26.なぜに、ゴブリンは不味くてオークは旨いのか?
「右の脇道をいったところに、生命反応6。多分オークね。」
浅黒い肌、長く太い腕、湾曲したやや短い脚に太った腹、そして顔には豚に似た鼻と大きな口、牙。
大きさは、人間の大人よりも若干背が低く感じるのは、その姿勢の悪さからか。
人間より知能は劣ると言われているが、道具や武器を作ったり個体によっては魔法を使うこともある。
もっとも、好戦的な種族で力が強いため力づくで猪突してくることの方が多いが。
「オークってのは、牙や肉などちゃんと処理をすれば、それなりの値段で売れるからな。
しかも、ゴブリンほどじゃないけれど直ぐに増える。ただ、群れて襲ってくるし、力は強いからな。
ちゃんと装備を整えて、訓練を積んだ冒険者にはいい稼ぎになるが、一般人には危険な魔物に違いない。」
「先手必勝だな。アーシェスとティア頼めるか。」
「任せて」
僕は、いつもと同じように短槍を相手に向け、一番得意な”火線”を一番大きなオークに向かって放つ。
瞬間、今までとは比べ物にならない強さの熱線がオークの腹に突き刺さる。
しまった。スキルレベルが一気に上がったんだった。
「アガ、ギャガガ!!」
いきなり仲間を撃ち殺されたオークは、騒ぎ出して周りを警戒する。
1匹がこちらをみて指をさした瞬間、近くで”火球”が爆ぜた。
「外した。」
ティアさんがそういう間にも、マロウをはじめエリック達はオークの群れに突っ込んでいく。
「それなら!」
僕は、乱戦になる前にと魔法を唱えた。
先程と同じような熱線がオークの群れに向かう。ただ違うのはここからだ。
オークの群れの近くで熱線が爆ぜる。
これなら、殺傷力はかなり低くなるが、広範囲にダメージを与えることが出来る。
致命傷にまで至らなくとも、行動不能にしたり動きを制限できれば、接近戦がかなり有利になる。
もっとも手負いの魔物は危険とも言うが。
目論見はうまくいったようで、オークは熱線に貫かれて暴れているところを、マロウやエリック達によって一瞬で倒されていった。
「ちょっと、今の何?」
オークが全滅をしたのを見て、ティアさんが詰め寄ってきた。
「最後の奴ですか?”爆発”の簡易版です。
完全に無詠唱とまでいかないですけれど、あれであればほとんど無詠唱と変わらない時間で撃てるので。」
「あれもそうだけど、最初のは?」
「いやぁ、”火線”ですよ。ちょっと火力が僕も想定外でしたけど。」
オークを収納しに近づいてみると、最初に倒した一匹は胸にこぶし大の穴が見事に貫通していた。
「俺達の立場ねぇな・・・。」
「狼の召喚だけじゃないのね・・・。」
エリック達は、ぼそりとそう呟いくとエリーさんも驚いていた。
「まぁ、強いことは悪いことじゃない。それに、世の中にはもっと人外のやつが腐るほどいるからな。
とりあえずは、血抜きだけさっとやるぞ。できるか?」
「えっと、やり方は知ってはいるんですが、初めてです。」
「じゃぁ、まずみてろ。」
そういって、エリックは、冒険者の小剣を取り出すと、首筋や手首・足首を刺す。
そうやって、血を抜くのだ。
血は腐敗しやすく、この処理をしないと味が一気に落ちるのだ。
「まぁゴブリンなんかは、この血が臭過ぎるうえに若干毒があるから、これぐらい処理では喰えたもんじゃないけどな。」
なるほど。僕も新しい冒険者の小剣で血抜きをしてみた。
簡単そうに見えて、意外とうまくできない。
「良かったよ。まだ僕達でも教えることができることがあって」
エドリックが隣で血抜きをしながらホッとした様子で呟いていた。




