44.緋氷愴
ドルファンさんの店で僕は練習用の武器を使ってのデュルゲルさんと僕の模擬戦を行った。
「ほほぉ。なかなかやりおる。が、やはり武器の扱いはまだまだじゃな。」
何撃か打ち合うことはできるが、流石にB級冒険者だけあって、純粋な武器での打ち合いでは全く歯が立たなかった。膂力では負けてはいないし、スピードも僕の方が速い。しかし、木斧を巧みに使って槍の突きを躱し、打点をずらされてしまう。
「うむ。なかなかいい筋をしておるな。」
ドルファンさんは満足そうにどんどんメモを取っていく。
槍の重さやバランス、長さや先端の形など、どのような形が望ましいかを見ているのだという。
「まったく勝てませんが・・・。」
「当たり前じゃ。魔法を使われると、流石に分が悪いがまだまだ若いもんには負けるわけにはいかん。
というか、ちょっとホッとしたわい。」
小一時間打ち合った後、ドルファンさんが胸を張った。
(そうはいっても、どんどん攻撃が鋭くなるのぉ。将来が恐ろしいわい。)
「では、儂はこれから武器を作る。とっておきの奴を作ってやるから待っておれ。」
「いつぐらいになるかの?」
「明後日出発なんじゃろう?ちゃんと明日の晩までには仕上げてやるわい。」
「そんな時間で大丈夫なのか?」
「まぁな。一から作るとなると無理だが、丁度よさそうな武器があってな。それをリメイクするんじゃよ。なので、1日あれば大丈夫じゃ。」
そういうわけで、明日の夕方にもう一度工房を訪ねることとなった。
その日の晩は、大宴会となった。
昨日は、皆疲労でそれどころではなかかったが、今日は皆ゆっくりと休息と取ることが出来たことと、今日の魔石の配分があったことがそれに拍車をかけた。
50人近い人数が集まった酒場兼宿は完全に貸切状態で大騒ぎとなった。
「また明後日から一緒なんだね。よろしく」
ロッソさんのパーティーのメンバーが近寄ってきて、乾杯をする。
皆かなり酔っているが、僕は素面だった。一応はあまり強くはないとは言え酒を飲んでいるのだが。
おそらく、毒として認識されているような気がする。
「お前、魔法だけじゃなくて酒もいける口か?」
そういって、勝負を申し込まれて、何故か何人かの酒豪の冒険者・・・デュルゲルさんを含む・・・と飲み比べをすることにまでなってしまっていた。
飲み会は、徐々に人数は減りながらも深夜まで続き、デュルゲルさんが潰れる明け方まで僕は飲み比べをすることになった。
「お前・・・・何かイカサマ・・ヒック・・してるんじゃ・・・ヒック・・・・」
一向に酔わない僕に対して文句を言おうとしたが、「体質ですよ。逆にまったく酔えないんです。」
と答えると、急に可哀そうにといって、同情しだす。・・・相当酔っているな・・・。
そんなわけで、結局その日は昼過ぎまで仮眠を取ることになってしまった。
その後、夕方までの間にエリック達とどうするかを話し合う。
今回の作戦は、エリック達からすると少し背伸びをする必要にある危険度だからだ。
「3人で話したんだが、今回の作戦には参加しようと思うんだ。
危険は大きいけど報酬も大きいし、旅団の人たちとの作戦に参加するのは、経験にもなる。
ロッソさん達やデュルゲルの旦那もいるしね。」
「新しい装備にしたんで、物入りだしね。」
エリックとセドリックは、昨日装備を新調したのが、良い買い物であったとは思っているが、値段もそれなりだったらしい。魔石の分け前がほとんどなくなったと言っていた。
それでも、商売道具であり、命を守るものなので、後悔はもちろんしていないそうだが、先立つものはやはり必要なのだという。
「もう少し分け前を・・・・」そう言おうとしたが、それを流石にエリックは制す。
「気持ちはありがたいが、流石に俺達にもプライドはある。
それに、実際そこまで心配されるようなところでもないさ。むしろ感謝している。
依頼の費用はもう貰っているしな。」と丁寧に断られてしまった。
「いえ、こちらこそ差し出がましくてすみません。」
たしかに、ちょっと不躾だった・・・。そう反省をした。
夕刻、僕達はドルファンさんの店に向かった。
デュルゲルさんは、流石に昨日飲みすぎたらしく、ダウンということだったので一人だ。
「おう、坊主。出来てるぜ。」
そう言って、一本の短槍を持ってきてみせる。
魔物の革をなめした柄巻きがされているが、柄の部分から穂先までは流れるように美しい銀色の金属でできていて、長さはおおよそ1.5mぐらいだろうか。
槍頭の部分には、細身の剣刃状の30cm前後の真紅の大型の穂がつけられていた。
渡された槍を持つと、思ったよりも重量がないことに驚く。
「そいつは、白銀製の錫杖に剣を接合させて作ったもんだ。
最初に言っとくが、只くっつけただけじゃぁないぞ。」
そういいながら、槍の性能を話し出した。
元々は、魔法使い用の杖兼棍として使われていたと思われる錫杖らしいから、僕の戦い方にも十分耐えれるだろうとのこと。これが、偶々持っていたというダンジョン産の素材らしいのだが、どちらかといえば魔法使いがこの店を訪れること自体が稀なので眠っていたらしい。
ちなみに、白銀とは魔法金属の一種で軽さ、魔法との相性の良さ、加工のしやすさと三拍子そろった金属である。欠点は、その希少性ゆえの値段ということになるが、魔法金属の中では比較的安価な方で、ダンジョンでも時々白銀製の装備が見つかることがある。
ちなみに、ダンジョンで見つかる場合などは、付与魔法が施された白銀なども多いが、今回の錫杖は、特にそういた効果はないらしい。
一方で、槍先の方は魔法の付与された剣らしい。
その穂先は、その紅色から揺らめく炎のような刃紋があるが、実際に付与されているのは氷らしい。
強力な冷気を刀身に宿し、切りつけたり刺した箇所を瞬時に凍らせることが可能だったそうだ。
こちらは、前の持ち主の度重なる酷使で刀身が折れてしまったらしく、そのままでは使えないので今回打ち直したらしい。こちらも少し混ざりものがあるらしいが、白銀が主原料らしい。
「まぁ、名前を付けるなら、緋氷愴ってところか。
まぁ、槍先の付与の方は本来の力はだせんだろうから、あんまりあてにしないでくれ。
じゃが、今まで使こうておったのとは次元の違うレベルの武器に仕上がっとるはずじゃ。」




