21.炎の精霊
「あれ・・・かしら」
「ええ、あれね。生命反応がないわ」
「逃げた方が良くない?」
100mほど先に、見えるのはおそらく3mを超える全身を炎に包まれた大男だった。
下半身に該当する部分はなく、上半身は異様に筋肉質。頭にはターバンのようなものを巻いているように見える。
”シャナ!すごく強そうなやつがいるんだけど、あれ精霊?!”
”うむ。炎属性の精霊じゃな。”
”シャナより全然強そうなんだけど・・・”
”失礼な。我をあんなやつと一緒にするでない。”
”いやだって・・・・”
”まぁ、そう心配するな。むしろチャンスよ。
ある程度弱らせたら、”喰っちまえ”ばいいんだから。”
”そんなこと可能なの?”
”我を”喰って”おいて、何を言うか。あのような名もなき精霊など、アルの糧にしかならんわ
とりあえず、会話は無理そうな感じだから、氷か水の魔法で弱らせるんだ。”
”わかった。”
「ティアさん、水か氷属性の魔法使えますか?」
「一応。まともに使えるのは、”氷の槍”と”氷の刃”、あとは威力は低めだけど”水球”ぐらいなら」
「十分です。僕も似たようなもんですから。でも、”氷の刃”が使えるなら、エリックとセドリックも攻撃できますね。僕は、まず”炎の盾”で皆に防御膜を張ります。
ティアさんは、”氷の刃”を皆に。あ、マロウにもお願いします。
あとは、全力で攻撃ですが、絶対深追いしないでください。特にエリックとセドリックは。」
「ああ、わかってる。見るからにやばいからな。」
”氷の槍”は文字通り、槍のように尖った氷を投射する遠距離物理魔法。
冷気を帯びているため、炎属性の精霊にはダメージを与えられる可能性がある。
”氷の刃”は、付与魔法で武器に冷気属性を持たせることができる。
どこまでうまくいくかはわからないが、たしか魔物の牙や爪にも付与を載せることができると本には書いてあった。僕も使えないという事はないと思うが、ぶっつけ本番で使うには効果に疑問があるので、ティアさんに任せた方がいいだろう。
”水球”は、水属性の放出魔法になるが、主目的が火事の消化なので、普通の魔物にはあまり効果がない。だが、全身炎の精霊は、見方によっては常に火事という状況なので、効果がある可能性がある。
そして、”炎の盾”は、炎の耐性を一時的にあげる魔法だ。
盾という名前だが、実際には身体の表面に炎の熱を遮る薄い膜ができる。
地味だが今回一番重要な役割の魔法になるはずだ。あのホブゴブリンのようにならないために・・・。
「行きますよ」
補助の魔法を一通りかけた後、僕らは構えた。
マロウが一直線に駆け出し、その後をエリックとセドリックが追う。
そして、僕は氷結弾、ティアさんが”氷の槍”を放つ。
エリーは、できそうなことが思い浮かばなかったので、離れて他の魔物の生命反応を感知をしてもらうことにした。
まず、僕の”氷結弾”が炎の精霊に炸裂する。水系の初歩的な呪文で、”氷の槍”のような実態がない攻撃だが、着弾と同時に対象を凍らせる呪文だ。
「ギャァァ!!」
炎の精霊は、先ほどよりも炎を強めて、こちらの方を見た。
次の瞬間、ティアさんの放った”氷の槍”が突き刺さるが、一瞬で氷が蒸発してしまった。これは、ダメージが入っているのかどうかわからない。
「ティアさん。僕にも付与を。あと”水球”も試してみてください。」
そういって、僕も”氷結弾”を撃ちながらエリック達の後を追った。
”炎の盾”をしていても、凄い熱量を感じる。
マロウをはじめエリックやセドリックも長くは近づけず、ヒット&アウェイを繰り返すことが精いっぱいのようだ。”氷の刃”は効いているようだが、逆に物理的なダメージは皆無のようで、圧倒的な強さを誇ったマロウの噛みつきなども効果があまりないようだ。
やはり、、”氷の槍”よりも”水球”の方がダメージがあるのか叫び声が大きいのだが、弱った様子はない。
炎の精霊は、少し雄たけびをあげると右手に力を込める。すると炎の色を赤から青に色が変わった。
そして、その右腕でマロウの身体を薙ぎ払うと、マロウが炎に包まれて吹き飛んだ。
「キャン!」
マロウは、地面をわざと転がって炎を消すと再度炎の精霊に向かっていく。
魔狼であるマロウだからこそこの程度で済んだが、これは危険だ。
「エリック!セドリック!!、下がって」
僕は、叫びながら”氷の刃”の載った槍の一撃を炎の精霊に突き刺し、そのまま零距離で氷結弾を炸裂させた。
「ギャァァ!!」
やはり、この精霊の弱点は冷気のようだ。これまでで一番感触があった。
しかし、どうすればいいんだ?
”アル!今見えたか?その精霊の”核”を狙え”
”核?”
”心臓の位置に、珠のような形のものが見えただろう。
あれが、奴の力をこの世界に出すための依代の役割をしているんだ。
あれを傷つけて、封魔紋に封じろ。あとは我がやる”
”わかった。”
僕は、再び氷結弾を放ち、その隙に一度距離をとる。
マロウが、再び跳びかかって薙ぎ払われた瞬間にもう一度胸に槍を突き立てて、零距離で氷結弾を放った。ちょうどティアさんの”水球”もあたり、炎の勢いが弱まる。
「あれか!」
人間でいえば、ちょうど心臓のあたり。そこにこぶしよりやや小さいぐらいの紅い珠が垣間見えた。
僕は、精霊の炎の身体に一気に左手を突っ込むと封魔紋を作動させる。
瞬間、炎の精霊は消え去った。
<槍術のレベルが上がりました。氷魔法のレベルが上がりました。>




