19.手がかりを見つけた
「うん。やっぱりおかしな反応がある。」
エリーが、スキル「生命反応」を使いながら、言葉を発した。
スキルを使う時は、なぜか目線が上の方を向くので、少し面白い。
なにやら頭に閃くように感じるため、自然と何かを考えているかのように上を向くのだとか。
なので、戦闘中とか魔法を使っている時などは、このスキルは使えないらしい。
で、おかしな反応というのは、生命反応とは逆の反応らしい。
簡単に言うと、生命反応が突然消えるのだとか。
例えば、普通魔物が殺されたりした場合、二つあった生命反応が1つ消えるようなことが起こる。
そう、近くに殺した者がいることが普通だからだ。
例外は、生命反応のない相手、スケルトンやゴーストなどになるが、通常この”太陽の森”には存在しない。天敵ともいえる”太陽”を冠する森だから・・・ということではないだろうが、このダンジョンの特性だ。
「あと、可能性としてあるのは、ゴーレムとかか・・・。」
ゴーレムとは、魔法で生み出された疑似生命体の総称で、その材料によって様々な亜種が存在する。
疑似生命体として命や血流ではなく、魔力や魔石を動力にして動くのだ。
付与魔術の系統の術式で高位の術者であれば、一眼巨人ほどの大きさと力強さを持つゴーレムをも作れるという。
「でも、普通ゴーレムだったら近くに術者がいるはずなのよね。とりあえず、近くまで行きましょうか。」
2階層も1階層と同じような森で、街道とまではいわないが、何度も人が通って作られた道があり、様々な樹木や時折開けた場所、枝分かれした道などがある。
冒険者も何人かはいるようで、これらはエリーが大体把握できていた。
人間は大体集まり方や動き方に特徴があって分かるらしい。
まぁ、極たまにゴブリンなどの魔物と間違う事もないわけではないらしいが。
2階層に出てくる魔物も、精々ゴブリンや一角狼までと大したことはないらしくほとんど現れないうえに、現れても僕達の敵ではなかった。
なお、マロウは1階でわかったが、吠えるだけで普通の冒険者が騒ぎ出したし、明らかに過剰戦力すぎて僕達の鍛錬にもならないので、先行させるのをやめて背後を守ってもらうことにしていた。
「ゴブリンの死体なんて持っていっても何にもならないわよ」
「邪魔になったらその辺に捨てますよ。」
ティアさんにはそう答えていたが、僕は魔封紋にいれて密かに”喰って”いた。
例の事件以来、僕は口ではなく魔封紋経由で”喰う”ことが出来るようになっていた。
なので、大きさや量、そして味を気にしなくてエネルギーなどだけを吸収することができるのだ。
まぁ、ゴブリン程度では大したエネルギーにはならないのだが、ごく偶に魔石を持っていたりするし、腹が減えたり、魔力をほんの少しだが回復させることができる。
なにせ、エネルギー消費拡大のスキルのおかげで燃費が悪いのだ。
普通の食事だけでは、エネルギーが足りず、自然体で魔力を消費してしまうのだ。
もっとも、口から摂る食事は大事にしたい。味覚は人生を豊かにするから。
しばらくすると、先ほどの生命反応が急に消えたという場所にたどりついた。
そこには、真っ黒に焦げて炭化した大型のゴブリンだったと思われる死体があった。
「大きいわね。ホブゴブリンかしら。」
「かなり、焼かれているわね。火球程度の魔法じゃこうはならないわよ。
かなり強力な魔法か、良く燃える油を全身にかけて燃やしたか」
「足元以外の回りの草木にはあまり焦げたあとはないな。一瞬で燃やしたってことか。」
「しかも、一点だけを狙って正確にね。」
僕も知っている炎の嵐などの炎の魔法では、ここまでの火力はでないし、逆に範囲が狭すぎる。こんな場所にはいないと思うが、炎を吐く魔物も周りを焦がさずにというのは無理だろう。
「”炎の柱”ならあり得るけれど、まわりに生命反応がなかったんでしょ?」
”炎の柱”というのは、高火力の火魔法だが射程がかなり短い魔法で、およそ杖が届くかどうかというような近距離で放つ玄人向けの魔法になる。
「生命反応がない炎を使う”はぐれ”ってことかな?」
「思い浮かぶような魔物は知らないわね・・・。」
「まぁ、今のところ近くにはいなさそうね・・・。どこかでまた反応が消えるのを待つしかないかしら。」
そう言いながら、ホブゴブリンと思われる死体を僕達は注意深く観察をしていた。
”ねぇ、シャナ。こんなことができる魔物知らない?”
僕は、ひそかにシャナに問う。
”我を頼るのが悪いとは言わんが、随分と急だな。
というか、これは魔物というか我の同胞の仕業であろう。
残っている魔力が独特の波長をしておる。”
”同胞って、精霊ってこと?”
”いかにも。じゃが、弱き力しか感じぬ。おそらくは名もなきような者よ”
”名前が無い精霊っているの?”
”むしろ、無いものの方が多い。我のように自我を持ち名前のある者の方が少ない。”
”そうなのか。で、どうしたらいいんだろう?”
”主なら、魔法言語のスキルを持っておるから、見つけさえすれば意思疎通は図れるはず。
とはいえ、名もなき精霊では、我の様な会話は難しいじゃろう。
おそらく、炎の精霊じゃから、水や氷魔法が効くはずじゃ。使えるじゃろ?”
”あまり実戦で使ったことはありませんが。”
”まぁ、見つかったら、もう一度我を呼べ。
あ、そうそう。こないだ吸収しおった英雄伝は結構面白かった。続きを所望する。”
相変わらず、シャナは本が好きなようだった。
とりあえず、犯人はわかったが・・・、大丈夫なのだろうか。




