55.三又の矛
視線の書き分ける技量がないため、読みにくい点があるかと思いますがご容赦ください。
アルがいない場合は、基本呼び捨てにしております。
三又の矛は、歴戦の海軍・・・ではなかった。
もともと、アルキラ帝国にも海軍はあったが、その力は弱く船も脆弱だった。
それが、この数年の間に急に新造艦をつくる技術を手に入れ、大きく拡大していったため、兵の多くは新兵か陸上部隊からの転籍組、そして漁師などの一般人からの転向者が多い。
艦長ラドフェルは流石に海軍出身であるが、近年急に出世をしただけで、華々しい経歴とは無縁の男であった。
しかも、今回の任務は王国に向かうとはいえ、戦場となる場所とは離れた場所への輸送任務。
もちろん、任務に手を抜いているわけでもわけではないし、この作戦自体の重要性も十分理解していた。
しかし、想定外の事態に、対応が遅れてしまった。
「な・・なんだ?何が起こっている?」
銀の旅団扮する帰還兵を自ら船室に案内する途中に、激しい揺れとともに響く爆音を聞いたラドフィルは、その直後に数本の剣を突き付けられる。
傍にいた海兵は不意を突いて一瞬で倒されてしまっている。首を一突き。揺れる戦場で、声をあげることもできなかった。
「おっと、動くなよ。こちらの腕前は見ての通りだ。
あんたには、まだ使い途がありそうだが、無理に生かしておかなきゃいけないほどでもないんでな。
抵抗するようなら・・・」
「貴様ら、正気か?陸上には100人を超える兵がおり、この船にだって50人は兵がいるのだぞ。」
「それは、情報提供感謝する。で、どうする?」
ローが、既に事切れた兵に剣を突き立てる。
今の彼の眼光は、鋭く冷たい。
「く・・・」
ラドフェルはそういうと、両手をあげて武器を捨てた。
「ロー。二手に分かれるぞ。」
アレックは、ラドフェルと捕虜数名を先頭に立たせて操舵室へと向かう。
操舵装置はもちろん羅針盤などの航海に必要な物設けられており船の中枢部としての役目を持つ場所だ。
一方、ローの隊は迎撃に向かう。
艦長を抑え、操舵室などの主要箇所を抑えても、兵の数では海兵の方が多い。
もっとも、コックなどの戦闘向きではない者もその中には含まれるのだが。
「抵抗をやめよ。この船は既に占拠されている。」
アレックたちは、降伏勧告をしながら操舵室へ向かう。
ラドフェルや捕虜達を盾にしながら進むが、降伏するものは僅か。
艦長にもかかわらず、ラドフェルは人質としての役割を果たしているとは言えなかった。
どうやら、陸上部隊からの転籍組らしい。彼らは、剣の腕などに劣る海兵を自分達の下に見る傾向があったらしく、艦長といえど人質に取られるような者なぞに価値はないと考えていたようだ。
もっとも、散発的で連携の獲れていない兵なぞ、銀の旅団の相手ではなかった。
自身は認めたくないだろうが、優秀な者なら海兵に回されて来ることはない。
所詮は、その程度・・・もしくは性格などに問題がある者なのだ。
それでも、多少は実力がある者もおり、奇襲攻撃を受けて数人が重症を受けるも、全てが捕虜で旅団のメンバーには誰一人まともなダメージを受けた者はいなかった。
ローの率いる隊も、次々に現れる海兵を次々に倒していく。
ガーファンクルの氷の槍が敵兵の胸を貫き、ローの剣が相手の頸動脈を切りつける。
船内は兵の暮らすスペースもいくつかに分割されており、食料などの保管庫など王国所有の船とは比べ物にならない規模であった。快適とは程遠いとはいえ、個室も数室あった。
本来、その部屋を使うべき仕官は、既に下船しているはずだが、そのまま放置するわけにはいかない。
実際に、どさくさに紛れてその部屋に隠れていた者達もいた。
そのため、意外と時間がかかってしまったが、それでも一人も大きな負傷をすることなく敵を無力化することができた。
海兵は戦況を見定めることが出来なかったこともあり、降伏をした者はわずか数名。
甲板でアーディル達に撃たれた者達を差し引いてもかなりの数を殲滅することになった。
「よし、これで全部だな。操舵室に向かうぞ。」
こうして、潜入部隊の作戦は大成功を収めたのだった。




