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1.戦争の予感

今話から第2章になります。

始業式から、1ヵ月。

封魔紋を得た人たちも落ち着き、S・Aクラスの授業も順調に始まる・・・はずだった。

いや、僕以外は順調に始まっている。


で、僕は何をしているというと、ひたすら特別授業として魔法薬(ポーション)を作成していた。

何故そんなことになったかというと、最近の不穏な噂に行きつく。


『アルキラ帝国に不穏な動きあり』


アルキラ帝国というのは、ヴァルジラ王国の隣国である軍事大国である。

ヴァルジラ王国とは、正式な国交がなく、過去なんども戦乱を起こしている。

とはいえ、国交がないから人の行き来がないかというとそんなことはない。

あくまで自己責任ということで、商人であったり、冒険者などの行き来はあるのだ。


もっというと、国境線であっても正式にひかれているわけではない。

自然と山脈や森、砦などで区切られた線を一般的に国境としているが、明確な協定などはなくあくまで自主的な境界線の扱いだ。


特に、ヴァルジラ王国は、シモンの砦という山間に巨大な砦と、海と樹海に挟まれた城塞都市ザッカートを有しており、そこには騎士団の分隊を常駐させている。

そして、シモンの砦には、”古代龍の息吹”と呼ばれる戦術級魔導兵器が、城塞都市ザッカートには大量のバリスタや投石器があるだけでなく、交易船が有事には軍船として徴用することができる。

実質上の境界線を制しているのはヴァルジラ王国であり、だからこそこの国が安寧を得ることができていた。


常に小競り合い程度の戦や奇襲攻撃は幾度もあるが、ヴァルジラ王国はいつも危なげなく撃退をすることが出来ている。これらは、守る方も予測や準備ができないことが多い。

一方で、大規模な進軍がある場合は、それを隠すことは困難になる。

徴兵や兵糧、武器に薬などの準備などが必要であり、それらは期間も一定期間がかかるので、隠せるものではないからだ。

むしろ、大規模な軍事行動は、あえて軍を鼓舞するなどの面で隠さないことのメリットもある。

もちろん、だから、策もなく正々堂々と戦うというわけではないが、大軍を動かすには、大義名分とかそういう類のものが必要なのだ。

もっとも、大体が一方的ないいがかりのようなものなのだが。



で、なぜ僕が特別授業(魔法薬(ポーション)を作り)をすることになったかというと、シモンの砦や城塞都市ザッカートへの補給物資を軍に依頼をされたからに他ならない。

いつ開戦するかわからない状態であるため、少しでも多く用意する必要があるため、学園にも依頼があったのだ。

通常は、学園は学園でも第一学園への依頼で第二学園にまで要求が来ることは少ないらしい。

というのも、はっきりといえば、今まで第二学園で精製されていたのは、精々、ケガをしたときに使うレベル0ないし1と呼ばれる下級魔法薬(ポーション)しかできておらず、一般的に軍事物資として常備するレベル2〜3と呼ばれる効果のものは精製できていなかったのだ。

しかし、セドナ先輩や僕が作っていたのは、時折レベル1相当が出来ることもあるが、主にレベル2であり上手くいった時にはレベル4相当までできていたらしい。


もっとも、今回作成依頼が来ているのは、僕たちが開発した”精神安定薬”になる。

セドナ先輩が行った王国魔導省なども急ピッチで増産をしているが、まだ実用レベルで量産できるような環境にまでなっていないので、お鉢がまわってきたというわけだ。

学園に拒否権がないわけではないが、王立であり戦争に負ければ学園にも影響があるわけで・・・。



「アーディル君。頑張っているわね。

ところで、ちょっと追加の依頼が来ているのだけれど」

そういって研究室に入ってきたのは、ここの主にしてS級の先生であるザンビーニ先生だ。


「いやぁ、結構いっぱいいっぱいですよ。」

「まぁ、これだけ作ってくれたらね。おかげで第二学園の株もあがるし、なにより報酬も沢山いただいて備品なども充実させることが出来そうよ。

あ、そうそうこれ、あなたの取り分。」

そういうと、皮袋を机の上に置いた。ずしりとかなりの重さがあるのが見ただけで分かる。

「結構入ってるけど、無駄遣いしちゃだめよ。」

「で、先生、依頼っていうのは?」


「ええ、実は騎士団からの要請で、城塞都市ザッカートに向かってほしいの。

 騎士団は、補給物資とともに、二つの砦への応援を送っているわ。

 ところが、この補給物資が何度か襲われているのよ。」

「盗賊ですか?」

「正規の騎士が護衛する補給物資を襲うなんて盗賊はいないわよ。

 それに、襲われているのは補給物資だけなのよ。

 遠くから火矢や魔法攻撃をしかけたり、魔物をけしかけてきたりと主に荷物だけを狙うのよ。」

「アルキラ帝国の工作団・・・ですか?」

「おそらくは。流石に小規模の集団が国内に紛れ込むことを防ぐのは困難だから。」


確かに、冒険者や商人に紛れたり、軍隊では流石に難しいが、樹海を突破できる練度の少数精鋭での突破もあり得る。


「で、それで、僕がザッカートに向かうのと何の関係が?」

「補給物資の中でも魔法薬(ポーション)というと、瓶などに入れるから、どうしても割れたりしやすいわ。どうやら、最前線にこちらでつくった半分程度しか届いていないらしいのよ。」

「その襲撃団をなんとかするのは?」

「それはもちろん、冒険者ギルドなどにも依頼をかけているわよ。

でも、逆に返り討ちにあっているらしいのよ。かなりの手練れのようなの。」

「それで、それなら最前線で作ることで補給線でのロスをなくしたい・・・ということですか。」

「そうね。セドナ君はシモンの砦へ行くことになっているのよ。で、あなたにはザッカートにお願いできないかと。もちろん、行く先は最前線になる可能性がある場所。拒否もできるけれど・・・」


なるほど。

まぁ、拒否権はあるとはいえ、流石に国の依頼を無下には出来ない。


「道中の安全は?」

「騎士団と冒険者の護衛がつくわ。

 もちろん、襲撃の可能性が0というわけじゃないけれど、安全は確保させるのが大前提ね。

 補給物資も0ではないけれど、あえて少な目で運ぶらしいし。」


そこまでしてもらえば、なかなか断れない・・・か。








読んでいただき、ありがとうございます。

また、恥作にもかかわらず、ブックマークや評価いただきありがとうございます。

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