第二話
誕生日パーティーに来るように言ったのは、婚約破棄を宣言するためだったのね…やっぱり。
これまでの事を思い出しながら、自嘲気味に微笑む。
「エオリア嬢。貴女の行いは非道ではあるが、侯爵令嬢であり私の婚約者であったという点を考慮し、学園卒業までの残り一年を謹慎処分とする」
「…甘んじてお受けいたします」
国外追放もあり得るかもしれないと思っていたので、謹慎処分で済むのは少し意外に思った。
マルチナ様も少し不服そうではあるが、何も言わないあたり概ね納得しているようだ。
「それでは、失礼いたします。…殿下、お慕いしておりました、どうかお幸せに…」
…もう、お会いする事は無いでしょう。
そう心の中で呟く。
きっとマルチナ様が新しい婚約者になるのだろう。
学園での二人の仲睦まじい姿を思い出す。
邪魔者は早くこの祝いの場から去りましょう。
未だ鎮まりかえっているホールを後にし、我が家の馬車へと乗り込んだ。
馬車は王都の屋敷ではなく、領地へと向かっている。
婚約破棄と断罪されるであろうことは予想していたため、領地へ帰る手筈はすでに整っていた。
両親も使用人のみんなも私の味方でいてくれて、それだけで学園での辛さにも耐えられた。
今日のパーティーも、兄や父が同伴してくれると言ってくれたけど、帰りの馬車では一人になりたかったので、従者も連れず大丈夫だと断った。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
道中、御者のニールが気遣うように声をかけてくれる。
「えぇ、大丈夫よ。湖の所で止めてくれる?少し風に当たりたいの」
「わかりました」
領地に入ると、屋敷への途中に大きな湖がある。
森に囲まれたとても綺麗な湖で、森には薬草も多く自生し、危険な生物もおらず愛らしい小動物の姿も見られる、気持ちの良いお気に入りの場所。
馬車を降り一人湖へと向かう。
穏やかな風に揺られ、水面がキラキラと輝いている。
「…フィオネル様と一緒に来たかったな…」
きっと気に入っていただけたはず。
でも、もうその願いが叶うことはない。
人前では泣くまいと堪えていた涙が、静かに一筋流れ落ちた。
「さようなら、フィオネル様…」
その日、一人の侯爵令嬢が湖で命を絶った。




