第三話
ーーカランカラン。
はたきで棚の掃除をしていると、扉についているベルが鳴り来客を知らせる。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「あら、昨日の!こんにちは。もうお加減は大丈夫ですか?」
「おかげさまで元気になりました!」
この若い女性マーサさんは、昨日出会った女性だ。
湖の近くの街道で具合が悪そうにしていたので、声をかけ介抱し薬を分けてあげた。
「昨日は運が良かったわ!薬屋さんのアリアさんが通りかかってくれて本当に助かったもの!」
湖のほとりにあるこの店舗兼住居から、薬草の採取の為に街道近くまで出ていて良かった。
得体の知れない人間から渡された物を口にするなんて抵抗があるかと思い、より安心してもらおうと名乗るのと同時に、目の前で同じ頭痛薬を飲んで渡したところ感動されてしまった。
「昨日お店の場所を教えてもらったから、さっそく来ちゃった!クッキー焼いてきたから食べよ!」
「ありがとうございます。そこのテーブルにどうぞ、お茶を用意しますね」
「ありがとー!それと、歳も近いんだし敬語はやめて話そう?私のこともマーサって呼んでっ」
「わかったわ、じゃあ私のこともアリアって呼んでね」
ここは薬やハーブなどを取り扱う店で、ハーブティーの試飲などの際にゆっくりしてもらうため、テーブルを設置している。
クッキーとティーセットをテーブルに並べ、席に着く。
「そういえば、この湖で一月くらい前に侯爵令嬢が亡くなったでしょ?」
「そうみたいね」
「そのご令嬢、エオリア様っていうんだけどね、王子様の婚約者だったのに突然婚約破棄されてショックのあまり入水したんだって。なんか、恋敵の子爵令嬢に嫌がらせをしてたらしいんだけど、さすがに可哀想よねー。だってさ、婚約者にちょっかいかけられたら、普通は嫌がらせもしたくなるわよ!」
クッキーを片手に力説するマーサ。
お茶を一口飲むと話を続ける。
「それに、エオリア様は本当は嫌がらせなんてしてないんじゃないかってルーズバイン領のみんなは言ってるんだから!」
「そうなの?」
「そうだよ!アリア知らないの?」
「うん、町にはあまり行かないから」
苦笑いでそう返すと、マーサがこちらに身を乗り出してきた。
「侯爵令嬢なのに平民にも優しくて、ルーズバイン領ではエオリア様って人気高いんだよ?慈善活動にも力を入れていて孤児院を建てたりしてるんだから。そんな人が嫌がらせするなんて考えられないよ」




