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50.岸壁の戦い

ローさんが2名の捕虜から、見事と言う他ないほどの誘導尋問と拷問で、具体的な軍用艦の到着場所や予定時刻、そして部隊の作戦について吐かせた。

笑顔のまま相手の指を切り落としたりする恐ろしいほどの冷徹さと言葉巧みでかつ的確な尋問は、プロ以外の何物でもない。


「悪いが、君たちを助けるかどうかは、僕の気持ち一つだ。なんだったら、生きたまま下半身をこの狼の餌にしたっていい。」

マロウを親指で指しながら、眼を細めて静かに語りかけるローさんは、僕の知っているローさんとは別人のようだった。


<尋問スキルを獲得しました。>


僕は何もしていなかったが、鳴り響く脳内のアナウンスがその経験がいかに印象的だったかを物語っている。一度そばで見聞きしただけでスキルを覚えてしまうほどに、恐ろしかった。


・・・

「やはり、俺達が既に倒した部隊以外にも、あと2つは隊があるようだな。」

「ガーファンクル。本隊に通信を取れるか?到着場所と予定時刻を伝えるんだ。」

ガーファンクルさんというのは、小柄の中年の隊員なのだが、風魔術が得意らしい。

旅団の秘伝らしいが、風魔法の応用で離れた別の隊員と通信ができるらしい。

「他の騎士団では使えないのですか?」

「親衛隊と魔法師団には情報提供しているから理論的には使えなくはない。ないが術者がどのくらいのレベルで使えるかというと疑問だな。ガーファンクルは、これでもかなりの使い手なんだ。」

「これでもは、余計ですな。まぁ、アーディル君の術を見た後だと霞んで見えるかもしれないがね。」

そういうと、複雑な術式を組み上げていく。途中まではわかったのだが、全部を理解することは出来なかった。なんとなく理屈はわかった気がしたが、肝心の相手先の固定方法などがわからない。

「かなり難しい魔法ですね。指向性の風に暗号を載せて飛ばす感じですか?」

「ほぅ・・・。一目見ただけで、そこまでわかるのか。」

「でも、見える範囲ならともかく、どこにいるかもわからない相手をどうやって指定しているのかがわかりませんでした。」

「それがわかったら、もう使えるじゃないか。」

「それに、伝えているのが暗号化されていることまで理解できるとはね。」

デリードさんというこちらは長身で細身が褒めてくれたが、流石に術式を教えてくれることはなかった。


「では、目的地が定まったところで行くぞ」

通信の間に、エリック達が相手の確認を兼ねて死体から金目の物や武器を適当に見繕てもってきたのでそれを封魔紋にしまうと先を急ぐことになった。


・・・・

「何が、どうなってんだ。」

「敵襲だと?」


海岸線から断崖へと昇る坂道。舗装された道ではないが、軍用馬車であれば十分1台が通ることができる程度の地面と道幅があった。あきらかに人の手が加わった形跡がある。

そこで野営をしていた帝国兵を僕たちは急襲する。

数的には30人程度の部隊。先ほど殲滅した隊よりも先に帰還していたのだろう。

ただ、さして広くない場所に密集しているのがあだとなり、魔法攻撃のいい的になっていた。

「アーディル。足元の強さがわからんから、爆発魔法は控えてくれ」

そういわれて、僕はガーファンクルさんと共に、風魔法で無数のカマイタチを発生させて敵を狙う。

「よし、今だ。いくぞ。」

そして、アレックさんの掛け声と同時に、魔法をやめて緋氷槍(クリムゾン・アイス)を片手に突撃を開始した。その一歩先を疾走して敵を混乱に陥れている黒い影・・・マロウだ。


「一方的ね。」

後方で、エリック達に守られたエリーさんがつぶやいた。

袋小路に近い場所で、いきなりの魔法攻撃による奇襲を一方的に受け混乱した敵は抵抗らしい抵抗もできず、一方的に倒されていった。

カマイタチに切られて出血多量で意識を失う者、マロウに噛み殺される者、旅団の皆に切り殺される者、崖から突き落とされる者・・・・。どの者が一番ましだったかはわからないが。


「流石・・・ですね。」

銀の旅団の人たちは、想像以上に強かった。

戦闘になる前と同じ人とは思えないぐらいに。

身のこなしそのものもそうだが、恐らくはその判断のスピードが異様に早いのだ。

いくら奇襲とはいえ、数の上ではこちらのほうが不利なのだが、まったく危なげがなかった。

一緒に突撃した僕が、一人の相手をすることもなく済んだのだから。


「一応、伊達に歳はくってないさ。」

ローさんが、そういって僕の肩に軽く手を置いた。

そういう次元ではなかった気がするのだが。



「あとは、明日に備えて地形の把握と作戦の立案だな。

とりあえずは海岸線まで降りるぞ。ここに留まってちゃあ、こいつらの二の轍を踏むことになるからな。」




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