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30.精神安定薬

研究室での1週間を経て、やっと僕は普段の生活に戻ることが出来た。

シド兄やセドナ先輩、レオンやアドル先輩などの仲の良い人は凄く心配されたけれど、他の人からは少し避けられているような感じがした。


「まぁ、皆、倒れていたお前を見てるからな。まだ皆心配なのさ。」

黒い影のようなオーラに侵されて白目をむいてもだえ苦しんでいたらしい。

”悪魔憑き”

そう言われるような人を連想させる姿だったそうだ。


まぁ、シャナの話だとあながち間違っていない。

”精霊”も”悪霊”も”悪魔”もそう変わらないものらしいし、実際にシャナは僕に憑りつこうとしていたらしいから。


「そうか。まぁ、それはしょうがないか・・・。」

「まぁ、ちょっと時間がかかるかもな。

”悪食”に”悪魔憑き”。1年でBクラスでも突出した能力を発揮して、先生方のお気に入り。

俺達も知り合いじゃなかったら近寄りがたいだろうな・・・。」

「特に、女子にはな。」


まぁ、特に気になる子とかがいるわけではないし、今は他のことが楽しいからいいが、ちょっと悲しい状況かもしれない。

それでも、徐々に時間が解決してくれるだろうか。

人前で、シャナとの会話に没頭するようなことがないようにしないとな・・・。



・・・・


下期の授業は結構休むことになったが、もとよりBクラスでは特に学ぶことが少なかったので問題はなかった。しいて言えば、冒険者ギルドの見学や狩場での授業に一部参加できなかったが、もうこれも経験済なので問題なかった。


魔法薬(ポーション)の製作も順調・・・というか進化をしていた。

流石というかなんというかシャナは魔法薬学にも堪能だった。

といっても、全ての魔法薬学ではなく、精神薬の類が得意なようだ。


「我は、闇と恐怖の精霊。精神の構造については良く知っておる。

我のような”本物”の場合は効かぬが、”偽物”にはこの薬はよく効く」


そういって教わった”精神安定薬”は、強いトラウマなどの”恐怖”や”放心”などに効く薬で、アドル先輩はおろかザンビーニ先生も知らないものだった。

その他にも今まで作ってきた魔法薬(ポーション)の調合効率も良くなった。


「この薬は、凄いわね。薬ギルドの治験でもかなりの成果が報告されていて、問い合わせが凄いわね。

 国からも問い合わせが来ているぐらいだわ・・。」

「国から・・・ですか?」

「魔物に襲われたり、近しい人を殺されたり、極度の緊張に耐えきれなくなったり・・・・

 国境警備や騎士団なんてのはそういうケースに遭遇しやすいさね。

 いくら肉体を鍛錬しても、人である以上、精神的な脆さというのは必ずあるからね。

 毎年何人か発狂する者がいるのさ。そして、発狂した(こわれた)場合は簡単には治らないからね。」

「とりあえずは、当面こいつを集中して納品して欲しいらしい。

材料は、今の段階でまだあまり知られたくないから、ガードナの奴とSクラスにでも頼む。

しょうがないやつは冒険者ギルドで購入するがね。

製作の方も手が足りないから、カーミラの奴も手伝わそうかね。」


先生曰く、新しい魔法薬(ポーション)の開発に成功すると、莫大な利権が発生するらしい。

それゆえ、その利権を守ること自体も大事だが、一方でその利権を狙う物から身を守る必要もあるのだとか。この場合、学園の成果なので利権は国に帰属させるのが道理だし安全だとのことだ。

それでも、十分すぎる報酬がでるだろうと言われた。


そして、僕は、全ての授業を免除+次年度Sクラス昇格の特例中の特例対応とともに、ひたすらこの魔法薬(ポーション)の製作の学園長命令を受けることになった。



・・・・


結果、とんでもない数の”精神安定薬”を僕らは作った。

国や薬ギルドでの治験でも凄い実績をあげ、発狂した(こわれた)人が、普通の生活を送ることができるようになったらしく、お礼の手紙などをたくさんもらった。

これは、地味にうれしかった。


ザンビーニ先生は、頃合いを見て国と折衝し、多額の褒賞とともに、魔法薬(ポーション)の作成方法や権利のすべてを王国魔導省に譲渡した。

薬ギルドにもここで製造された薬が卸されることになる。

そして、セドナ先輩は来年から、騎士団ではなくこの王国魔導省に召抱えられることになった。

しかも、年齢の問題もありさして高い地位ではないが、この魔法薬(ポーション)の作成部門の主任という抜擢らしい。


シャナは、最近話をしようとすると、眼鏡をかけた本を読んだ女性の姿にとして()()()

まぁ、僕以外には見えないし声も聞こえないが、当初に比べればずいぶんと話やすくなった。


「なんじゃ? 我は、読書に忙しい。」

どうやら、シャナは僕の知識を読んでいるらしい。

おかげで最近は、歴史書などを()()()()()()()いる。

まぁ、シャナのおかげで、魔石や市販の本を買うためのお金には全く困らなくなっていたし、自分も結構嫌いな方ではないので構わないのだが、シャナは本当に好奇心旺盛だった。


それに、シャナは時々、自分の得意な魔法を教えてくれた。”闇魔法”というらしい。

あまりメジャーな魔法ではないし、教科書にも出てこないような魔法なのだが、自分の身を守るために覚えろとのことだった。


「お前が死ぬと、我も消える。それでは困るのだ。」

その時は、単に自衛の手段を覚えろといっているのだと思ったが、その言葉の意味を知るのはもう少し後の事だった。






気づけば、総合評価100を超えました。

読んでくださっている方に感謝

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