45.出陣
新しい武器、緋氷愴を封魔紋にしまって、僕は宿に戻った。
食堂では、二日酔いから回復したデュルゲルさんが、エリック達と談笑をしながらエール酒をあおっていた。
「あ、デュルゲルさん。貰ってきましたよ。」
「お、そうか。どうじゃ?」
「なかなかですよ。」
そういうと、封魔紋から緋氷愴を取り出す。
すらっと伸びた柄から綺麗に伸びた紅い波紋のある槍頭は。芸術品のような美しさと上品さがあった。
「金属槍・・・白銀製か。なかなかの一品じゃないか。ドルファンのやつ、お前さんの事を気に入ったみたいじゃな。」
「すげー。白銀製かぁ。」
「まぁ、アーディルなら使いこなせそうだし、魔法との相性もいいからね。」
そんな感想を皆が漏らすが、僕自身もそう思う。
「しかも、軽く扱ってみたんですが、ものすごく軽くて使い勝手がいいんです。」
「そら、お前さんに合わせて調整してあるだろうからな。あいつも伊達に長生きしとりゃせんさ。
あいつは、俺の知る中でも武器を扱わせたら5本の指に入る名工よ。偏屈な性格でなけりゃぁ、あんなちっぽけな店の器じゃないんだ。まぁ、本人は余計なお世話というだろうがな。」
「それより、デュルゲルさん。昨日あんなに飲んだのに大丈夫なんですか?明日は早いんですよ?」
「なぁに。これぐらいなんということはないわい。」
そういいながら、またジョッキを傾けた。
「ほどほどにしろよ、おっさん。そんじゃぁ、俺達は早めに寝させてもらうか。」
エリックがそう言うと、僕達は部屋にもどって明日のために早めに就寝することにした。
・・・・
翌朝、ギルド前の広場に僕たちは集まっていた。
ここは、朝は結構待ち合わせなどで冒険者達でごった返すことが多い。
そこに数組の冒険者のパーティーが集まっている。
ロッソさん達が率いる"女神の片腕”、この街を拠点に活動する”一角獣の角”と”不死の鷹団”、そしてエリックや僕そしてデュルゲルさんを含む”酔いどれドワーフと仲間たち(仮)”だった。
ちなみに、パーティーの名前というのは別に必須ではないのだが、作戦上お互いを呼ぶときなども含めて合った方がいいという理由でつけられた。ちなみに命名者はティースさんである。
まぁ、急造のパーティーで、ずっとこの名前とつき合うわけではないのでいいか・・・。
ロッソさんと軽く談笑をしていると、銀の旅団の方々が現れる。
長剣や槍の他、ハルバードや斧、変わったところでは鞭など腰に持つなど装備など、騎士にしては珍しくバラバラだが、レリーフの入った銀の胸当だけは共通しているのでわかりやすい。
「ちょっと場違い感が半端ないな。」
エリックがそう言うのも、無理がないかもしれない。
ロッソさん達は、既に実力を知っているが、皆がBランクの百戦錬磨のパーティーだ。
一角獣の角は、珍しい盾職の大男以外は女性ばかりのパーティなのだが、半数がBランクであり盾職の男はその中でも上位の能力を持っているらしいことが話から伺える。
不死の鷹団は、最近に頭角をあらわしてきた比較的若い男性ばかりの集団でランク的にはCランクだが、Bランクに匹敵する腕前だという噂だとロッソさんが教えてくれた。
もちろん、銀の旅団については、実力的にはBランク相当と言われているが、今回のように対人戦主体であれば、それ以上の実力があると思っていいとのことだった。
実際、かれらのうち半数近くは、任務の便宜上の立場もあり、冒険者として登録しており、Bランクの者も数名いた。
「まぁ、そんなに焦らんでも良い。
お主らはまだ若いし、伸びしろがまだあるという事じゃ。
大事なのは、自分の実力を正しく把握すること。背伸びをしすぎても、卑屈になっても行かん。」
デュルゲルさんが、エリックの背中をどんと押しながら、笑った。
軽く自己紹介をしあうが、もちろんそんな短時間で顔と名前まで覚えることが出来るのは稀有な特技のある人だけだ。大事なのは、顔を覚える・・・敵か仲間かを識別することであった。
大体は、お前だのパーティー名だので呼ぶのが普通だ。例えばロッソさんのパーティなら大体が、”女神の・・・”というような感じで。そうすると僕らは多分・・・”酔いどれの・・”と呼ばれそうだが。
僕の自己紹介は立場的に最後になったが、その際に旅団や”一角獣の角”と”不死の鷹団”のメンバーが少しざわついた。「あれが、噂の・・・」とか「お手並み拝見だな」のような声が聞こえる。
随分上から目線のように聞こえるかもしれないが、年齢やキャリアから考えれば、妥当な線だろうな。
「では、作戦を簡単に説明する。ロー。頼む。」
アレックさんがそういうと、銀の旅団から細身で長身の男性が出てきて話をしだした。
どうやら、ローさんはこの旅団の中では作戦参謀の役目をしているらしい。
「作戦箇所は、概ねここから1日。海岸沿いの岸壁だという情報だ。
大型軍船が1隻部隊の補給・交代要員を載せて来る。
今回の目的は、その部隊の殲滅および船の拿捕だ。
途中、期間中の帝国私掠隊と遭遇戦になる確率が高い。諸君らの武勇に期待する。」
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