32.地上へ
「ああ。大体のところはそれで構わない。」
「君たちの実力も十分わかったし、エリーの能力についても聞いているしな。なによりここまで見事だったと思う。問題は・・・」
「樹海に出た後・・・ですよね。」
「ああ。君たちの言う通り、ザッカートは戦場もしくは包囲されている可能性が高い。
10層程度であれば問題はないが、そのあとの樹海を出るのは、それなりに骨が折れる可能性が高い。
ザッカートに思い入れのあるやつもあるし、有事に力になりたいのはやまやまだが、樹海を出てそのままザッカートに向かうのでは、ダンジョンの入口を強行突破するのと変わらんからな。」
「ええ。樹海のどのあたりに出れるかが不明なので難しいところですが、王都かシモンの砦を目指すべきかと思っています。」
「うむ。その方が良かろう。そうとなれば、今のうちにちゃんとアナウンスしたほうが良いじゃろうな。
無理をしてもザッカートに向かいたい者もいるじゃろうしな。そうであれば、儂らも役に立つじゃろ。
隣におるだけでもな。」
「それは、俺も協力しよう。後は、野営の見張りとかだな・・・。」
難しい話はエリックとデュルゲルさん達が、テキパキとまとめていってくれた。
そうこうするうちにも、新たにパーティーが加わり、集団が大きくなっていく。
すでに単純な戦力なら1師団以上となるだろう。ただし一時的なゲリラ戦ならともかく、継続して戦闘を続けるには指揮命令系統や連携、兵站の面で難しい。ましてや、ここには、初心者のような者からB級冒険者までおり、練度にかなりのバラツキがある。弱い一点を疲れると脆い。
これは、実力よりも性質の問題だ。
逆に、遊撃部隊のよう運用には、冒険者は非常に優秀だろう。
とりあえず、今日は疲れたので休もう・・・。
・・・・
翌朝、僕達は10階層まで無事に進むことが出来た。
なかなかこの集団の前に魔物も出てこないが、それでも多少は自然体でも食材は手に入ったし、9階層で水も補給したので、食料には不安はない。
今後ここに下層からたどりつく者のために、アルキラ帝国に入り口が封鎖されていることを告げる簡単な看板も用意された。むろんこの階層の出入り口のことは記載しない。
帝国兵に気づかれないためでもあるが、これより下層に行っているのなら、単独パーティーで樹海に入るなら、ダンジョンで救出を待つ方が助かる確率が高いかもしれないからだ。
「このあたりね。この奥の岩場に洞窟の入口があって、その奥が出入り口になっているわ」
エリーさんがそういって、脇道を指さす。
そのまま進むと小さな山のような岩場があり、確かにそこに洞窟があった。
1階の入り口のように整備はされていないが、大きさはそれなりで、通行に支障はなさそうだ。
「では行くぞ。」
「樹海はほとんど誰も立ち入らないから、ダンジョンよりも厄介かもしれないから気をつけて」
こうして、僕達はダンジョンを脱出して地上に戻ってきた。
・・・・
ダンジョンにも太陽の様なものはあったし、空もあった。
だけれども、やはり地上のそれとは違うのだなと改めて実感する。
ここは、樹海のど真ん中。密林に近い場所にぽっかりと空いた洞穴だった。
「この樹海でこの穴を見つけるのは、まず無理ですね。」
「そうね。だからこそ、安全というのもあるけれど。
情報では、ここはアルキラ帝国との実質上の国境の樹海になるわ。2日~3日ほど行けば樹海からは出られるはず。太陽の向きからするとあっちの方向かしら?」
「こういう森では、木々に邪魔されて方向感覚が狂いやすいからのぉ。まっすぐ向かっておったはずが、曲がっておったということがよくある。気をつけろよ」
「そのあたりは、私に任せて。ちゃんと目印をつけながら進むから。」
「では、先頭はまかそうかの。エリーよ。魔物の感知はまかせるぞ。」
「ええ。任せてちょうだい。早速だけれど、生命反応が10程あるわよ。狼かな?」
「ならば俺達に任せておけ。皆、しっかりとついて来いよ」
先輩冒険者の皆さんが、ここぞとばかりに役割をかって出てくれた。
正直、このへんは、経験がものをいう。
皆が来てくれて良かった。




