが3人を取り巻く人々もまた動き出します
涼翔と美月の関係を見破ったエレノア
思い込みに囚われ視野の狭まった状態の涼翔と美月との状況の均衡を崩すのは第三者の冷静で公平な
「大人」の広い視野かも知れません
王国での立場も高く涼翔と美月にも会える人物です
思い込んだ涼翔に対して問いかけれる筈です
貴方達の関係はなんなの?と、何故嘘をつくのかと
涼翔からすれば
何も知らない癖に!となってしまいますが
エレノアからすれば
知らないから聞いているんでしょう!?
となります
涼翔からすれば勝手に自分の中で思い悩んで相手の言葉に対して意地を張り無理だと無駄だと否定してしっかりと自分の意思を答えていなかったなと自身の考えを改め
もしかしたら彼女が涼翔の目を覚ますきっかけになるのかも知れません
帝国の勇者という立場の拓真
彼は涼翔と美月の過去を知る人物ですが涼翔との力の差に心身ともにボロボロになっていますがそんな彼の存在に救われ彼を支え続ける事を誓ったラミル
そんな2人の関係はどうなっていくのでしょうか
そしてその2人と対峙した時涼翔は何を思い感じるのでしょうか
王子として、婚約者としてのエドワード
美月との結婚式の日程が決まりましたエドワードは何を思っているのでしょうか?
嬉しいでしょうか?
やっとミヅキと結婚出来るのかと
それとも複雑な心境でしょうか?
自分の力不足と2度に渡りゼクスに自身と美月を救われたことが
彼がまだゼクスに対して対抗心を持つのなら
あんな化け物じみた英雄に敵うはずないと焦り王子という不動の地位に固執するかの様に彼は取り乱していくこととなるのでしょう
逆に自分は命を救ってもらったゼクスに対して立場でしかものを言えず本当に自分は正しいのかとまたしても立場で身動きの取れない彼は苦悩することとなります
本当にこれでいいのかと
自分は美月を愛する資格はあるのかと苦悩していくでしょう
どちらにせよエドワードが待っているのは立場という苦悩なのでしょう、
彼の今作におけるテーマの様にも感じます
最後に
今回は1人1人主要3名の感想を重点的に書きました
涼翔、美月、セシルの目線から見えてくるもの
更に親近感が湧いたでしょうか?
同情したでしょうか?
やりきれなくなったでしょうか?
この物語の本質は目に見えないものだと私は思います
感情制御出来ないような失意や怒り悲しみ
そんな感情に人は出会い向き合った時どうなるのか?
今3名が経験をしたうえで結論を出し結末へ向かおうとしています
彼らの出す答えは果たしてどんな結末を迎えるのでしょうか
物語は続きます
感謝致します
更新楽しみにしております
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作者より
感想、本当に圧倒されながら読みました……!
すごい熱量に、本当に書いていてよかったって思えました
「涼翔と美月、今は立場が逆転している」というご指摘、その通りですね。
ゼクスにそのつもりはなくとも、セシルに外堀りを埋められ、その構図が完璧に完成されつつある状態で、的確に言語化していただけていて、深く読み込んでいただけていて、作者冥利につきます。
二人がそれぞれ経験してきた絶望を、今は互いが相手の立場で味わっている……これがどう動いていくのか、ぜひ見届けていただけたらと思います。
「セシルへの愛が家族愛だったのではないか」というお話も、とても興味深く読ませていただきました。
自分を優しく包み込み、最初は応援してくれて、傷ついたときに寄り添って支えてくれ、自分が下した決断もずっと支えてくれていた⋯⋯そんな彼女を誰にも渡したくないと受け入れ、心地よさを感じながら、美月はエドワードといたほうが幸せなんだからと自身の考えを押し付けて突き放すゼクス。(ゼクス視点)
これ、さらにたちが悪いのを美月に返してて
いつも美月、折れないで⋯⋯と思いながら執筆しています
涼翔自身がどう向き合っていくのか……というのは、まさにこれからの展開で描いていく部分なので、今は何とも言えませんし、私もわかりません。
「自分は何のためにこの世界に来たのか」という問い、これは涼翔にとってもまさに核心の問いだと思います。
彼がこの問いとどう向き合うことになるのか……どうぞ見守っていただけると嬉しいです。
「共依存」という言葉、私自身も書きながらずっと感じていました。
そして美月への解像度の高さ……!彼女の内向きの感情をここまで丁寧に受け取ってもらえて、美月が報われた気がします。
涼翔の「美月のための嘘」が、結果として最も美月を傷つけ、そしてセシルとの歪な共依存の檻を形成していく。
美月がかつての涼翔と同じ地獄の空気を味わいながらも、ボロボロになりながら執念を燃やす姿。そしてセシルが抱える、圧倒的な不安と執着。
正直に言うと、構想は練っておりますが、この感情の行方に、私自身もまだ答えを持っていないんです。だからこそ、こうして一緒に考えてもらえることが、何より嬉しいです。
『君祝』を単なるファンタジーとしてではなく、登場人物たちの割り切れないエゴや、人間の幸福の裏にある犠牲といった「正解のない葛藤」にまで踏み込んで、まるで純文学のように深く考察していただけて本当に嬉しいです。
「誰がいけなかったのかという犯人探しは無駄」という言葉には、まさに私が描きたかった人間の生々しさ、美しさが詰まっていると感じ、胸が熱くなりました。
本当に物語全体を隅々まで見てくださっているんだなと、書いていて何よりの励みになりました。
涼翔と美月、そしてセシル。それぞれが自身の嘘や選択の重さを背負いながら、物語はいよいよ大きな決断の刻限へと向かって動き出します。
王国と帝国。周囲の人物たちが、この均衡をどう揺るがしていくのか。
結末がどのような形を迎えるにせよ、彼らが必死に生き、足掻く経緯を、これからも心を込めて紡いでいきます。
これから先、彼らを待ち受けているドラマを、彼らの生き様を、ぜひ最後まで見届けてください✨️
こんなに深く読み込んでいただいて、本当にありがとうございました!




