第四話 俺に相談しろ
翌朝。
目を覚まして、アプリを開きます。
『今日の推奨スケジュール』
いつもと同じ内容が並ぶ。
でも、今日は。
「たまには、違うこともしてみたらどうだ」
リオンさんの言葉が、頭をよぎりました。
ギルドにて。
私は、クエストボードを見上げました。
アプリは、いつもの依頼をハイライトしています。
でも、その隣に。
『魔物討伐(森の北側)』
私は、その依頼書に手を伸ばします。
アプリに、即座に警告が出ました。
『推奨されない選択です』
『成功率:58%』
『推奨:通常の採取依頼に変更してください』
でも。
「これを、受けます」
受付嬢が、驚いた顔をしました。
「レイナさん? 魔物討伐は、初めてですね」
「大丈夫です」
いつもと違う選択。
不安でいっぱいですが。
「レイナ?」
背後から、リオンさんの声。
振り向くと、彼が立っていました。
少し驚いた顔。
「魔物討伐?お前が?」
「…何か問題でも?」
リオンさんが言ったから。
あの言葉が気になって、行動を変えてしまったのです。
リオンさんは、少し考えました。
そして。
「…なら、一緒に行く」
「え?」
「初めてなんだろ。見ててやる」
胸が、どきっとしました。
意味もなく髪の先をつまんでしまいます。
この気持ちは…嬉しい、のです。
「…別に、ひとりでも」
「俺、必要ない?」
「……必要、ないわけでは」
「相変わらず、素直じゃないな」
リオンさんは、少し笑いました。
「まあいい。行くか」
「…はい」
アプリが、また警告を出します。
でも、私は無視しました。
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森の北側。
「大丈夫だ。俺がサポートする」
「…頼りにしています」
リオンさんに、私は小声で答えました。
驚いたようにリオンさんがこちらを見て。
それから笑いました。
「ああ」
魔物が出現し、私はアプリの指示通りに動きます。
でも、動きが遅れます。
リオンさんがフォローしてくれます。
「すみません…」
「大丈夫。初めては、みんなそうだ」
リオンさんが言いました。
「なあ、レイナ」
「はい?」
「お前、ずっと端末を見てるな」
私は、アプリに目を落としました。
「…はい。必要ですから」
「本当に、必要か?」
「もちろん」と答えようとして。
何かが引っかかって、口を閉じました。
「いい子だ。よく考えてみな」
リオンさんが、私の頭に手を乗せました。
温かさと、リオンさんの手の重み。
この感触、胸があたたかくなります。
⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹
魔物が突然茂みから飛び出しました。
アプリに警告は出てな――。
「レイナ!」
リオンさんが叫びました。
「サポートする! 自由にやれ」
私は、はっとして、リオンさんを見ました。
魔物を捌きながら、視線がこちらを向いています。
「お前なら、できる」
私は、アプリを閉じたまま。
状況を自分で判断して、魔法を放ちました。
成功。
「できるじゃないか」
リオンさんが、隣にやってきました。
「…私、できました」
「ああ。お前の力だ」
視界が滲みます。
頭に、温かい重み。
私の涙が止まるまで、リオンさんは頭を撫でてくれました。
⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹
帰路。
二人で並んで歩きます。
夕日がきれいです。
「なあ、レイナ」
リオンさんが言いました。
「判断するのが怖いなら、俺に相談しろ」
「……相談?」
「間違わないように、一緒に考えよう。それでも間違えたら、その時は連帯責任だ」
連帯責任。
その言葉に、何かが軽くなりました。
「…よろしく、お願いします」
「あぁ、任せろ」
夕日に伸びる影は長く、寄り添っていました。
⊹‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⊹
その夜。
アプリを開きます。
『本日の評価:完璧』
『すべての行動が最適化されました』
『セーブ・ロード機能が解放されました』
「…最適化?」
リオンさんのことを思い出します。
相談していい、と言ってくれた。
包み込むような低い声。
「誰かに相談できるようになるのが、目標だったのでしょうか?」
私は、とりあえずセーブを使ってみました。
窓の外は、星がきれいです。
「明日も、頑張りましょう」
私は、穏やかな気持ちで目を閉じました。




