14.束の間の休息
オフェルスから徒歩なら約1日。雑木林を抜け、切り立った崖が続く海岸線沿いの岩場にヴァルザン達は来ていた。ガーランドは、とりあえず落ち着きを取り戻してはいるが、団長として指揮を執るのはいたっていない。
「すまん・・・。」
「謝るのは、帝都に戻ってからでいい。」
岸壁に黒い大きな帆船が係留されており、黒狼旅団の帰還を待っていた。
彼らは、最近急成長したアルキラ帝国の誇る海上部隊”三叉の矛”。
黒狼旅団をヴァルジラ王国へ海路から密かに上陸させた実行部隊である。
「おいおい・・・なんだその巨大な蜥蜴は」
まず彼らが驚いたのは、2匹のユート・ラプトルであった。
一角狼に比べて、ユート・ラプトルはやや珍しい魔物だし、普通はテイムなどできない中型魔物になるので、驚くのは当たり前であるかもしれない。
「えっ・・・」
そして、旅団のメンバーが7人しかおらず、そして団長が酷い疲労で立つこともままならないことに気づいた”三叉の矛”と艦長ラドフェルが出迎えのために船から出てきたのは、ほぼ同時だった。
ラドフェルは、ヴァルザンの眼をみると、
「後続を待つ必要はあるか?」
と一言だけ声をかけた。
「いや・・・。出てくれ」
ヴァルザンがそう一言いうと、出航の指示を出した。
ラドフェルの任務は、黒狼旅団の密入国と出国。それだけだ。
それ以上は越権行為であり、関わるべきではない。
黒狼騎士団は何らかの失敗をしたのは明らかだ。
しかし、ラドフェル達はここまで完璧に任務をこなしており、何も言われる筋合いはない。
同情をしないわけではないが、巻き添えを食うわけにはいかなかった。
あとは、どんな状態であろうと、本国まで彼らを輸送する。それが彼らの役割なのだ。
こうして、ヴァルザンとガーランド達は、束の間の休息を得ることになる。
しかし、帝国に戻った後の彼らのことを考えると、真に休まることはなかった。
・・・・
僕らは、オフェルスの町で温泉につかりながら、ゆっくりと疲れを癒していた。
できるだけ急ぎたい旅ではあったが、騎士の皆さんの疲労もあったし、ディーン副団長の仕事も思ったよりも時間がかかったのだ。
特殊な魔道具で、王都とザッカートの両方に経過を説明し、補給部隊を可能な限りまとめ護衛増強を行うこととザッカートへは哨戒任務の強化を進言していた。
わずか10名程度の人数で30名以上の兵を殲滅したという報告には疑問の声が上がったようだが、衛士長がフォローをして、納得してはいないだろうが話がまとまった。
敵の規模を見誤っては、また犠牲が出るかもしれない。
最大の問題は、僕達が襲われたことではない。
なんらかの手段で、旅団もしくは師団単位でヴァルジラ王国へ侵攻してきている可能性があることだ。
国境線を警戒しなければいけない。
そして、この進言を諜報部隊が分析・活動した結果、約1週間でアルキラ帝国が海上戦力の増強を行っていることにたどりつくことになる。
ディーン副団長は、後の「ザッカート戦役」の陰の功労者として密かに称えられることになる。
「ちょっと。アーディル君。私にもあれ教えてよ」
ティアさんが、僕に真剣な顔で迫ってくるが、流石にあれは教えられるものではない。
「うーん。教えてと言われても、これ・・・スキルみたいなんですよね・・。」
「うん。で、それどうやって取得するの?」
「うーん。」
それは僕が知りたいぐらいだ。
多分僕は、大量に一角狼や魔石、魔法薬を”喰って”それを得た。
だが、それは多分僕にしかできない方法だし、マロウ以外をこの方法で召喚できるようになるのかどうかは不明だ。
結局、ティアさんには僕の知る限りの魔法の制御方法を教えることで納得してもらった。
自分で言うのもなんだが、かなり上手に教えることができたようだ。
ティアさんは、僕がいうのもなんだが、かなり筋がいい。
しかも明らかに年下で弟分の学園生の僕に対して、素直に実力を認めて教えを乞うということを何の抵抗もなく行う。簡単なようで、なかなかできることじゃない。これは一種の才能だと思う。
一緒に、セドリックいも手ほどきをする。ティアさんほどの資質はないようだが、セドリックはなにをやらせてもそれなりにはこなす、いわゆる器用貧乏タイプだった。
しかし、人に教えるというのは、なかなかに良い経験になった。
何が悪いのか、考えてどうすればよいかの最適解を出す必要がある。
おかげで、3日も逗留したにもかかわらず、充実した日を過ごすことができた。
<頭脳明晰がLVアップしました。>
いつも、読んでいただき、ありがとうございます。




