15.城塞都市ザッカート
オフェルスから城塞都市ザッカートまでは、補給部隊の兵や騎士、冒険者も追加しての移動になったが、これまでが嘘のようになにごともなかった。
まぁ、そんなに頻繁に色々ある方がおかしいのだが。
僕は、オフェルスで魔石の他、初級の召喚術の本を購入。
馬車に乗りながら、それを”喰った”。
王都でもない町にしては、交易拠点であると共に、貴族なども逗留にくることなどなどから品ぞろえが良かった。
召喚術というのは、精霊界や天界、魔界、魔境などから契約をした召喚対象を呼び出し使役する術になる。有名なものは、精霊召喚術で、炎の精霊サラマンダーや水の精霊ウンディーネ、風の精霊シルフと土の精霊ノームを使役する。
最大の問題は、召喚対象と契約を結ぶのが難しいこととその召喚対象といかに信頼関係を強めるかだという。召喚体は召喚に魔力は必要だが、召喚後は独自に行動ができる。
逆に言えば、完全服従というわけではないので、望むような効果を得るためには信頼関係が欠かせないとのことだった。
マロウとの関係がどうなのかわからないが、時々召喚したりして仲を深めておいた方が良いようだ。
ただ、消費魔力が結構大きいのでもっと鍛錬が必要だな・・・。
あと、新しい召喚術を得る方法は、”はぐれ”とか”野良”呼ばれる召喚体と交渉したり屈服させるか、かなりの魔力と術式が必要だが、強制的に召喚をして交渉したり屈服させるのか・・・。
基本的な精霊召喚は大きな街のギルドに依頼を出せば強制召喚はできるらしい。
ふむ。もう知っているかもしれないが、ティアさんに教えておくかな。
・・・・
城塞都市ザッカート。
海と樹海に挟まれた街は海側以外を巨大な壁と城門で囲まれた街になる。
1時間程度の程よい距離にダンジョンがあり、海上と陸路での交易が可能なうえ、冒険者などが集まることから栄えたヴァルジラ王国でも有数の街だそうだ。
街は、戦争が起こるかもしれないというのに、活気にあふれており、大通りには露店も多く出ていた。
「凄いところですね。」
「これでも、いつもより落ち着いているぐらいだよ」
そんな話をしながら、僕達は騎士団の駐屯所へと案内された。
エリック達は、護衛の報酬と共に、アルキラ帝国からの戦利品の分配をいくつか手に入れて上機嫌だった。しかも、ディーン副団長からはしばらく王都との輸送隊の護衛依頼を要請されていた。
「というわけで、俺達はまた王都に戻るわ。また来るから元気でな。」
「うん。また気をつけて。」
「今度から、輸送は規模を大きくして護衛も増やすらしいから、大丈夫だろぅ。」
「それでも、油断しないで」
そんな会話を交わすと、僕は騎士団の輜重部隊の魔法薬などを準備するための部屋に連れてこられた。そこには、20代後半の短髪のボーイッシュな女性が一人でちょこまかと動きながら”下級傷薬”の調合をしていた。
「ユング。かれが今日から手伝ってくれる例の学園生。アーディル君だ。」
ユングと呼ばれたその女性は、やっと僕らに気が付いたようで手を止めると元気に挨拶をしてきた。
「やぁ、君が例の”天才”君だね。僕は、ユング。これでも騎士団の騎士なんだ。
まぁ、僕の役割は薬の調達だけどね。正直ひとりで困ってたんだよ。
本当は、魔導省からも応援が来るはずだったんだけどね・・・・。
でも君が来てくれたのなら百人力って聞いてる。よろしくね。」
王国魔導省からも僕よりも先行してザッカートへと応援を派遣していたらしいのだが、どうやら途中で襲われたらしく、ザッカートへ到着していなかったようだ。
アーディル達に辛酸をなめさせられたガーランド達であったが、それ以外の成果は中々だったらしい。
しかし、僕がいうのもなんだが、結構なお姉さんなのに「僕」っていうのにちょっと驚いた。
ユングさんは、なかなかさっぱりとした性格で、美人というよりも健康的で笑顔に魅力のある人のようだった。騎士の人の中でも結構人気があるようで、大した怪我でもないのに治療をしてもらいに来る人が結構いた。ここは、ある意味医務室も兼ねているのである。
ユングさんは逆に慣れているのか、下級のポーションを自由に使っていいからといって渡して、相手にしていなかった。最下級とはいえ、それでもそこそこの値段はするのだが・・・。
僕は、直ぐにユングさんと仲良くなると、魔法薬をどんどん作りだした。
最初は、材料の関係もあったので中級魔法薬から作成し、”精神安定剤”や”精神治療薬”などをどんどん作っていった。
「聞いてはいたけど、凄いわね。”天才”っていうだけはあるわ。」
いつのまにそういわれるようになったかは知らないが、とにかく褒められているようなのでそれはそれで嬉しかった。
そうこうしているうちに、あっという間に1週間が過ぎた。
<魔法薬学のLVがあがりました>
いつも読んでいただきありがとうございます。




