53.一騎当千
アレックさん達が船に乗り込むと、代わりとばかりに軍用馬車や兵たちが下船してくる。
その数は、馬車だけで十数台。兵の数はほぼ100名はいるだろう。
アレックさん達と会わないようにしたのは、おそらくはラドフェル艦長がこれから向かう兵たちに気を使ったのだろう。帰還兵が少ないというのをこれから向かう兵が知るのは、あまりよろしくないからだろう。
どうやら、運はこちらに味方しているようだ。
大量の軍用馬車と兵が陸に上がってくる。それは、錚々たる光景・・・ではなかった。
「おい、汚いな。」
「俺だって好きで吐いてるわけじゃない。」
「しっかりせんか!」
「隊長、流石に無理です。」
降りてきた兵達の半数近くは、船酔いなどでまともに動くことが出来ない状況で、海に向かって吐くものや、すでに吐く物もなくそのまま座り込んでしまっていた。
「どのタイミングで仕掛けます?」
「そうだな。あまり遅くなると、旅団のメンバーの襲撃に気づかれる可能性があるからな。
まずは、アーディル君のタイミングで、渡し板を落としてくれるか。
俺達はそれに合わせて、遠距離攻撃をしかける。
その後は、なるべく船から相手を遠ざけるように。あと、間違っても突っ込むなよ。」
「マロウはどうしましょう?」
「細かいところは任せるが、渡し板を落とした後の黒船周辺を任せていいか?」
「わかりました。」
そういうと、僕は緋氷槍を杖代わりにかまえると、槍先を船と岸壁の間、渡し板に向ける。
使う魔法は、爆発。
これなら、万一破壊が出来なくても、爆風で兵達が近づくことは出来ないだろう。
「いきます。」
僕は、呪文を詠唱して、魔力をしっかり込めた特大の爆発を放つ。
そして、数秒後には渡し板があった場所とそれがかけられていた岸壁が吹き飛んだ。
黒船も大きく揺れ、何人かの兵達と軍用馬車が突然の爆風で何人かが吹き飛ぶ。
「な・・なんだ。何が起こった?」
慌てるアルキラ帝国軍が状況を把握する前に、真空の刃や矢が降り注ぐ。
「て・・敵襲?!急いで隊列を整えろ!!」
そう叫ぶリーダー格の男に向かって僕はさらに爆発を放つ。
初撃と比べるとかなり威力は低いが、殺傷力は十分のようで、男は吹き飛んでそのまま崖から転落していった。
「マロウ!!」
僕が叫ぶと、紅黒い毛並み影・・・マロウが岸壁に向かって、疾走していき、兵をなぎ倒していった。
「に・・・逃げろ!!」
だらが言ったかはわからないが、最初は一人が小さい声でそう言ったはずだ。
普通に考えれば、こちらの戦力は10人にも満たず、相手は100名を超えるのだから、いくら相手が船酔いなどの状況や奇襲を受けたとはいえ、ここまで一方的になることはないはずなのだが、実際にはそうはならなかった。
目の前で人が吹き飛ばされ血が舞う。手足が吹き飛ばされ、怨嗟の声が響きだす。
そして、それでもそれを奮い立たせる叱咤激励も響かなくなった時にその小さな声が、人々の心に一筋の光かのように思えたのかもしれない。
数十名の兵が、我先にと岸壁を下り海岸線に向かっていく。
注意深く考えれば、攻撃が手前に集中し、海岸線に降りる道にほとんどないことに気づいたかもしれないが、彼らがそれに気づくことはなかった。
「よし、追うぞ。ただし、絶対に深追いするな。」
ロッソさんが指示を出し、自ら飛び出していくと身近の兵を一撃のもとに切り伏せる。
「少し、時間をください。大きいのを撃ちます。」
僕は、魔力を練り、呪文を唱えていく。
「現れたるは地獄の炎、活かされたるは浄化の火炎、仕えし物は龍の息吹!!」
そして、坂道を下る敵兵に向けて、緋氷槍を両手で向けた。
『竜撃砲』
緋氷槍真っ黒い炎が噴きでて巨大な槍の形をとり、雷にも似た爆音とともに現れた炎の塊が敵を貫通して焼き払う。
後には、かろうじて人の形をしていたのかがわかる焼けた黒い塊や、綺麗に半身だけが炭化した兵が何体も転がっていた。
以前ほどの魔力消費はないものの、流石にあまり連発できないし、近距離では隙が多すぎるなどの欠点があるが、火力は僕の持つ魔法の中でも群を抜いている。
「な・・・なんだ?」
生き残った兵は、さらに我先にと駆け出すが、その先に待ち構えていたのは、第二騎士団とエリック達、そして一角獣の角と不死の騎士団だった。
恥作にもかかわらず、読んでくださる人がいて感謝です。ただ、
更新が少しキツくなってきています。
更新できない日がでたら、ごめんなさい。




