1.訓練
マロールの街に戻った僕たちは、冒険者ギルドへ報告をした後、それぞれが久々の休日を謳歌していた。
休息も一流になるためには必要・・・らしい。
実際に、今回の任務の報酬はかなり高く、しばらく遊んで暮らせるほどの稼ぎになっていた。
思えば、2年前は無一文で、いつも腹をすかしていた。
そういえば、最近は腹ぺこというようなことがない。
封魔紋に潤沢な食料や魔石などのエネルギー源が常に格納されているからだ。
そういえば、ギルドには送金機能があると言っていたな。僕は、ギルドに依頼をしてヴィジニアの町の修道院へ今回の報酬の半分を送った。
もう、あそこに僕の場所はないが、今の僕があるのは間違いなくあそこのおかげだ。
あそこがなければ、ここまで成長できたかわからないし、シド兄に会うこともなかった。
シド兄・・・元気かな。
学園の皆もどうしているだろうか。 さほど時間は経っていないはずだが、随分昔のような気がした。
「なるほど・・・。そこならありそうですね。」
「まぁ、あるとは思いますが、ギルドにも在庫はありますよ?」
「ええ、でも何もせずにいるというのも、あまり性に合わないみたいで。」
「まぁ、アーディルさんなら素材の採取ぐらいなら大丈夫とは思いますが、魔物もでますので気をつけてください。できればパーティでいかれた方がいいんですが・・・。」
僕が向かおうとしているのは、ここから1時間ほどの森だった。
理由は、魔法薬の材料調達と自分の現在の実力を確認するためだった。
増長するつもりはないが、この数か月程度で僕は急速に強くなった。
先日の殲滅戦でも能力が大きく伸びたのを感じた。スキルもそうだが、おそらく魔力などのスターテスも格段に成長したに違いない。
アウロスやマロウなどの頼れる仲間(?)も増えたし、シャナも大きな力になってくれている。
もっとも、シャナは気まぐれなので突然現れたり消えたりだし、直接何かしてくれるというよりは、力を授けてくれるという感じだが。
『何か呼んだか?』
こんな感じだ。考えていることを読み取ることまでは出来ないようだが、『繋がっている』のは間違いない。ピンチの時には助けてくれる頼もしい存在には違いないのだが。
『そういえば、この間読んだ本は面白かったぞ。早く続巻を買ってくるのじゃ』
シャナは、長く封印されていたこともあって、人間の娯楽・・・特に本が好きなようだ。
僕は、知識を吸収できる魔法書や兵法書のような物を好むが、シャナが好きなのは明らかに”盛った”英雄伝のような物語のようだ。
『お主も、この話の主人公のように竜に乗るとかできればかっこよいのにのう』
最近のお気に入りは、竜騎士の物語。
王国にも竜騎士と呼ばれる存在はいるのだが、それは武装した竜馬という大きな2足歩行の大型の鳥のような魔物に乗る騎士の事をいう。しかし、この物語の主人公は、飛竜という空飛ぶ小竜に乗り、世界を股にかけて活躍する物語なのだ。
「そんなこといっても、僕は馬にもちゃんと乗れないのに」
『そういえば、そうじゃったの。そうじゃ、マロウに乗ってみるのはどうじゃ?竜馬よりもよっぽど早いし、強いぞ』
「マロウに?それは無理じゃない?」
マロウの俊敏さや速さは、たしかに竜馬の比ではない。だけれど、それゆえに乗れそうにもない。
『そんなことはないと思うぞ。お主らは『血脈契約』つまりは、魂で繋がっておる。
多少は練習が必要だが、お互いの動きを合わせて騎乗することはそんなに難しいことではないはずじゃ。
というか、そんなこともまだできんのかというレベルじゃ。』
「そうなの?」
『血脈契約というのは、それだけ凄いものなんじゃよ。以心伝心・一心同体というやつじゃからな。まぁ、マロウもまだ未熟ゆえ、共に強くなってゆけばよいがの』
マロウは、これでも未熟なのか・・・。
『まぁ、いい機会じゃ。森までマロウに乗って行ってみるがよいわ。』




