40.再会
「・・・にわかには信じがたいな。」
そう言ったのは、年齢にしたら50代前半の白髪交じりにオールバックに男・・・ギルドマスターの"白狼"ことマービックだった。
「いや、疑っているわけではないんだがな。情報も一致するし、なによりこれだけの証拠を見せられちゃあな。」
ギルドマスターの部屋の応接の机の上には、直径1メートルはある巨大な魔石が置かれ、テーブルの横には高さだけで2メートルある人型の頭蓋骨が置かれていた。
魔石は、普通に売買されるどのようなものよりも濃い紅色をしておりながらも透き通っており、頭蓋骨の骨は、一見人間のようだが眼から鼻があるべき場所が、大きな空洞になっていた。
サイクロプスの物であるのだが、流石にマービックもそのようなものは見たことがなかった。
「まぁ、儂らとてあんな経験をするとは思わんかったわい。
だが、重要なのはそこではないぞ。」
「そうでしたね。あまりのことに我を忘れてしまいました。」
そう、僕達がここに呼ばれたのは、ザッカートの状況を確認する事・確認されることが目的だった。
本当は、ロッソさんやデュルゲルさん、エリックだけで十分と思っていたが、デュルゲルさんにほぼ強引に連れてこられた形になった。曰く、ぶっとんだ話をせにゃいかんから、一緒に来いというわけだ。
百聞は一見にしかず。封魔紋からサイクロプスの魔石と頭蓋骨を取り出すとマービックさんは眼を見開いて無言になった。そして、さきほどの一言である。
「さて、ザッカートについてだったね。
現在、ザッカートは帝国軍にほぼ包囲されている状態にあるよ。
ダンジョンのある帝国側には、兵が約5千程度が展開しているとみられる。
そして、海上には巨大な武装船が5隻陣取っていて、航路を塞いでいる状態だ。
そして、王国側だがこちらはかろうじて行路を維持できてはいるが、状況は良くない。」
そこまでマービックさんが話したところで、ギルドマスターの部屋がノックされる。
「なんだ?今は客人がいるといったはずだが?」
マービックさんが扉に向かって声をかけると職員と思われる女性の声がした。
「はい。ただ、軍の方が見えておりまして。お客様にも関連する事だと言われておりまして・・・」
それを聞いて、マービックさんは困ったような顔をして、僕達に謝った。
「ちょっとすまんな。流石に、この時期に軍となると無下にできん。」
「ああ、もちろん構いませんよ。では、下で待っています。」
ロッソさんが応え、僕達が席を立とうとしたとき、ドアが開いた。
「いや、君たちもいてもらった方が、こちらは都合がいいんだ。」
ドアの向こうから現れたのは、二人の男性。そしてその一人は見知った顔・・・ディーン副団長だった。
・・・
「いやぁ、まさかここで会うことになるとはね。俺達にとってみれば幸運だな。」
「君がアーディル君か。ディーンに君のことは聞いたよ。君は恩人らしいね。
申し遅れたが、私は第三騎士団・・・銀の旅団といった方がわかるかな・・の旅団長の一人でアレックという。」
アレックは、30代前半の精悍な顔つきの整った顔立ちの長髪で銀の胸当をつけたいかにも騎士といった男性だった。
「銀の旅団・・・。王国の誇る精鋭部隊じゃねえか。」
エリックがつぶやく。
現在王国には、3つの騎士団がある。第一騎士団は、いわゆる近衛部隊であり王都の防衛部隊である。
そして、第二騎士団・・・一般的に騎士団といえば第二騎士団を指す。地方警備や各種砦の警備などを主な任務を行っているのはここであり、当然人数も第一騎士団よりも多い。ディーン副団長の所属するのもこの第二騎士団だ。
最後が、第三騎士団。通称、銀の旅団と呼ばれる組織である。
銀の旅団の特徴は、本部が王都ではなく北都メリオノールにあり、正規の騎士団ではあるのだが、騎士団としては異色の存在であった。
組織は、数名から十数名の旅団と呼ばれる少数精鋭によって構成され、常に王国内の様々なところを巡回していると言われている。
本来の任務は、地方領主の不正や悪政があった場合や謀反などにいち早く気づいたり牽制を行うことなのだが、実際は、冒険者の対応が仕切れない魔物退治や事件の解決などを行うことも多い。
皆、一様に獅子のレリーフの入った銀の胸当てをつけており、場数を踏んでいる者が多いことから、実戦戦闘力は三騎士団の中でナンバーワンと言われていた。
旅団長は、一旅団の隊長であるから組織としては、第二騎士団の補給部の副団長であるディーンの方が格上に感じるが、実力的には旅団長の方が実力があるうえ恐れられる存在であった。
「まぁ、そう構えないでくれ。
そんな頭骸骨や魔石を持ち込んでいる君たちとこんな時期に事を構えたくはない。」
軽く冗談めかして、アレックさんは肩をすくめて見せた。
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