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62の舟券  作者: 広瀬修一
20/22

離別


「京都へ、いっしょに行かへんのか」


と榊原に聞いても返事は無かった。


ポケットから一万円の束を取りだし、


「祝儀や」


と言って、10万円を渡そうとすると


「電車代だけでえぇ」


と榊原は言った。


タクシーに乗り、近鉄の津新町駅まで行き、


「アパートが決まったらすぐに電話するから出てきぃな」


と言って、榊原と別れた。


京都に着くと、すぐ宇治の六地蔵の近くにアパートを借りて、

榊原にも住所を知らせた。


ふたたび、琵琶湖競艇場がよいをはじめた広瀬だったが、残ったお金も、

またたくまに無くなり、日雇いの仕事をしながら競艇場に通うという

以前と同じその日ぐらしになっていった。


そして誰も友達や知人のいない一人暮らしのアパートで肺炎を起こして

苦しんでいるところをたまたま訪れた家主に助けられて病院へ担ぎ込まれた。


それまで大きな病気もしたこともなく元気だけがとりえであったが

病気になって貯えもなく保険も無い、そんな現実に直面して

底知れない不安を感じて、このままじゃいけないと一大決心をして、

職安にでかけ愛知県の刈谷市にある自動車部品の会社で働くことにした。


競艇もやめようと思うのだがそう簡単には行くわけはなく

蒲郡競艇場や常滑競艇場が近くにあり、休みの日になると、

がまんできずに出かけてしまった。


そんな時、鹿児島出身の谷村ちさ子という女性と職場で出会い、

ひと目で好きになり、この女性と一緒になれるならばギャンブルを

やめてもいいと思い、再度挑戦を誓い付き合うことになった。


付き合いだして半年もたたないうちにちさ子の鹿児島の実家の

父親が亡くなり家業の花屋を手伝うため鹿児島に

帰ることになり、ふたりは離れ離れになる事になってしまった。


ちさ子が鹿児島に帰る前日に名古屋空港近くのホテルで一夜をすごし

翌日空港で見送り、その後は遠距離恋愛を続けた。


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