31.デュルゲル
デュルゲルは、Bランクのハンターで、『両刃斧のデュルゲル』とこの辺りでは呼ばれているそうだ。二つ名としては、ありふれたものだが、本人は気に入っているらしい。
Bランクというと、ドバン先生やガードナ先生と同じランクになる。
実は、結構高いランクらしく、王都や城塞都市ではそれなりの数がいるが、地方のギルドでは最高ランクということもザラらしい。
そういえば、先生たちは元気だろうか・・・。
「特に、お主はいい判断力を持っとる。
こんな時に冷静に最適の判断を下せるのはなかなかやるのぉ。
儂の出番がなくって、ちょっと寂しいぐらいじゃ。じゃが、あまり気張り過ぎなさんなよ。
儂もこうみえても、経験豊富なうえ、それなりに顔が効くでの。困ったことがあったり、悩んだら相談するのじゃ。特に、お前さんはまだ若いし、ランクもおそらくそこまで高くないじゃろ。ここにおる奴らには、儂と同じBランクの奴もおるし、一度パーティーのリーダーを集めて話をした方が良いと思うぞ。」
「ありがとうございます。正直、私よりもこういう役にふさわしい方がいると思う中で、どうしようかと思っていました。」
「いんや。戦闘能力などは別として、お主は十分良くやっとる。その証拠に、他のベテランも文句ひとつ言わんじゃろ?。自信を持つのじゃ。ただ、これだけの人数がいれば、自ずと色々な意見がでたりする。実力もないくせに、プライドだけ高いやつもおるしな。その辺を抑えるためにも儂ら年寄りをうまくつかうことじゃ。ところで、アーディルというたかの?」
「はい。」
「お主も、非凡な実力の持ち主じゃな。あの魔法の威力もそうじゃが使い方・・・。お主らに誰も文句を言わんのもお主によるところが大きい。ところで、水もありがたいが酒はもっとらんのか?」
デュルゲルは、なんとも子供の様な笑顔でそういった。
ドワーフの酒好きは筋金入りというが、彼もその類から漏れないらしい。
「残念ながら、酒は造ったことがないですね。」
僕が半ば呆れたような顔でそう返すと、デュルゲルは本当に残念そうな顔をした。
まぁ、魔法薬の調合よりも酒造りの方が絶対に簡単なので、作ろうと思えば作れるかもしれないが・・・。そういえば・・・。
「酒はないのですが、もしかしたら、これはお役に立ちませんか?」
そういって、僕がとりだしたのは大鬼の使っていた大斧だった。
戦利品として回収していたが、正直僕はもちろんエリックやセドリック、ティアさんには使いこなせない代物だ。ダンジョンの固有種が持っていた間違いなくダンジョン産のアイテムで、僕の魔法を受けてもびくともしなかったので、それなりの物だと思うのだが、いかんせん重いし薪割り斧程度ならともかく、戦斧は玄人好みの武器なので、使い手を選ぶため、帰って売ろうと思っていた。
だけれど、こうなったのなら生き残るために、このメンバーの戦力アップにつながるように賭けた方が良い。
「ほぉ。ちょっと貸してみろ」
デュルゲルさんは、さっきまでの表情が嘘であったかのように、真剣な表情になるとその両手斧を僕から受け取り、色々確かめたうえで、何度か素振りをした。
すると、斧を振った軌跡がやや白く光った残滓が見える。
「おまえさん。これはどうした?」
僕は、低階層で固有種のオーガが出て討伐し、その戦利品として手に入れたことを伝えた。
「ふむ。こいつは良い斧だな。材質はおそらく妖銀。偽白銀なんぞ酷い呼び名じゃが、加工難易度が高いだけで、能力的には劣らぬ。細かい能力は使っていかんとわからんが、間違いなく光属性の魔法が付与されておるな。」
「どうです?」
「うむ。出来れば譲ってほしいところじゃが、いくらで売るつもりじゃ?」
僕は、エリックの方を向いて頷く。
「もし、今の武器よりも良い物なら、とりあえず、この脱出が終わるまでお貸しする形でいかがでしょう?どうせ、我々には使えないものですし。今の武器を代わりにお預かりする事もできます。
まずはここを脱出しないとはじまりませんし。そのままお買い上げいただいても、返していただいても結構です。デュルゲルさんが使っただけで、箔がつきそうですし。」
その答えを聞いて、ディルゲルさんは感心した顔をして頷いた。
「お前さん。魔法だけではなく、商売もうまいのぉ。まぁ、それも嫌いではない。
では、お言葉に甘えて、レンタルをお願いしようかの。」
そういうと、斧を交換をした。
「爺様。なにやら楽しそうですな。」
中年の冒険者が数名やってくると話しかけてきた。
「ちょうどよかったわい。こちらから声をかけに行こうかと思っておったところじゃ。」
「おかげでしっかり補給させていただきましたからね。作戦会議とまではいきませんが、少し打ち合わせをしたいと。」
このあたりの主要パーティーのリーダー達の集団だった。




