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第四話 続く日々

ノートパソコンの電源を入れる。


ログイン画面に残った莉奈の名前。

保存フォルダに並ぶ、無数の動画ファイル。


Rina_base_01

smile_test

lip_motion_retry


震える指で、私はそれらを開いていく。

私は、苦笑した。


「……莉奈。これじゃ、いつまでも完成しないよ」


莉奈が見せてくれた動画。

ディープフェイク作成サイトで作った簡易なものだった。

継続的に、作成者が必要になる。


莉奈が語った夢は、配信し続けることだった。

それを満たすためには。


「自律して動くAIに、莉奈を学習させる」


画面の中の“莉奈未満”が、ぎこちなくこちらを見つめる。


「あなたはリナ。配信者。はにかんだように笑う…」


私はAIに学習させていく。

これまでに撮っていた動画。

喋り方の癖。

思い出。


出来た人格と会話して、調整をかける。

違和感を、ひとつずつ消していく。

何度も試行を繰り返した。


「見てくれる?」


あの日の声が、耳の奥で繰り返される。


「うん、絶対」


私は約束した。

だから、莉奈の配信を見るまでは。


数ヶ月後。

会話する限り、AIリナは莉奈と遜色ない。


配信ツールとの連携を行い、コメントにも反応できるようになった。


そして今日、配信を行う。


最後の補完処理を走らせる。

進捗バーが、ゆっくりと伸びていく。

90%。

95%。

99%。


「……お願い」


配信タイトルは、彼女が最後にメモしていた言葉。


――“今日も見てくれてありがとう”


開始ボタンを押す。

数秒の暗転。

そして。

起動画面に、リナの笑顔が浮かんだ。


「みなさん、こんにちは」


柔らかい声。

自然なまばたき。

あの、少しだけ甘えるような語尾。


私の視界が、滲む。


――やった。

――約束、守れた。


同時視聴者数が、ゆっくりと増えていく。

コメント欄が、流れ始めた。


「莉奈ちゃん、待ってたよ!」

「元気そうで良かった」

「久しぶり!寂しかった!」


画面の向こうで、彼女は笑う。

表情豊かに、驚いてみたり。

時々、唇を舐める癖。


私は、そっとモニターに触れた。


「莉奈……見てるよ。約束どおり」


画面の中の彼女は、少しだけ頬を染めていた。


プログラムされた動きのはずだけれど。

私の胸は、暖かくなった。

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