11.迎撃戦
マロウは、戦闘というよりも一方的な惨殺を行っていたが、アーディル達の方はそう簡単ではなかった。
馬車に乗って左右から半包囲網をしようと迫ってきた馬車から降りた兵士は12名。
さらに御者役であったものを含めると14名にもなっていた。
かたやこちらは、ディーン副団長率含めて騎士6名。そしてエリック達3名にアーディルで10名。
本当の野盗ならば、問題はないのだが、相手はおそらく一人一人が騎士やエリックと同程度の力を持っているだろう。そして、さらに追い打ちをかけているのが、2日連続の夜襲による疲労だ。
長期戦になれば、これが、地味に効いてきてしまうだろう。
「へへへ・・・女がいるぜ」
本隊で起きていることに気づいていない先行部隊は、ティアさんを見ると下世話な笑みを浮かべて剣を構えた。
「バカ。そんなのは後だ。退魔法結界を頼む。魔法には気をつけろ。」
そういうと、魔法使いらしき者が魔法を唱えた。
”退魔法結界”。魔法攻撃に対応した汎用結界だ。
魔法には、様々な属性があるが、元はすべて魔力。
そのため、その魔力自体を減衰させる結界を張ることで威力を弱めることができるのだ。
最も、面での展開になるので、遠距離魔法には効果的だが接近されると効果はない。
しかも低レベルのものは結界双方向に効いてしまうので逆にかけた側も遠距離攻撃魔法が効きづらくなる。
「なめるなぁ!」
ティアさんが火球の魔法を敵に向かって放つが、敵の目前で急に炎が小さくなる。当たった敵もその熱で顔をしかめるがほぼダメージはないだろう。
なるほど・・・。ではこれならどうだろうか。
「火線」
同じ魔法であるが、攻撃範囲は極めて狭くなる代わりに、一か所に魔力を集中した攻撃魔法。
わざわざ魔法名を叫ぶことで、さらに魔力を込めた。
結果、火線は、退魔法結界を貫通して野盗の額に吸い込まれた。そして次の瞬間その男の頭が爆ぜる。
「よし。通じる。」
退魔法結界が効かなかったわけではない。一極集中の火線の威力は、相手の退魔法結界で減衰させても十分な殺傷力を維持できた。ただそれだけのことだ。
続きざまにさらにもう一発を発射する。流石に相手も警戒したのか目標をやや外してしまったが、相手の右肩を破壊した。
なお、これが僕にとって初めての対人戦であり、”人”を殺す経験になったのだが、今はそれに気づきもしなかった。
「いでぇぇ!!!」
肩を吹き飛ばされた男が叫び声をあげて転がりまわった。
そして、痙攣を起こすと意識を失ったようだ。
即死は免れでも、あのままでは出血多量で助からないだろう。痛みも感じない即死といずれの方が彼にとって良かったのかはわからないが。
さらに、その横にいた男の胸にも火線が突き刺さる。
ただし、術者は僕ではない。ティアさんだ。
「よし。出来た。」
ティアさんは、どうやらオーガを倒した時に僕が教えた鍛錬法と火線のイメージで練習をしていたらしい。
胸に火線を受けた相手は、革鎧の上から胸を掻きむしった後、吐血をして崩れ落ちた。革鎧をも貫通した火線が肺を焼いたのだ。
「不味い!数ではまだ勝っている。やっちまえ」
「遅い!!火線」
僕とティアさんが火線でさらに2名を無力化する。
これでこの場の数の上でも逆転した。
「アーディル君とティア君を守れ」
ディーン副団長が僕らを包囲して、盾になるように構えた。
すでに、退魔法結界ラインを超えているので、ティアさんは使い慣れた火球に変えたことで殲滅力があがっていた。
「くそ!本隊はまだか。」
その時になって初めて彼らは気付くことになった。
本隊が大混乱に陥っていることに。
<火魔法のレベルがアップしました。>




