3.野営
翌日、新しい革鎧と革靴に身を包んだ僕は、夜明け前の広場に来ていた。
こんな時間に来たことはなかったのだが、結構人が集まっていた。
後で聞いたら、少し距離のある場所を目的地にする場合に、夜明けとともに出発・・・というケースは結構多いらしい。
「お、アーディル。もう来ていたのか」
エリック達が僕よりも少し遅れて現れた。
「あれ、昨日買った装備は?」
セドリックが聞いてくるので、僕は左手の甲の封魔紋を見せる。
「それって、封魔紋?」
ティアさんが聞くので、にっこりと笑って頷く。
「凄い複雑な紋様ね・・。見たことがないぐらい。
ってゆうか、あれ全部もう入るの?」
僕は頷くが、エリックとティアさんは驚いていた。
「今2年になったばかり・・・・ってことは封魔紋をもらってまだ1ヵ月だよな・・・。」
そういえば、ガルフォード先輩やスノウ先輩ですら、やっと槍と盾を収納できるようになったぐらいっていってたな。まぁ、隠していてもしょうがないし、この3人は信用できるから大丈夫だろう。
「へへ・・・。どうもすごく”アタリ”だったんですかね。」
「相性が良かったということか。セドリックも負けてられないな。」
セドリックは、残念ながら学園在学中にAランクまで達しなかった。
いや、第二学園では、どちらかといえばその方が普通なので、別に落ちこぼれというわけではない。
ただ、学園で取得が出来なかった場合は、自力で研鑽を継続し、お金を支払わなければならない。
料金という面はもちろんだが、それだけ研鑽をした証という面でも必要な金額は100,000コルと安くはない。目下エリック達は、少しづつエリックのためにパーティーで貯金をしているのだとか。
そうはいっても、冒険者は稼ぎも悪くない分、消耗品の費用もかかる。
それに、エリック達は基本ハイリスクハイリターンの依頼を受けることが出来るほどの腕前ではない。
そうこうしているうちに、ディーン副団長率いる5人の騎士が馬車で到着した。
「待たせたな。それじゃぁアーディル君やエリック君達はこの馬車に乗ってくれ。」
そういうと、ディーン副団長ともう一人の騎士が御者台に座る馬車を親指で指す。
馬車は、2頭立ての中規模のものが3台。1台は、アーディルや冒険者だけが乗る馬車で、残りが主に補給物資とともを運搬するものらしく、食料や水樽などが積まれていた。御者台にはすべて騎士が2名づつ乗り込む。
「では、出発する。しばらくは街道沿いだし、眠くなったら寝ていてくれていいからな。」
そう言われて、僕はその言葉に甘えることにした。
もっとも、座りながらなので、熟睡できるわけではないが。
・・・
初日の道中は、睡眠とエリック達と近況報告や昔話の続きで過ぎていった。
流石に王都からも近いし、魔物も含めて何かに襲われるといったこともなかった。
「今日は、この辺で野営をすることになる。
我々で簡易テントを立てるから、エリック君達は、悪いが警戒を頼む。
ああ、アーディル君は休んでいてくれていいよ。」
「いや、よかったら手伝わせてください。
学園に来るときぐらいしかやったことないですが、多少はお手伝いできると思いますので。」
「そうか、そういってもらえると助かる。」
簡易テントは、木の幹などにロープを張って作ることが多いのだが、今回は馬車を並べて、幌の間をロープでつないで、幕となる布をかけるという形で行った。
実に合理的な方法だ。
それでもロープの結び方などのいくつかのノウハウがあり、知識と練習をしたかったので、僕は協力を申し出た。
いくつかの丈夫で解体もしやすい結び方やテントの立て方を学んだ。
テントが出来たころ、騎士の方が堅パンと野菜くずの温かいスープ、そして一切れの干し肉が配られた。
堅パンは、そのままで食べると歯が折れるとまで言われており、スープに浸してふやかして食べるらしい。いずれも不味くはないのだが、携行食なので彩りも味もそれなりだった。
夜は、3交代で見張りを行う。
見張りは、アーディルを除く3人づつ。
信用していないわけではないが、わるいがエリック達は2組以上にわかれて任に当たってほしい。
なるほど、騎士が誰か一人は見張りにつく体制にするわけか。
冒険者だけに任せて、奇襲で儲けた場合は責任問題になりかねないから理解はできる。
「じゃぁ、最初はセドリックとティアでお願いする。俺は中盤でも後半でも構わない。」
「わかった。では、最初は俺があたろう。エリックは中盤を頼む。」
僕も念のため、”闇の賢者”の魔法を唱えておく。
召喚されたのは、鴉のような漆黒の翼を持っている”フクロウ”
名前を、”アウロス”と名付けた。
まぁ、なんだ。自分でもあまりネーミングセンスがないのは自覚している。
彼は、もちろん普通のフクロウではもちろんない。
夜限定だが、賢者の名のごとく、高い危険感知能力と知能を有し、夜目が効く上、魔法にも長けている。
シャナ曰く、彼がいれば、夜襲のようなことはまず事前に察知できるし、対応までできるらしい。
そういえば、最近シャナと話していないな・・・。
そうこうしていくうちに夜の帳が降りてきて、僕は休息のために馬車の荷台で眠ることになった。




