38.樹海からの脱出
「う・・・、ここは・・・」
僕の顔を高く昇った太陽の日差しが照らす。
僕は、その眩しさに眼を細めて上体を起こすと、周りを見回した。
そこは、昨日野営をした場所だったが、記憶にある場所とはかなりかけ離れたイメージがする。
その理由は、すぐにわかった。
昨日は草が生い茂っていた場所は、地面がむき出しになりクレーターまではいかないが、地面が何か所も掘り返されたように隆起・陥没していた。
さらに、遠目にも広場の周りの樹木が軒並み倒れているのがわかる。
「あ、気が付いた?」
ニースさんが、僕が起き上がっているのに気が付いて、近寄ってきてくれた。
僕の周りには、いくつか冒険者達が集まっていて、炊事の煙が立っていた。
「どれぐらい、眠ってました?」
「そうね。2時間ぐらいかしら。もう大丈夫?」
そういって、木のコップに入った水を差しだしてくれた。
生ぬるい水だが、香草がはいっているようで、すっきりとした味わいになっていた。
「ええ。ご迷惑をかけすみません。ちょっと無理をしました。」
「いや、貴方がいたからこれぐらいの被害で済んでいるのだから、気にしないで」
「ああ、そうだ。被害は?」
「幸い、死亡者も重症者もいないわ。ただ、骨折や打撲者はそれなりに。大体治療は終わったところよ。」
「そうですか。それは良かった。」
「しかし、貴方の魔法には恐れ入ったわね。聞いたけれど、あなた、学院生なんですって?とてもじゃないけれど信じられないわ。」
「はは・・・。まぁ、それは置いておいて・・・、これからどうする感じなんでしょう?」
「詳しくは、デュルゲルさんやロッソに聞いてもらった方が行けれど、どうやら今日はここでもう一泊するつもりらしいわ。怪我人の治療もあるのだけれど、さっきの爆発で、魔物が殺気立っている可能性が高いから、むやみに動かない方がいいという判断らしいわ。」
「そうですか。それがいいかもしれませんね。あ、そういえばこれ・・・」
そういって、僕は封魔紋の中から、魔法薬を数本取り出してニースさんに渡す。
「あまり効果は高くないかもしれませんが、痛みを取り身体回復効果を促進する魔法薬です。」
「いいのかい?」
「ええ、昨日ありあわせでつくったものですから。あ、でもちゃんと効くはずですよ。」
そういって、僕達がダンジョンに言った理由を簡単に話す。
ニースさんは、僕が魔法薬を作れることは知らなかったようで、ただただ驚いていた。
本当は、ダンジョンに行った理由自体が材料収集でもあったんだが・・・・。
僕は、軽く身体を動かして、調子を確かめる。
”どうだ?かなり強くなった感じがするだろう?”
後ろを振り向くと、シャナがなぜか得意げに立っていた。
”確かに、すこぶる体の切れがいいね。ところで、最近シャナは、自在に出てくるね。”
”サイクロプスの血肉で、かなりステータスが上がっているからな。当然じゃろう。
まぁ、まだ馴染んでおらんようだから、ステータスほど力は出せんだろうが。
あと、我の事じゃったな。お主が炎の精霊を喰ったことで、力が戻ってきたんじゃよ。
まぁ、我とアルは文字通りの一心同体じゃからな。”
なにやら、僕が力をつけるとシャナも力を得るようだ。
しかし、それって大丈夫なんだろうか・・・・。
”なんか心配しておるのか?言うておくが、我はなかなか使える奴ぞよ”
”それ、自分で言うか。そこは心配していないんだけど、シャナって闇と恐怖の精霊だし、最初は悪霊みたいだったじゃない?人間に復讐しようとしてたんでしょ?”
”なんじゃ、そんなことか。我は、お主と一心同体といったじゃろう?力を得てくれると、かなり自由に行動もできるようになるし、自我を持っていても、アルの影響を受けることは変わらん。アルの感情や思考の影響を受けるのじゃ。アルが復讐を考えるなら我もそう考えるし、それを嫌うなら我も嫌うのじゃ。”
ということは、僕さえしっかりしていればよいという事か。まぁ、そもそもシャナの言うことを信じるかどうかというのがあるが。
「アーディル君。起きたのか。」
「ああ、ロッソさん」
僕は、ロッソさんと、これからのことを一通り打ち合わせをした。
概ねニースさんと話した通りなのだが、どうやら、僕が起こした爆風がおきて鳥が逃げた方向とサイクロプスが現れた方向をみて、進行方向を変えるようだ。
「樹海は危険だからな。少しでも安全そうな方に行こうと思う。」
「わかりました。」
それから、野営をすると樹海の外に向けて皆で歩いた。
怪我をしていた人たちも、歩行には障害がなかったのと、エリーさんの生命探知の魔物もいわゆる雑魚しか現れずにすんだのも幸いし、4日ほどで樹海から抜けることが出来た。
流石に、前の様な野営地は見つからなかったが、水や食料も十分足りた。
ただ、栄養も偏っているし、精神的な疲労は抜けない。
「やった。樹海から抜けることができた。」
「問題は、ここがどこか・・・だな。」
それでも、皆の顔は明るかった。




