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魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
1章~別名説明回とも言う~
5/42

虫、イケメン、緑

 森に入ってから数時間。ようやく標となる川までたどり着いた。

 

 既に俺はこの世界の洗礼を受けていた。魔物に襲われた?違う。幸いにもまだ魔物らしい魔物には出会ってない。

 では何が洗礼なのかというと…虫だ。そう虫。別に俺は日本では虫はそこまで苦手じゃなかった。蜘蛛もミミズも持とうと思えば持てた。ガキの頃は庭に入ってきたカマキリやバッタを捕まえて遊んでいた。夏はキャンプという名の高所トレーニングにも連れて行かれてたし。

 だがこの世界は魔物の影響なのかそれによる生態系の違いなのかとにかくデカイ。そしてキモい。

 綺麗な蝶々だと思って近づいたら俺の顔くらいあるし、ムカデはヘビと見間違うほどに大きい。こんなのが寝起きに身体に乗ってたら俺はショック死する自信がある。

 魔物とかモンスターといえばドラゴンとかユニコーン、ゴブリンを思い浮かべてたけど、そんなファンタジーでファンタスティックなものより断然こういう虫とかのほうが多いってことを思い知った。

 考えてみたら当たり前なんだけどね。日本というか地球でだって熊とかその他動物より虫のほうがずっと身近で数も多い。わかっちゃいたけど、これが現実なんだなって思い知らされる。

 

「ふぅ。あまり遠くに行くなよ」

 

 フェンは川が嬉しいのか水遊びに夢中だ。神狼フェンリルとしての威厳は感じられない。身体や種族が変わってもフェンはフェンのままだ。

 

 ここで暫し休憩だ。

 肉体的疲労は全くない。しかし、精神的にはかなり疲れた。まだ出会ってないからっていつ魔物が近づいてくるかわからないからだ。

 気配探知のスキルもぼけーっとしているだけでは発動しないようだ。結局スキルっていうのはその動作をしようと思う延長線上にあるものみたいだ。

 例えば[硬化]もそう。手に力を入れて硬くすることの延長。逆に言えば練習次第でスキルを使おうと思わなくても使えるってことだ。箸を使おうと思いながら使ってるわけじゃないのと一緒。

 

「それに」

 

 犬かきをして気持ち良さそうに泳ぐフェンを見る。

 確かに俺もフェンもスキルとやらの影響や種族の変化で強くなった。

 前世と今世を比べたら100回やって100回今世が勝つだろう。

 しかし、まだ誰と戦ったわけでもない。

 前世の俺より強くなったとはいえ、今の俺やフェンがこの世界で強いと呼べるかはまだわからないのだ。

 あんな虫がいるからにはさぞ化け物じみた魔物や人がいるに違いない。

 面倒なことだ。

 いかんいかん。せっかくラノベのような世界に来たんだ。俺の未来は明るいに違いない。うむ、間違いない。

 とりあえず顔でも洗って…

 

「あれ、これ誰」

 

 水面に映る顔を見て思わず声が出てしまった。

 確認のため顔をぐにぐにと手で触る。

 水面の顔も手でぐにゃぐにゃと歪んだ。

 

 …なんてこった。

 

 前世の俺は正直イケメンとは言い難かった。

 自分では中の中だと言い聞かせてきたが、正直下の上、いいとこ中の下だったろう。

 それがこんなにイケメンになるなんて。今ならモデルにも俳優にもなれる気がする。

 幾度となく親父に顔面を殴られ、潰れたようだった鼻は高くなり、目も二重に。

 年齢通りまだ幼い感じだが、彫りがやや深くなりはじめていて、ダンディな感じもする。

 畳で擦れて分厚くなった耳も元通り。

 髮は日本人らしい太くやや癖のあるものからさらさらストレートに変わっている。髪型はツーブロックから変わっていないが。

 正直この変化はフェンがいてくれたことの次くらいに嬉しい。

 これでモテモテライフは間違いない。とっかえひっかえしてみたい。なんなら何人か養ってもいい。むしろ養って欲しい。

 キモいというなら言ってろ!それも直に負け犬の遠吠えになるはずだ。

 こっちは体は大人、頭脳も大人、股間は猿並の元素人童貞様だぞ。

 …ふぅ、つい興奮してしまった。それほど嬉しかったのだ。

 

 そうこうしている内にフェンが戻ってきていた。

 

「おいおい、水を払わないと冷えるぞ?ん?どうした、そんな怖い顔して」

 

 これは普通じゃない。こいつは多くの門下生が出入りしていた道場でもほとんど吠えたことはない。まして喉を鳴らして威嚇なんて…

 そこでフェンの様子の変化の理由に思い至った俺はすぐに気配探知を展開する。

 

「なるほど。これに気付いたのか。近くに2つ。少し離れたところに5つか」

 

 フェンが視線でどうするか問いかけてくる。吠えないのはさすがだ。ここで吠えたら離れている集団にも気付かれる。

 さてさてどうするか。

 近くの2つは既に20mほど、川のほうへと近づいてくる。川辺はやや拓けているので逃げても見つかるのは間違いない。再び森に入ると迷いかねないし、追いかけられても振り切れるかわからないし、振り切れなかった場合人里に魔物を連れていくことになる。

 いかんせん俺は素性の知れないやつなわけで怪しまれるような言動は避けるべきだろう。

 離れている集団は恐らく50~60m。動きからしてまだこちらに気付いていないようだ。

 そしてどの気配もさして強くない。

 となれば…

 

「フェン。先手必勝だ。出来るだけ声を出させないように喉を潰せ」 

 

 フェンは先程と同じように視線で答える。

 気配の正体が茂みの隙間から見えた。それはよく知っている魔物。

 

 ゴブリンだ。

 

 ゲームなどではスライムと並んで序盤に出てくる魔物の定番。謎知識も目の前の生物がゴブリンだと言っている。

 ただ実際に見るのはゲームなどのものよりかなり醜悪。

 身長は130cm程度で肌は茶色と緑を混ぜたような色。やたらと大きな目と長い鉤鼻、尖った耳が特徴的。身体は骨張っており、腰に申し訳程度に毛皮を巻いている。

 更にゴブリンに関しては謎知識に更に詳しい情報があった。

 ゴブリンはこの世界で最も身近な魔物らしい。雑食で作物を食い荒らすこともあれば、家畜を襲うこともある。それに虫や雑草まで食べることもあるらしい。

 性格としてはとにかく好戦的。食えるものならなんにでも襲いかかる。そして基本的に集団で行動し、一匹いたら数十匹いると言われるゴキブリのようなやつだ。

 

 片方は木でできた棍棒。もう片方は錆び付いたナイフを持っている。

 姿を確認したと同時にフェンと共に茂みに飛び込む。

 フェンが棍棒のほうに向かっていくので俺はナイフのほうへ。

 人型ではあるが、今はナイフを見るだけで頭が沸騰しそうだ。殺すことに躊躇いはない。

 ゴブリンたちは草木の揺れる音でこちらに気付いたようだがもう遅い。

 俺より早く、フェンはゴブリンに到達した。フェンを見たゴブリンはたじろぐ。

 その隙に喉を食い破っていた。

 仲間がやられたことにも気付かず、ゴブリンは俺に向けてナイフを振り回す。

 無造作に突き出されたナイフを左手で弾き、右手は指を揃えて手刀の形に。

 狙うのは喉。声をあげて仲間を呼ぶようなことはさせない。

 [硬化]を施して一気に喉に向けて突き刺すように放つ。

 喉を潰したらそのまま首の骨を折っ…

 

「え?」

 

 

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