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【連作短編】レーテーのほとりで、虚構とワルツを。―亡霊は白に花を描く―  作者: 蒼樹ろーさ
今日は、必要ありません ~神様のチートアプリより、あなたと選ぶ今日がいい~
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20/27

第四話 俺に相談しろ

翌朝。

目を覚まして、アプリを開きます。


『今日の推奨スケジュール』


いつもと同じ内容が並ぶ。

でも、今日は。


「たまには、違うこともしてみたらどうだ」


リオンさんの言葉が、頭をよぎりました。


ギルドにて。

私は、クエストボードを見上げました。

アプリは、いつもの依頼をハイライトしています。

でも、その隣に。


『魔物討伐(森の北側)』


私は、その依頼書に手を伸ばします。

アプリに、即座に警告が出ました。


『推奨されない選択です』

『成功率:58%』

『推奨:通常の採取依頼に変更してください』


でも。


「これを、受けます」


受付嬢が、驚いた顔をしました。


「レイナさん? 魔物討伐は、初めてですね」

「大丈夫です」


いつもと違う選択。

不安でいっぱいですが。


「レイナ?」


背後から、リオンさんの声。

振り向くと、彼が立っていました。

少し驚いた顔。


「魔物討伐?お前が?」

「…何か問題でも?」


リオンさんが言ったから。

あの言葉が気になって、行動を変えてしまったのです。


リオンさんは、少し考えました。

そして。


「…なら、一緒に行く」

「え?」

「初めてなんだろ。見ててやる」


胸が、どきっとしました。

意味もなく髪の先をつまんでしまいます。

この気持ちは…嬉しい、のです。


「…別に、ひとりでも」

「俺、必要ない?」

「……必要、ないわけでは」

「相変わらず、素直じゃないな」


リオンさんは、少し笑いました。


「まあいい。行くか」

「…はい」


アプリが、また警告を出します。

でも、私は無視しました。


⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹


森の北側。


「大丈夫だ。俺がサポートする」

「…頼りにしています」


リオンさんに、私は小声で答えました。


驚いたようにリオンさんがこちらを見て。

それから笑いました。


「ああ」


魔物が出現し、私はアプリの指示通りに動きます。

でも、動きが遅れます。

リオンさんがフォローしてくれます。


「すみません…」

「大丈夫。初めては、みんなそうだ」


リオンさんが言いました。


「なあ、レイナ」

「はい?」

「お前、ずっと端末を見てるな」


私は、アプリに目を落としました。


「…はい。必要ですから」

「本当に、必要か?」


「もちろん」と答えようとして。

何かが引っかかって、口を閉じました。


「いい子だ。よく考えてみな」


リオンさんが、私の頭に手を乗せました。

温かさと、リオンさんの手の重み。

この感触、胸があたたかくなります。


⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹


魔物が突然茂みから飛び出しました。

アプリに警告は出てな――。


「レイナ!」


リオンさんが叫びました。


「サポートする! 自由にやれ」


私は、はっとして、リオンさんを見ました。

魔物を捌きながら、視線がこちらを向いています。


「お前なら、できる」


私は、アプリを閉じたまま。

状況を自分で判断して、魔法を放ちました。


成功。


「できるじゃないか」


リオンさんが、隣にやってきました。


「…私、できました」

「ああ。お前の力だ」


視界が滲みます。

頭に、温かい重み。

私の涙が止まるまで、リオンさんは頭を撫でてくれました。


⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹


帰路。

二人で並んで歩きます。

夕日がきれいです。


「なあ、レイナ」


リオンさんが言いました。


「判断するのが怖いなら、俺に相談しろ」

「……相談?」

「間違わないように、一緒に考えよう。それでも間違えたら、その時は連帯責任だ」


連帯責任。

その言葉に、何かが軽くなりました。


「…よろしく、お願いします」

「あぁ、任せろ」


夕日に伸びる影は長く、寄り添っていました。


⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹


その夜。

アプリを開きます。


『本日の評価:完璧』

『すべての行動が最適化されました』

『セーブ・ロード機能が解放されました』


「…最適化?」


リオンさんのことを思い出します。

相談していい、と言ってくれた。

包み込むような低い声。


「誰かに相談できるようになるのが、目標だったのでしょうか?」


私は、とりあえずセーブを使ってみました。

窓の外は、星がきれいです。


「明日も、頑張りましょう」


私は、穏やかな気持ちで目を閉じました。

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