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29.精霊シャナ

僕は、それから1週間、さらに学園の研究室で生活をした。

常にだれか先生が付き添っている状態で、1日1階は教会の聖職者の方が面会に来る徹底ぶりだった。

いわゆる”悪霊付き”になっていないかの確認だという。


部屋の中でもできる腕立てや腹筋などはするが、寝ていた間も含めると2週間以上も部屋にこもりきりだと、流石に身体がなまってしまう。

ただ、暇はしなかった。


「こんな弱い魔法で我を退治できるわけなかろうに」

聖職者の方の魔法を受けながら僕の中の”シャナ”が悪態をつく。

もっとも、嫌がっているというよりも楽しんでいるような感じだ。

()は、直接脳裏に働きかけてくる。だから僕以外には聞こえない。


この1週間、僕はシャナとかなりの間話をして過ごしていた。

もっとも、シャナは常に話したりできる状態ではなく、普段は眠っているような状態らしい。

僕が呼びかけるなどすれば、呼び起こされるように自我が形成されるという。

ちょっと良くわからないが、シャナ自身も良くわかっていないらしい。

なので、呼ばなければ現れないので、睡眠の妨げになったりするようなことはなく、悪意も感じなかった。


シャナは、()()この国が生まれるより、はるか昔にいた精霊らしい。

”悪霊”などと呼ばれていたが、”神””悪魔””悪霊””聖霊”などは、それは人間の立場から勝手に呼んでいるだけですべて根源は同じらしく、それを精霊というのだそうだ。

シャナは、闇と恐怖の属性の精霊であったため人々から恐れられ、”悪霊”と呼ばれてらしい。


「まったく、人間というものは勝手よ。闇があるからこそ光があり、恐怖があるからこそ安らぎがある。

それらは常に表裏一体。それがわからず、あまつさえ我を石板に封じ込めるとは」


シャナは文句を言っているが、さほど怒っているわけではないようだ。

「最初は、怒りが覆っておったし、汝に憑りついて人間に復讐をしようと思って居ったのだがな。

お主の一部になってから、案外と心地よい。

まぁ、ほとんど力をお主に吸い取られたのもあるがな。」

そして、「力を吸い取られながらも、自我を保っているとは、流石我。」と自画自賛する。

どうやら、結構ナルシストな性格らしい。


「時に、我は主の事を何と呼べばよい?主のままでも良いが。」

主というのは、流石に照れるな。

「アーディルと呼んで。他の人もそう呼ぶし、それ以外に名前はないし。」


貴族などは、その後に家名がつく場合もあるが、当然僕にはそういうものはない。

まぁ、あと”悪食”なんて呼ばれることもあるけれど、流石にそれはちょっと・・・ね。

そんなことを考えていると、


「”悪食”か。言いえて妙だな。まぁいい。アーディルか・・少し長いな。アルとでも呼ばせてもらおうか。」


どうやら、僕の中にいるだけあって、勝手に思考を読み取れるようだ。

プライバシーも何もあったもんじゃない。


「なに。すべて読み取れるわけではない。

 まだお主・・・アルがなれておらんだけじゃ。

 どうしても、声で話をしてきた感覚がまだ抜けんのじゃろう。」


・・・



シャナとの会話は、楽しかった。

ただ、お互い結構疲れるので、1時間も話をすれば1時間以上は休憩が必要だった。

シャナは好奇心旺盛で、特に自分が封印されていた間のことを聞きたがった。

もっとも、たかだか10年程度しか生きていない僕にそんなことがこたえれるわけがなく、授業や本で学んだ知識を提供するしかなかった。

ただ、慣れてくると情報を一括して渡すことが出来ることがわかるようになっていた。

普通の会話による細かい説明などがいらないうえ、祖語が起こらないようだ。


逆もしかり、シャナの持っている情報も共有が可能らしいが、シャナに断られた。

精霊というのは伊達ではないらしく、試しに少しの情報を貰おうとしただけでも、気持ちが悪くなって吐きそうになった。


「うむ・・・。これでも我は数万年の悠久の時を生きてきた精霊ぞ。

一度に理解をしようとするな。既に我の知識はアルの中にある。必要な時に必要なだけ使えばよい。過ぎたる力は、身を亡ぼす。そして、それは我を亡ぼすことに通ずる。」


「それに、この1週間でわかったが、なかなかにアーディルは面白い。

我を”喰った”力もな・・・。あぁ、心配するな。さっきも言ったが、これはこれで面白い。」


「ところで、シャナは男なの?女なの?」

「おかしなところに引っかかるのぉ。我は精霊じゃ。性別などはない。

 まぁ、魂の中でしかない存在だからな。お主の好きなように取ればよい。

 男だと思えば男に、女だと思えば女に、老人だと思えば老人に、子供だと思えば子供のように映るであろうよ。」


そうか・・・。うーん。口調からすると男の老人って感じなんだけれど、しゃべり相手としてはなぁ・・・。同年代の男の子は沢山いるからなぁ・・・。


「そう悩まずとも、まぁ、慣れれば何度でも変えることが出来ようぞ。」


じゃぁ、そうだな・・・僕よりもちょっとだけお姉さんぐらいにしてみるか。



 






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