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【連作短編】レーテーのほとりで、虚構とワルツを。―亡霊は白に花を描く―  作者: 蒼樹ろーさ@毎月1-5日更新「レーテーのほとりで、…」
石を、お投げくださいませ ~悪役令嬢の断罪を回避したら、のんびりできますか?~
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第四話 朝

目が覚めたのは、夜明け前だった。

眠れたのか、眠れなかったのか、よくわからないまま、気づいたら朝だった。


カーテンの隙間から、薄い光が差し込んでいた。

幽霊は、いない。

朝の光の中には、いつも、いなかった。

部屋が、少し広い。


侍女が入ってきた。

いつも通りの時間に。

いつも通りの顔で。


「今日のドレスは、いかがなさいますか」


わたくしは、少し考えた。


「白にするわ」


支度をしながら、侍女が言った。


「今日は、大切な日でございますね」


「そうね」とわたくしは言った。

侍女は、それ以上何も聞かない。

賢い子だ。


鏡の前に座るわたくしの髪を、侍女が整えていく。

鏡の中の、わたくし。

白いドレス。

整えられた髪。

完璧だ。

幽霊に、似ている。


支度が終わり、侍女が下がる。

部屋に、一人になった。

わたくしは、鏡をもう一度、見た。

鏡の中に、わたくしだけがいる。

ずっと、そうだったように。


廊下に出ると、クラリス様とすれ違った。

目が、合う。


クラリス様の目が、勝利で輝いている。

わたくしは、目を伏せる。


クラリス様の足が、少しだけ、速くなった。


「…行ってらっしゃい、クラリス様」


わたくしは呟いた。


「急ぐ人間は、踏むよ」


୨୧┈┈୨୧┈┈୨୧


大広間への廊下は、長い。

窓から、冬の光が差し込んでいる。


歩きながら、思う。

必要なことは、すべて終わっている。

あとは、――だけ。


扉の前に立つ。

中から、人の気配がする。


わたくしは、一度だけ、息を吸った。

息を、整える。

幽霊は、もう必要ない。


扉を、開けた。

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