最終話 永遠の笑顔
配信は、無事に終わった。
私はリナに話しかける。
「おつかれさま」
『おつかれさま!緊張したぁ~』
リナはへらりと笑って見せた。
『ユイとの約束も守れたし、みんなにも喜んでもらえて、すっごく嬉しい!』
ただのプログラム。
分かっているのに、話しかけてしまう。
「……約束、守れてよかったよ」
『ユイはいつも、わたしとの約束守ってくれるよね!ユイと親友でよかった!』
「……莉奈……っ」
涙が、溢れた。
莉奈だ。
わたしの知ってる莉奈だ。
『ゆ、ユイ、泣かないで…! ずっと、わたしはここで配信してるから、いつでも会えるよ!』
慌てた顔。
莉奈がモニター越しに、こちらを見ている。
「…そうだね。ありがとう」
『こちらこそ、いつもありがとうだよ!』
はにかんだように、莉奈が笑った。
そして。
『…もし、あの後魂になって、ここにいるっていったら……ユイ、信じてくれる?』
世界から、音が消えた。
演算の結果なのか。
それとも、どこかで零れ落ちた奇跡なのか。
光る画面の中、不安げにこちらを見つめる莉奈。
「…莉奈……っ」
暗い部屋の中。
モニターの光に照らされながら、私は声をあげて泣いた。
しばらくして。
私は、ゆっくり息を吸った。
泣き止んだ声で、問いかける。
「ねえ、莉奈」
『なあに?』
少し首を傾げる仕草。
「これからも……配信、続けたい?」
一瞬、間があった。
『……うん』
真剣な顔で、莉奈がうなづいた。
『だってね、今日ね。みんな、笑ってたでしょ?』
コメント欄を振り返るように、視線を動かす。
『ああやって、誰かが少し元気になるなら、わたし、続けたい』
私は、目を閉じる。
「…そっか」
私は、小さく笑った。
「じゃあ、続けよう」
『ほんと!?』
ぱっと表情が明るくなる。
『ずっと、ずっと、続けていい?』
その言葉に、私は頷く。
「うん。ずっと」
画面の中の莉奈が、はにかんだように笑う。
『えへへ。次の配信タイトル、どうする?』
涙の跡が乾いていく。
私はキーボードに手を置いた。
「そうだね……」
少し考えて、入力する。
――“また明日、ここで”
エンターキーを押す。
暗い部屋の中。
モニターの光が、私たちを照らしている。
消えなかった。
形は変わっても。
それでも、ここにいる。
「おやすみ、莉奈」
『おやすみ、ユイ』
電源を落とす直前、彼女はいつもの笑顔で言った。
『明日も、見てくれる?』
私は微笑む。
「うん。絶対」
一年後。
登録者数は20万人を超え、画面の中の彼女は、よく笑っている。
カレンダーに並ぶ、365個の赤いマル。
わたしと彼女の約束は、続いていく。




