46.作戦
ローさんが、作戦を話し出すと再び場がざわつく。
「ちょっとまってくれ。確かにここに集まったのは、一定の実力のある者達だし、人数的にも私掠部隊一部隊なら、互角以上の戦闘が可能だろう。しかし、その話だと帰還する部隊と新たな部隊、それに輸送に使われる船を同時に相手にするということか?」
不死の鷹団のリーダー格の男が皆の反応を代表するかのように口にした。
ローさんは、その反応を見越していたように意地の悪い笑顔をすると答えた。
「まぁ、落ち着け。一応、急ごしらえだが勝算がなければ作戦は立てん。
とはいえ、連戦になる可能性が高いし、我々だけではきつそうなので、皆に依頼をしたんだから、難易度も低くはない。」
そうして、一同を見回す。
「まず、相手の帰還する私掠部隊だが、おそらく2〜3小隊。あちらの小隊は1小隊20名ちょっとという規模らしい。そして船で向かってくるのは、最大4小隊と思われる。そして、船が来るのは3日後の予定になる。そのため、その日を目掛けて敵は帰還してくるが、おそらく前日までには順次戻ってくる可能性が高い。そこで、相手の私掠部隊については、各個撃破を基本とする。
ただし、今回の作戦は私掠部隊の壊滅ではなく輸送船の拿捕なので、深追いはしない。
要は、輸送船奪取の際に挟撃されなければそれでよしということになる。」
「疲れた帰還部隊20名ぐらいなら、確かにこのメンバーなら制圧可能だろうが、運よく個別で遭遇できるのか?」
不死の鷹団のリーダー格の男がそう疑問を投げかけていると、馬車が7台ほどやって来た。
ちなみに、彼は心配性なわけでも臆病なわけでもない。
そんなパーティーをこの作戦に推薦することは、マービックさんはしないだろう。
ただ、少しでもリスクを減らすために、詳細を確認している。そんな感じだ。
そして、ローさんも、わざと言っているのではというぐらいに、説明に勿体をつけていた。
まるで、実力を値踏みするかのように。
「遅れてすまない。」
そう御者台から声をかけて来たのは、ディーン副団長。そしてその隣には、良く知った人がいた。
子供の様な容姿の女性。エリーさんだ。
「エリー女史のことは知っているな? 彼女は生命反応を探知できるスキルを持っている。
我々の中にも似たようなスキルを持っている者がいてな。このスキルで探知を行う。」
「敵の私掠部隊に、同じようなスキルを持つものがいる可能性は?」
この質問には、ディーン副団長が答える。
「ないわけではないが、確率はかなり低い。なぜならこれまでの輸送部隊の襲撃はすべて街道沿いのみだ。最近、小規模で運用しなければいけない輸送部隊は、街道を離れて動いているがこちらは一切襲われていない。敵の探知は、目視中心だとみて間違いないと思う。」
「それでもキツイかと思っていたんだが、エリック君達と補給部隊は依然40名規模の隊を正面から完全撃退した実力があるらしいじゃないか。期待しているよ。」
ローさんが僕の方を見て、ニヤッと笑った。言葉に嘘はないが、どうやら別の効果を狙ったセリフのようだ。僕たちとロッソさんのパーティー以外のメンバーが再びざわつく。
仲間が実力があるという安心感と同時に、あいつらができるなら、自分達でもできると思わせることに成功したようだ。
しかし、あの時の殊勲賞は間違いなくマロウだ。
僕はかなり強くなった自覚はあるが、マロウなしでというとやはり不安もある。
”心配せずとも、もうマロウは癒えておるぞ。”
突然、シャナの声が頭に響く。まわりを見回すが姿はない。
”ここじゃここ。”
みると、肩の近くに、握りこぶし本当に小さなシャナが浮かんでいた。
”どうじゃ?本で読んだ精霊のイメージに合わせてみた。この方が、効率が良いし、我も気持ちが良い。”
そういうシャナは、精霊というか妖精のような感じに見える。
多分、シャナが読んだ本も少年に妖精が色々と手助けして、悪い奴を倒すという内容だった気がする。
ただ、衣装なんかは前のままなので、若干イメージと違うが、まぁ似合っているかどうかで言えば似合っている。
”シャナがその方がいいなら、良いと思うよ。どうせ、他の人には見えないんだし。
それより、マロウの事だけど・・”
”むぅ。つれないのう。そうそう。我は時々マロウの様子を診にいっておったのじゃぞ。”
シャナは褒めて。褒めて。と顔に書いてあるかのような表情をする。
とても、闇と恐怖の精霊だとは思えないが、僕も大分シャナの性格に慣れてきた。
”それは、助かるよ。で、どうだったの?”
召喚術で召喚される魔物が何処からきて、何処に帰っているのか、僕は実はよくわかっていない。
どうやってシャナがマロウを診てくれたのかもわからないが、それはさほど重要ではない気がした。
”うむ。自然に毒が抜けるのを待つのもなんだったのでな。
お主との召喚契約を通常の契約から血脈契約にしておいた。おかげで、直ぐに毒も抜けたしパワーアップしたぞ”
”血脈契約?”
”うむ。血脈契約とは、召喚者と召喚される者の結びつきを強くする契約方式じゃ。
被召喚者は召喚者の魂でのつながりを持たせることで、スキルやステータスの影響を受けるようになる。
まぁ、ステータスが貧弱だと弱くなる場合もあるが、アルの場合は問題なかろう。
今回の場合は、アルの毒耐性などの効果がすぐに出たわけじゃな。
ただ、問題もあって、血脈契約をすると被召喚者が死んだりすると召喚者の魂にダメージがいく。
魂がつながっとるわけじゃからな。最悪、廃人になる場合もあるから、注意が必要じゃ。”
さらっと、シャナが恐ろしいことを言う。
というか、そんな大事なことを、本人の意思なしでできてしまうのだろうか。
”まぁ、そう怖がるな。マロウはフェンリルの血族ぞ。そう簡単にくたばったりせぬ。
それに、パワーアップした姿を見れば、納得もすると思うぞ。”
「アーディル君?どうかしたのかね?」
アレックさんが、僕の様子がおかしいのに気がついて、声をかけてくる。
気が付くと、視線が僕の方に集まっている。
「あ、いや。少し考え事をしていました。すみません。」
シャナとの話は興味深かったが、周りに人がいるときは、気をつけないといけないな・・・・。




