第三話 願い
静かに雨が降っている。
莉奈の葬儀。
私の親友は、いなくなってしまった。
白い花が整然と並び、彼女の小さな棺を包む。
私の肩は、ずっと震えている。
眠っているように見えるのに。
もう二度と、目を開けることはない。
莉奈の笑顔を見ることができない。
声を聴くこともできない。
『ユイ。私のこと、忘れないでね』
『…当たり前でしょ』
『ほんとに? 絶対?』
『うん、絶対』
少しだけ怖い。
私は、この先ずっと、莉奈のことを忘れないでいられるんだろうか。
「――安らかに」
ただ静かに祈った。
葬儀が終わり、数日後。
莉奈の家族から、見てほしいものがあると声がかかった。
訪れると、莉奈の部屋に案内された。
何度も何度も来た部屋。
まだ、莉奈の体温が残っている気がする。
棚には、修学旅行で買ったお揃いのクマのぬいぐるみ。
配信の時、いつも背景に映っていた。
机の上に積まれた参考書。
一緒に、試験を受けるはずだった。
もっとたくさんの時間を、一緒に過ごす予定だった。
家族が、ノートパソコンを示した。
隅に小さな付箋がある。
『ユイに見せる約束をした。がんばろう!』
少し丸い、莉奈の字だ。
「見てくれる?」
あの時、莉奈はそう言った。
「うん、絶対」
私は、そう答えた。
この中に、きっとAIリナのデータがある。
病室で見た、ぎこちないAIリナ。
『また、配信しようと思うの!』
叶わなかった莉奈の夢。
顔、声、癖を再現したAIリナが完成したとして。
AIリナの配信は、莉奈の配信と一緒なんだろうか。
目を逸らそうとした時、莉奈の声が頭に響いた。
『約束だよ!』
――そうだ。「配信を見る」約束をした。
私は深呼吸をひとつした。
「莉奈」
ノートパソコンに、手を伸ばす。
「約束、守るから」




