30.帰還
「倒したのか?」
「多分・・・・ね。」
エリック達は、半ば呆然とした様子で焼けて崩れた岩壁と大鬼がいたはずの場所を見つめていた。
「最後の・・・あれは何?すごい火魔法だったけど・・・」
「あれは、『竜撃砲』っていうらしいです。今の僕にってのとっておきですね。」
「それって、”古代龍の息吹”の原型になったっていうやつ?
宮廷魔術師でもそう簡単には使えない術よ?!」
「いや、だからとっておきですってば。それより、ちょっと死体の回収に行ってきます。
あ、毒の関係がありますから、みなさんはちょっと待っててください。」
僕は、そういって、大鬼の死体の方へ走っていった。
大鬼の死体は、胸から上が、巨大な円形にくり抜かれたかのように消滅していて、下半身と2本の腕だけが転がっているような状況だった。
周りは、表面が赤黒く溶けた岩壁の欠片が煙を出しながら散らかり、すごい熱を発していた。
僕は、”闇の法衣”で万一に備えながら、大鬼に近づく。
魔法のおかげか、毒耐性スキルのおかげか、やはり問題なく近づくことが出来た。
闇の法衣は、熱も遮断するようで、涼しくはないが耐えられない熱さではなくなったのはありがたかった。
僕は、大鬼の2本腕と、下半身だけになったその巨体、そして近くにころがっていた巨斧と、無残にも四肢を引き裂かれた冒険者に持っていたと思われる装備を封魔紋に収めた。
他にも何かないかと思って周りをみたが、めぼしいものは見当たらなかったので、急いで皆の元に引き返した。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫です。とりあえず、死体は収容しました。ただ、上半身は消し飛んでました。」
「いや、証拠としては十分すぎる。それに、毒のある魔物は素材を使いにくいからな。
腕の一本でもあれば上等過ぎる。」
「そうですか。近くにあった死体もとりあえずは・・・。ただ、身分証明になりそうなものは・・・・。」
「それは、すみません。ギルドカードでもあれば良かったんですが・・・。しかし、それもしょうがないですね。」
「では、これで撤収ということでいいですか?流石に疲れました。」
「そうだな。撤収するぞ。しかし、アーディルには驚かされることばかりだな。」
「本当に・・・。これで、まだ学園生なんですもんね。」
そんなこんなで、僕達はダンジョンから撤収する事になった。
幸い、帰り道は大した魔物に出会うこともなく、僕はほとんど何もしないでダンジョンの出口付近まで戻ることができた。
・・・・
「いや、どういうことだ。」
ダンジョンの入り口付近では、冒険者らしき軽装備の数人の男性が、完全鎧を纏った数十人の兵士と問答をしていた。
『これより、この”太陽の森”は、アルキラ帝国の管理下に置かれる。
貴君らには、帝国方面への移動は認めるが、ザッカート方面への移動を禁ずる。』
「いや、そんなこといっても、ザッカートには俺達の家がある。返してくれよ。」
「ならん。もし、どうしてもというのなら、捕虜という事になるが。」
騒ぎを駆けつけたのか何パーティーか冒険者が集まるって来るが、数や装備ではアルキラ帝国の兵士の方が圧倒的に上であった。
もっとも、本来熟練の冒険者は、危険な場数を踏んだ量も装備も兵よりも圧倒的に強いのだが、ここにいるものの中で、そこまでの者はいないようであった。
「どうしたのかしら?」
エリーが、入り口付近に異様な数の人間の生命反応に気が付いて独り言を呟く。
「どうした?」
それにエリックが気が付くと、入り口のあたりの様子が変であることがわかった。
「ちょっとまってろ。」
エリックがそう言うと、遠くの岩陰から入り口の様子を伺う。そして、しばらくして戻ってくると申告な表情で舌打ちをした。
「ちょっと不味いことになった。入口にいるのは、間違いなくアルキラ帝国の兵士だ。」
「アルキラ王国の兵士?」
「ああ。出口を封鎖してやがる。冒険者と揉めてるが、多勢に無勢だな。」
「どうします?」
「さっきの魔法で強行突破・・・・てわけにもいかねぇだろ。」
「はい。準備に時間がかかりますし消耗も大きいので、一撃必殺にはなりますがちょっと乱戦には向かないです。それに、今だと他の冒険者さん達も巻き添えにしちゃいます。」
「ああ。それに、見えているだけって限ったわけじゃない。ここで何とかやって出て行ったら囲まれていましたではな・・・。」
「では、投降しますか?」
「それはできたら避けたいな。エリーさん。このダンジョン・・・出口は他には?」
「まともなのは、ここだけです。ただ、無いわけではない・・・というところですね。」
「なんとなくわかった。が、それに賭けてみたいんだが。」
「わかりました。ご案内します。」
こうして、僕達はダンジョンの入口から、また奥へと道をすすめていくことになった。




