16.ダンジョンへ行こう
「ユングさん。精神治療薬の材料が無くなりました。」
「えっ・・・本気で?」
「ええ。瓶ももう残りが少ないですね。」
そういって、周りを見ると大量の中級魔法薬や”精神安定剤”や”精神治療薬”の入った瓶が木箱に積み上げられていた。僕の魔法薬学の腕はLV6。技術だけなら、王国魔導省であっても指導役やまとめ役が出来るほどの腕前だ。まぁ、そういう役職にはまた別の才能もいりそうだが。
調合はもちろん付与する魔法のスピードからテクニックなど、ユングさんの3倍近いスピードでこなせていた。
なにより、ユングさんが驚いていたのは、いくら付与をしても僕が魔力切れを起こさないことだった。
これもレベルが関係している可能性は高い。ただ、ユングさん曰く、保有魔力総量がかなり高いのではないかとのことだった。
たしかに、炎線をいくら撃っても平気だし、魔力切れを感じたことはない。
流石にマロウを召喚した時には、魔力の減りを感じたが、そのあとも十分に魔法を仕えていた。
入学した時やはじめて魔法を使った時とは段違いになっているだろう。
おそらくは、”魔石を喰っているから”の様な気がする。魔石とは、文字通り魔力の塊なのだから。
「えっと足りないのは・・・、吸血蝙蝠の羽に火撃茸、翡翠蛙の肝ですかね。まぁ、吸血蝙蝠の羽は代用が効きそうですが・・・・」
精神治療薬の材料は目新しいものではないが、そこまで需要がないために在庫が少なかった。その他にも、魔法付与の際の中和剤として使う素材も残りが少ない。中和剤は薬剤の効果を引き上げる際の魔法との親和性をあげ、効能や有効期間を延ばす効果がある。
「じゃぁ、冒険者ギルドに追加依頼を出しましょう。」
「そうですね。どうせ瓶待ちになりそうですしね。」
「まぁね。というか、まだ魔法薬いるのかしら?」
既に、ザッカートの何か所かにある貯蔵庫には、かなりの数の魔法薬が備蓄されており、有事に備えている。
冒険者ギルドなどにも材料を手に入れてもらう代わりに魔法薬を卸しており、これも通常時の倍はギルドで確保されていた。
「ちょうど息抜きにもなりますし、ギルドにでもいきましょうか。」
「ええ。ここのギルドに行くのは初めてですし。」
冒険者ギルドは、王都での研修で連れて行って貰ったきりだ。
それも、一通り説明を受けて、挨拶やら先輩冒険者の話を聞くやら、それだけだった。
学生にうちは、安全のためにも基本学生課を使うのが基本。冒険者ギルドでの依頼受注は基本出来ないからだ。ギルドの方もレベルの低い学生によって評判を落としたくはない。当然と言えば当然の制度だった。
「ガランゴロン」
低いベルの音がギルドに鳴る。どうもこのベルはほとんどどこの冒険者ギルドでも同じような音らしい。
そして、そのベルの音を聞いたギルド内の反応もどこも同じようだ。
職員も含めて、ドアの方に視線が注目し、値踏みするような視線が集まる。
直ぐに、視線を外す者もいれば、ずっとその動作を注視している者もいるようだ。
職員以外でギルドにいる者は2種類の人しかいない。一人目は、いわゆる冒険者。ギルドの主役である。
そして、もう一人は依頼者。冒険者にとってみれば雇い主でありスポンサーになる。
そして依頼者が満たしてくれるのは、冒険者の懐だけではない。冒険者が冒険者たる所以である”冒険”を与えてくれることもあるのだ。
ユングさんを知っている人もいるようだが、ユングさんも僕も、最低限の装備は持っているとしても、冒険者のそれと比べるとあまりにも軽装だった。
その姿を見て、どうやら彼らは、”依頼者”だと感じたようだ。
何人かの視線が僕たちを追う。
「あれ、アーディル?」
「あれ?まだこの街にいたの??」
声をかけてきたのは、エリックだった。
どうやら、エリック達はこの街の近くのダンジョン”太陽の森”を攻略中らしい。
「ちょっと魔法薬の材料が少なくなったんで、。買いに来たんです。なければ、依頼を出さなきゃけないし。」
「ああ、なるほどな。で、何がないんだ?」
「えっと・・・」
通常、食材や武器などの素材はギルドで買い取られた後、仲卸や専門店に卸される。
しかし、魔法薬のような特殊な素材は専門店や仲卸という存在がほとんどないので、ギルドで直接在庫を持ったりするらしい。
ただ、その分在庫もあまりないので、基本は都度依頼を出すのが主流だそうだ。
「アーディル君。やっぱり依頼の結果待ちね。
ほとんど、”太陽の森”で採れるから、そんなにかからないだろうって。」
「よっしゃ。俺達にもちょうどいい依頼だろうから、受けに行くかな。」
「ていうか、アーディルなら自分で採りに行けそうだけどね。」
エリックが依頼を受けに行こうとしたのに、ティアさんが軽くいって気が付いた。
『その手があったか!!』
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