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13.オフェルスの町

3倍以上のアルキラ帝国と思われる兵からの襲撃をほぼ無傷で撃退をしたアーディル達は、4台の馬車と様々な物資を手に入れた。実際はもう1台馬車があったのだが、御者ができる者の数からこの台数になったのだ。騎士一人につき1台、そしてエリック達で1台。合計7台の馬車と物量だけは輜重部隊としても大規模の軍になっていた。


マロウはシャナから”送還”の仕方を習い、もとにいた魔境へ送り返した。

シャナ曰く、一度召喚に成功したのであれば、魔力さえあればいつでも召喚は可能なのだそうだ。

皆、疲労はピークを越していたが、それでもなんとか馬を制御してオフェルスの町へと向かった。


オフェルス。

王都エスクードと城塞都市ザッカートのほぼ中間にある町である。

古くから宿場町として栄えた町で、その最大の特徴は王立の温泉施設だ。

天然の温泉が発見されてから、宿場町としての価値を一気に高め、さらにそれにより交易の要所とかした。そして、それに伴い路も整備され、さらに人が集まり町が発展していった町だ。


僕達は、オフェルスにつくと、直ぐに兵の詰所に向かった。

理由は2つ。事の経過の報告と追加の護衛を手配するためだった。

本来、ディーン副団長の仕事であり、僕達が行く必要はないと思っていたのだが、流石にこの血まみれの格好(もっとも、ほとんどはあとでマロウにつけられたものだが・・・)で、町を歩き回るわけにもいかず、門から近い場所にあったために一緒に行ったのだった。


「君が・・・。にわかには信じられんな。」

この町の衛士長である初老の男性が、僕を見て唸った。

階級からすれば、ディーン副団長の方が上であるが、年齢的にも一つの町の治安をまもっているということでも彼の眼光は鋭い。

「いや、失礼。疑っているのではないのだがな。

なにより、この量の物資を持ってきたということが何よりの証拠だしな。」


やはり最近、輜重部隊は負傷をして満身創痍で現れるか、もしくは荷を放棄してあらわれるかで、ほとんどまともにこの町に来ていなかったらしい。

その理由は、先ほどのアルキラ帝国の部隊だろう。

国内で30人近くの兵に襲われるなど、想定していなかった事態だったのだ。

とりあえずは、数名は療養中だが護衛の任につけそうな者も数名はここにいるらしいことがわかった。


「とりあえず、予定より遅れるがまず身体を休めてくれ。準備もあるから、この町で3日ほど休むことにしよう」

こうして、僕達は温泉で身体を癒すことになった。



・・・


一方その頃、ヴァルザンは5名ほどの部下とユート・ラプトルと一角狼(ホーン・ウルフ)を伴い、戦場の変わり果てた姿となったかつての部下たちの姿を見て呆然と立ち尽くしていた。


「なにが・・、なにがあったのだ。」


彼らは、後方で待機し、万一逃亡を図った輸送隊メンバーがいた際に、挟撃をするという役割を担っていた。というのも、ユート・ラプトルや一角狼(ホーン・ウルフ)の俊敏さを活かすこともあったが、ヴァルザンが手負いだったからだ。もっとも、その傷つけた相手は外ならぬユート・ラプトルなのだが。


しばらく待っても、まったく逃走者が来なかったが、むしろそれは想定内であった。

夜襲では、少々手を焼いたが、本隊の人数の敵ではないはずだし、疲労も蓄積していたはず。

念には念をと別動隊を率いていたが、徒労に終わった・・・はずだったのだ。


「ダメです。酷いもんです。生きているどころかまともに四肢がそろっている者がほとんどいません。」

部下の報告を聞くまでもなく、死体は酷い有様だった。

頭や肩を引き飛ばされて焼け焦げた死体に、顎から上がごっそりと鉈でもふるわれたかのように綺麗に切り取られた死体。腕が丸々一本引きちぎられた死体・・・。それが20人近く。

こんなことができるのは、化け物・・・の仕業だとしか思えない。

もっとも、この世界には、そんな化け物がゴロゴロいるのだが。


「副隊長。来てください!!隊長を発見しました。」

「隊長!!。大丈夫ですか!!」

「まだ息がある。魔法薬(ポーション)の在庫はあるか?」

「バカ野郎!あったら、副隊長につかってる。おい。急に動かすな。ゆっくり、ゆっくりだぞ」


黒狼旅団の団長であるガーランドは、頭を強く打って意識を失っていたが故、奇跡的に九死に一生を得ていた。だが、その瞳はうつろで恐怖に震えている。


「おい!ガーランド。どうした。何があった」

ヴァルザンが問うと、ガーランドは、ガタガタ震えながら、

「悪魔だ・・・。深紅の巨大な狼が・・・。アァァアア!!!」

と頭を抱えて蹲る。あまりもの恐怖で精神が崩壊した者のようだ。


ヴァルザンは、ガーランドの両肩をつかんで落ち着かせようとするが、徒労に終わる。

ガーランドは、ディスクワークもあるから、ランクの高い冒険者と比べると腕は落ちるとはいえ、

曲がりなりにも旅団長であり、肉体的にも精神的にもかなりの実力者である。

それが、このような姿になるとは、よほどのことがあったに違いない。


「とりあえず、撤収するぞ。」

だが、今はこの場を離れることを優先したほうが良い。

この場の後始末に誰かが来るかもしれないし、なにより撤収のための軍用船との待ち合わせ日まであまり余裕もなかった。ヴァルザンは、ガーランドを一角狼(ホーン・ウルフ)にのせ、待ち合わせ場所の海岸に向かうのだった。




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