47.復活のマロウ
街を出て初日のキャンプ予定地までは、特に何事もなかった。
馬車に分乗し街道沿いをすすみ、途中から道を少し離れた場所に陣取り野営の準備をする。
帝国の私掠隊と野営中にばったり・・・という事がないようにということのようだ。
”アウロス 頼むよ”
いつものようにアウロスを召喚する。アウロスは、一声鳴くと空に飛び立った。
食事は、あらかじめ騎士団から依頼を受けて僕が保持していたものを配布する。
決して贅沢なものではないが、普通の野営とは違いパンは柔らかく、肉も堅い保存用の干し肉ではなく既に焼いて時間がたっているとはいえ、普通に串に刺さった肉となって好評だった。
輸送量に余裕があるからな。とはディーン副団長の言葉だ。
今回、補給物資や予備の武器などをディーン副団長の依頼で僕が持っている。
ディーン副団長をはじめ騎士団の数名は顔見知りなうえ、僕の封魔紋やマロウについても知っているので、妥当な判断ともいえる。最も、僕が死んだら大変なんだけれど。
個別に依頼料を貰っているので僕にとっても問題はない。
「あの狼の従魔はどうしたんだい?」
「今はまだ召喚していないです。どうしたんです?」
「いや、野営をするにあたって、彼がいてくれると心強いなと思ってね。消耗が激しいか・・・」
「そんなことはないですよ。どうせ、これから寝ますし。」
ディーン副団長と食事をしながら話をしているとアレックさんも寄ってきて話に入りだす。
「例の巨狼についてかい?それは僕も興味があるな。
なんでも、ほとんど1匹で私掠部隊を壊滅させたらしいじゃないか。
正直、今回ギルドに依頼しても戦力は微妙なラインだと思っていたんだが、君が来てくれることになって、助かったよ。まぁ、一番喜んでいるのはローかもしれないが。」
そういっていると、ローさんも寄ってきた。
「すまんね。今回は場所の下見もできていないから、作戦らしい作戦も立てにくくてね。
もし可能だったら、その狼を見せてくれないか。」
”シャナ?普通に召喚していいのかな?”
”かまわんぞ? むしろ、一度アルも見ておいた方がいいかもしれんな。
少し、外見が変わっておるゆえに”
シャナに確認してから、僕は皆に頷き、召喚を行う。
術を実施すると、確かに前回までと異なり地面に赤い魔法陣が浮かび、中から紅黒い巨狼が現れた。
「マロウ?!」
その声に反応するように、狼は尻尾を振りながら僕に跳びかかって、顔をなめた。
その勢いに、僕は押し倒され、旅団の二人は構えるが、ディーン副団長が制した。
「少し前と雰囲気が違うように感じるが、別の個体かな?」
「いや、前と同じですね。ただ、ちょっと色々あって成長したみたいです。」
マロウの見た目は、前回よりも変わっていた。身体は一回り大きくなり毛並みは紅の混じった黒色に代わっていた。爪や牙が明らかに大きくなり、前足にあった狼爪は、長く伸びて鎧のように足を守っていた。
だが、マロウであることは反応を見ても明らかだが、それとは別に間違いがないことを知覚する。
多分、これが魂の繋がりというやつだろう。
”我と取り込んだ炎の精霊の影響を受けておるからな。暗視能力が向上し、弱いが闇の法衣を常に纏っておる。毒や炎に対する耐性も得ておるし、望めば火球相当じゃが炎を吐くこともできるはずじゃ。”
シャナが自慢げに説明する。どうやら、自分の子分のような存在と思っているようだ。
”あと、召喚の魔力消費なども格段に低くなっとるじゃろ。
望めば、騎乗もできると思うぞ。まぁ、アルの訓練の方が必要じゃが。
そのかわりと言っては何だし、アルの事じゃから元からそんな使い方はせんだろうが、『道具』や『盾』としては使えん。致命傷を負えば、アルの魂にも傷がつくからの。
まぁ、心配せずともマロウは、かなり頑丈じゃから、そうそうそんなことにはならんと思うがの”
マロウを見たアレックさんやローさんは、緊張した面持ちで僕に話しかける。
「大丈夫なんか・・・。聞いてはいた・・・聞いてはいたが、想像以上なのだな。」
二人とも、一瞬でマロウの実力を悟ったようだ。
実は、それだけでも二人が一流であることがわかる。
マロウを見た目だけで、ちょっと大きい狼の魔物程度と考えると、痛い目に合う。
「これは・・・、作戦を大幅に見直してもいいかもしれんな。」
ローさんがつぶやいた。




