29.オーバーキル
「というわけで、一度僕にチャレンジさせてください。」
「なにが『というわけ』なのかわからないわ」
結論としては、僕はもう一度変異種の大鬼の討伐をすることを名乗り出た。
理由は、二つ。
「相手がマロウのおかげで手負いの状態であること」
そして、もう一つが「試してみたい魔法がある」ことだった。
「だけれど、毒はどうする。もう魔法薬はないんだろう?」
「ええっと・・それなんですが、今日は相手を足止めして遠距離からの魔法攻撃しかしません。
で、しとめたら素早く封魔紋に封じます。僕は魔法薬を沢山つくったせいもあって、毒には少し耐性があるので、それぐらいだったら大丈夫かと。」
もちろん正直に僕には多分毒が効かないとは言わない。言っても信じてくれないだろうし、絶対に聞かないとは僕にも言い切れない。まぁ、LV8だから大丈夫じゃないかなぁとは思うが。
そういうと、エリックに向かって”捕縛の闇縄”をかけた。
瞬間、地面から触手にも似た真っ黒い闇が縄のように地面から数本生えて、エリックの足をまるで蔓植物が木にまとわりつくように這いあがり、絡みついた。
「こんな感じです。」
「植物の束縛?」
「似たようなものです。属性が違いますが。植物が無くてもできますし、多分スピードや強さもこちらの方が強いです。」
「凄いじゃない。」
「でも、欠点ももちろんありますよ。植物の呪縛のように物理的な枷がないですので、強い光魔法や解呪魔法で無効化できてしまいます。それに、魔力だけで束縛するので、ちょっと疲れますね。」
エリックが、もがきながら捕縛の闇縄から抜けようとするが、上手く抜けきれず、ますます動けなくなっていた。
「あと、目つぶしも兼ねた魔法も駆けます。斧とか石とか投げられると面倒ですから。」
エリックは、あきらめたのか。大きく頷くと呟いた。
「やっぱり、もう先輩面できないかも・・・」
・・・
件の大鬼は、エリーさんがいたこともあり、驚くほど簡単に見つかった。
大鬼の周りには血だまりが出来ており、まわりにその臭いが充満していた。
昨日、マロウが噛み切った腕は、惨たらしいままであるが既に出血は止まっており、その血ではない。
「う・・・。間に合わなかった。」
エリーさんがそうつぶやいたのは、大鬼の横に転がっているのは、昨日のように魔物ではなく、明らかに人間・・・冒険者の四肢だったからだ。
思わず、吐きたくなるような光景だったが、僕には怒りの方が大きかった。
見ず知らずの人たちであるが、やはり許せないと思ったのだ。
「暗黒の雲!捕縛の闇縄!!」
連続して、二つの魔法を大鬼にかける。
すると、大鬼の上半身を真っ黒な雲が包み込み、地面から黒い蛇の様な縄がオーガに絡みついていった。
「ギ?! ググ ガャァァァ・・・」
何が起きたかわからないような雄たけびのような声が木霊する。
「皆、離れて。」
僕はそういうと、昨日覚えた竜撃砲を使うために、詠唱を始めた。
術式が難解なため、無詠唱では使用できないと判断したのだ。
ただならぬ気配を感じたのか、皆僕の言う通り、僕から離れる。
オーガは、眼が見えないため斧を周りに振り回すが、50m近く離れているため只空を切るばかりだった。
「現れたるは地獄の炎、活かされたるは浄化の火炎、仕えし物は龍の息吹!!竜撃砲」
詠唱の最後の小節を唱えると、短槍の先から恐ろしいほどの炎が噴きでて巨大な槍の形となって放たれた。一気に魔力が抜ける感じがしたかと思うと、その威力に、僕の身体が軽く後ろに吹き飛ばされた。
これは、マロウの召喚より消費がでかい・・・。数発撃ったら意識が飛ぶな・・・・。
まるで、巨大な魔人が使うかのような炎の巨大槍は、暗闇の中の大鬼の頭があるべき場所を通過すると、そのまま巨大な岩に突き刺さり、その岩を吹き飛ばして消滅した。
「ど・・・どうなったんだ?」
巨大な岩が爆発したため、大鬼がどうなったのかがわからない。
「生命反応は・・・ありません。おそらくは倒したと思うんですが・・・」
あきらかなオーバーキルだった。




