51.決戦前夜
「お待たせしました。」
ディーン副団長達本隊が合流することが出来たのは、僕達が岸壁の部隊を攻略してから数時間後、日の落ちる寸前だった。
暗くなりかけていたが、騎士団や不死の鷹団の皆の衣服は、泥と返り血がついている。よく見れば、二人ほどは、包帯を巻いているし、馬車も軍用馬車が2台ほど増えていた。
「その様子だと・・・」
「ええ、こちらも一部隊遭遇しました。
幸い死者はいませんが、何人かは負傷しています。」
「相手は、どうなった?」
「捕虜を数名確保していますが、あとは殲滅しました。」
旅団のメンバーがアレックさんに報告を行うと、アレックさんは頷いた。
「ご苦労様。情報通りなら、これで後方の憂いはないな。」
「はい。こちらの捕虜からもこちらに来ている部隊数は4と聞いています。」
「負傷者の手当ては?」
「最低限の手当てはしているが、このままでは戦闘は厳しいな。アーディル君、手持ちの魔法薬を分けてもらう事はできるかい?」
「あまり沢山はないですよ。」
僕は、手持ちの魔法薬を数本渡す。
この品質ならば、部位欠損などの重傷でなければ、裂傷はもちろん、骨折なども1時間もあれば治癒するはずだ。
「助かるよ。」
ディーン副団長はそれを受け取ると、負傷した騎士団や不死の鷹団に渡していく。
「各パーティーのリーダーはちょっと集まってくれるか。あと、アーディル君、君もだ。」
アレックさんがそういって、ディーン副団長と"女神の片腕”のリーダーのロッソさん、”一角獣の角”と”不死の鷹団”のリーダー、そしてエリックを集めた。
「情報によると、敵船が現れるのは明日の昼過ぎと思われる。
今回の作戦は、敵の無力化が第一優先だが、可能であれば、鹵獲を目指す。
王国の海軍所有のどの船をも上回る性能という報告のある船を確保し、研究機関に回すことができれば、今後も含め帝国に対抗するためにかなり有用だからな。」
「もちろん、無理だとなれば沈めることになるが。」
「そのため、まずは相手の船を岸壁に停泊させることが必要になる。
そのうえで、船内の制圧と交代要員の殲滅を両方実現する必要があるというわけだ。」
「それは・・・、無理難題だな。」
ベテランで実力者のロッソさんですら、その『無理難題』というぐらいの難易度であることは僕達でもわかった。
「そうだな。だが、このメンバーであれば十分可能だと考えているよ。」
「まず、チームを二つに分けさせてもらう。船に突入して制圧するチームと交代要員を殲滅するチームだな。船内突入は俺達旅団が行う。残りのメンバーで上陸した部隊の殲滅を行ってもらいたい。」
「簡単に言うが、どうやって乗船するつもりだ?」
「捕まえた捕虜と一緒に、堂々と乗船するさ。どうやら、私掠部隊と海上部隊は初見だったらしいからな。帝国の装備に着替えれば、なんとか紛れ込めるかもしれん。」
「いくら何でも、リスクが高すぎないか?それに、捕虜なんて信用できんだろう?」
「もちろん、確率が低いことはわかっているさ。が、半数が乗り込めれば何とかなると思っている。」
「乗り込めなければ?」
「犠牲が大きくなるかもしれんが強引にでも突撃する。鹵獲もあきらめるさ。
それよりも、君たちの方も厳しいぞ。」
「それは、わかっている。だが、そちらが何とかするという以上は、何とかして見せよう。」
「頼んだよ。敵が船に戻ってしまわないようにしてほしい。流石に挟撃されると厳しいからな。」
「そうすると・・・・」
難易度の高い作戦だけあって、会議は結構遅い時間まで続く。
どうやら、僕の責任は大きいようだった。




