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28.悪霊と精霊と

「なんだ?何があった?」

薄れいく意識の中で、遠くから響くように声が聞こえる。

影の叫び声を聞いて、誰かがこちらに向かって来ようとしているのだろうか・・・。

だが、その姿を確認することはできない。

視界がぐらりと揺れ、自分が倒れたのまではわかったが、その後のことはわからなくなった。



・・・・



暗い・・・真っ暗だ。

そして寒い。しかし、痛みなどはない。

最初はどうなったているのかと思ったが、意外と頭はクリアだった。


僕は、何か影のようなものに襲われたのだろう。

あれは何だろうか・・・。魔物というよりも、悪霊とかそういう類の物だろうか。

残念ながら、僕の知識では正確にはわからなかったが、ガードナ先生が魔物が学園に潜んでいるといていたから、それの可能性もある。

寮は安全と言われていたが、霊体のような物理的な肉体を持っていないのならば、そもそも意味がないのかもしれない。


問題は、今の状況だ。

僕は、意識があるし、寒さなども感じている。

だけれど、何も見えないし、身体を動かせる感覚がない。

うん。言葉さえ出せない。

思考能力がまともなのは、幸いなのか不幸なのか。

色々と考えることが出来るが、できることがなければそれはそれで地獄だ。


さて、どうしたものか。

とりあえずは、周りの様子を()()()みる。

視覚ではなく、知覚する。魔法の鍛錬の時に似ているので、慣れれば難しくはなかった。


何やら暗闇から怒号が()()()()

耳からではない、頭というか思考に直接響いてくるのだ。


「なんだこいつは!!精霊たる我を取り込もうとするだと!!」


「何者だ?」

「お前こそ何者だ!おとなしく我に従え!!」

僕の問いかけに対して、それはイラついた様子で怒鳴り返してくる。

そして、次の瞬間、僕の魂を握りつぶそうとするように強い圧力がかかってきた。


もちろんそういわれて、「はいそうですか」というわけにはいかない。

僕は、その力に押しつぶされないように意識を集中して力をこめる。

それしか方法を思いつかない。


凄い圧力が魂を押しつぶそうとするのだが、一方で闇の中で何者かの怒号と叫声が混じった()も一層響く


「グゥガァァァ・・・・」


しばらく、そういった攻防が続いた後、徐々にその圧力が落ち着いてくる。

力が消えるというよりは、僕の魂に混じるというか溶け込んでいくような感じだ。

そして、それに比例するように、僕の押し返す力が強くなっていく。


「捕食者である我を逆に捕食する・・・か。汝はいったい・・・。」


それが、その闇・・・「悪霊」の最後だった。



・・・・



気が付いたところは、見慣れない部屋だった。

光が眩しい。手をかざそうかと思ったが、右腕があがらない。

なぜか僕の身体は、堅いベッドの上に寝かされて、身体はロープで縛られていた。

周りを見ると、部屋にある机では、ザンビーニ先生が本を片手に何やら石板を調べているのが見えた。


「ここは?」

僕が先生に声をかけると、先生はびっくりとした様子でこちらを睨む。


「あなたは誰!?」

「いや・・・アーディルですけど。」

そう答えると、先生が続けて聞く。

「本物だと証明できる?」

「いや・・・どうやって・・・?」

いや、何を言い出すんだろうか。

「じゃぁ、あなたの出身は?寮の名前は?私の名前は?」

と次々に質問をする。当たり前の質問なので、よどみなく答える。


そして、木製のタンブラーに入ったお茶を差し出した。


「飲んで」

「えー。これって、いつもの健康にいいっていう苦いやつでしょう?」

その表情をみて、先生はにっこりと笑った。


「どうやら、本物のようね。」


・・・


先生によると、僕は1週間以上眠り続けていたようだ。

トイレで僕は、黒い影のようなオーラをまとったまま倒れていたらしく、ここに運ばれて来たらしい。

その間、何度も身体がありえないくらい痙攣をしたり跳ねたらしく、捕縛ロープでベットに括り付けられていたとのことだった。


その間に、石板の解読もすすみ、石板はシャナという”悪霊”が封印されていたことがわかったらしい。

”悪霊”とは、”精霊”の一種で人に害悪を及ぼすもののことだ。

”悪霊”は、人に憑りついて力をふるうことが多いため、ザンビーニ先生は警戒をしていたのだろう。


「知識や経験はもしかしたら、()()()()()かもしれないけれど、なかなか癖や反応っていうのは真似できないもの。

このお茶を見た時の反応は間違いなくアーディル君ね。」


”悪霊”だとわかってから、僕には様々な魔法や魔法薬(ポーション)が使われたらしく、黒い影のオーラは徐々に小さくなり消えていったらしい。


「それで僕は助けられたのか」

と、そう考えた瞬間、頭の中に声が響いた。


「精霊たる我が、そんなもので消えるわけがあるか」

その声は、闇の中で聞こえた声に間違いがなかったが、随分雰囲気は違った。


「そう警戒せずともよい。我はお主に取り込まれた身だからな。

汝を主と認め、力を貸そうではないか。

不覚にも、お主が死ねば我も消える身となってしまったからな。

我が名は”シャナ”。精霊”シャナ”だ。」













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